年頭所感 ランクセス 米津潤一社長

2024年01月04日

ゴムタイムス社

 
  2023年を振り返りますと、自動車業界など一部の産業では需要が回復しましたが、化学産業においては特に顧客の需要が低迷し、在庫の調整が急速に進みました。世界最大の化学品市場である中国でも需要の回復は見られませんでした。同時に、ドイツの化学産業ではエネルギーコストの急増など、過酷な経営環境が続いています。
 
 低迷する経済情勢の局面を打開するため、ランクセスは「FORWARD!」アクションプランを策定し、すでにいくつかのプランが実施されました。このアクションプランにより、ランクセスは、短期的には収益を安定させ、長期的にはコストを削減し、構造やプロセスの改善を目指します。昨年末には、長期的な戦略に基づき、ウレタンシステムズ・ビジネスユニットの売却に向けたプロセスを開始しました。このように、ランクセスは経済的な課題を乗り越えつつも、構造やプロセスの改善に積極的に取り組んでいます。
 
 一方で、広く産業界を見渡しますと、生成AI技術の進化は目覚ましく、ChatGPTなどの技術が産業界全体に大きな変革をもたらす兆しを見せました。また、e-モビリティへの移行は着実に進んでおり、持続可能性への注力も化学産業を含む多くの分野で重要視され、具体的な取り組みが進められました。
 
 ランクセスにおいても、2023年は、持続可能性への取り組みを大きく推進した年となりました。製品のカーボンフットプリントを自動で算出するツール「プロダクト・カーボンフットプリント・エンジン」を開発し、顧客の皆さまへの提供を開始しました。また、ドイツの複数拠点において再生可能エネルギーで製造された塩素、苛性ソーダ、水素などの持続可能な原材料の調達を開始しました。さらに、再生可能原料の含有量が50%以上、または従来製品に比べカーボンフットプリントが50%以上削減された製品に付与される「スコープブルー(Scopeblue)」ブランドを拡充し、持続可能な製品ポートフォリオの拡張にも注力しました。
 
 2024年を迎えるにあたり、私たちの戦略的目標はコミットメントを完全に具現化することです。ランクセスは、より強く、より変化に強い企業を目指し、強固な施策を実施して参ります。特に、進化する顧客ニーズや市場トレンドに合致した、持続可能で市場主導型の製品を生み出すことで、イノベーションを加速させていきたいと考えています。そして、引き続き、2050年までにバリューチェーン全体においてクライメイトニュートラルを実現する「ネットゼロ・バリューチェーン・プログラム」を推進し、持続可能性への取り組みに注力して参ります。
 
 日本法人としては、日本の顧客とそのニーズに真摯に向き合い、真の特殊化学品メーカーへと変革を遂げる責務を果たして参りたいと考えます。私たちの価値観の中で、「尊重」の原則は重要です。私たちのコミットメントは、お客様をより深く理解し、そのニーズに積極的に耳を傾け、技術や市場の動向に常に注意を払うことです。私たちは、お客様の真の関心を見極め「尊重」の気持ちを通じて、特殊化学品の本質を体現する持続可能なソリューションの提供に努めて参ります。
 
 最後になりますが、お客様、パートナー、そして従業員の皆さまの揺るぎないご支援と献身に心より感謝申し上げます。そして、今年一年の皆さまのご健勝とご多幸を心より祈念申し上げます。

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