コニカミノルタや産総研ら3社で バイオプロセス技術連携研究ラボ設立

2023年06月05日

ゴムタイムス社

 コニカミノルタと産業技術総合研究所(産総研)、AIST Solutionsは6月1日、同日に「コニカミノルタ-産総研 バイオプロセス技術連携研究ラボ」(バイオプロセス研究ラボ)を設立したと発表した。
 これにより、バイオプロセスにおけるスケールアップ時のエンジニアリング課題の解決、また微生物による高機能材料製造を志向した次世代バイオ生産マネジメントシステムの実現を目指す。
 生物由来の素材を用いたものづくりや、微生物などの生物の能力を活用して有用化合物などを作り出す「バイオものづくり」は、化石燃料を原料としないで物質の生産を行うことができることから、カーボンニュートラル実現のキーテクノロジーとして大きな期待が寄せられている。
 コニカミノルタでは、センシング技術、AI技術(機械学習、ディープラーニングなど)や、これらを組み合わせた画象IoT技術を利用して、自社のケミカル工場でもマテリアルズ・インフォマティクスおよびプロセス・インフォマティクスの導入を進めている。
 バイオプロセス研究ラボでは、これらコニカミノルタの技術をさらに進化させ、産総研の総合力を投入して融合させることで、従来にない複雑系物質生産におけるモニタリング技術を開発し、バイオものづくり実用化への課題である生産プロセスのスケールアップと安定生産に向けて取り組む。
 バイオものづくりの課題のひとつに「スケールアップの壁」がある。物質生産能力を強化した微生物細胞「スマートセル」による生産方法では、微妙な条件の違いで微生物の挙動が変化して生成反応が変わってしまうため、試験管レベルで成功しても量産規模にスケールアップした際には、求められている歩留まりや品質を常に維持することは非常に困難となる。
 また、このようなスマートセルに生産させた化学物質を「バイオ由来粗原料」として、従来の化石由来の原料と置き換えようとすると、生産工程での条件がそのまま適用できない場合が多く、また、バイオ原料固有の不純物による品質のばらつきによって最終製品の歩留まりや品質にも問題が生じてしまい、バイオ由来製品の製造プロセスのボトルネックになっている。
 バイオプロセス研究ラボでは、試験管レベルと量産レベルでプロセスモニタリングして得られたデータを関連づけることで、量産環境における微生物の挙動を予測して工程管理に役立てる研究を行う。
 主な研究内容として、マルチスケール計測によるデータ駆動型AIセンシングシステム開発が行われる。
 試験管レベルと量産レベルでのさまざまなデータについて関連づけを行うためのセンシングデバイスについて、コニカミノルタの光学・化学の技術と産総研のバイオものづくり技術を用いて開発を行う。また、それら複数のセンシングデバイスから得られたデータについてAI分析とプロセス制御を行う「データ駆動型AIセンシングシステム」の開発を行う。その他、バイオ由来粗原料を用いた高機能材料製造プロセス技術開発も行う。
 モデルケースとして量産に適した化学物質を生成できるスマートセルの設計を行う中で、新たなプロセス設計システムとバイオベース製品の効率的な提供のための研究を行う。
 バイオプロセス研究ラボの名称は、コニカミノルタ-産総研 バイオプロセス技術連携研究ラボ、設立日は2023年6月1日、所在地は、産総研 つくばセンター内(茨城県つくば市)、ラボ長は、コニカミノルタの岩崎利彦氏、主な研究内容は、マルチスケール計測によるデータ駆動型AIセンシングシステム開発と、バイオ由来粗原料を用いた高機能材料製造プロセス技術開発となる。
 1873年創業のコニカミノルタは、2023年に150週年を迎えた。祖業の写真フィルム、カメラで目に見える世界をありのままに写すことから、病気の予兆やものづくりにおける品質のばらつきなど、人間の目に見えないものの見える化まで、コニカミノルタは人々の「みたい」に応えながら、社会に新しい価値を創造してきた。さまざまな業種・業態の現場での働き方やものづくりの変化など、事業環境の動向を先読みし、ユーザーや社会の課題解決に貢献するために、イノベーションを創出し続ける企業。
 コニカミノルタは、この150年の節目を新たなスタートと位置づけ、創業以来培ってきた光学と化学の力を生かし、人々や社会の持続的成長に貢献していくためにまい進する。
 産総研は、わが国最大級の公的研究機関として日本の産業や社会に役立つ技術の創出とその実用化や、革新的な技術シーズを事業化につなげるための「橋渡し」「社会実装」機能に注力している。そのための体制として産総研のコア技術を束ね、その総合力を発揮する「5領域2総合センター」があり、全国12ヵ所の研究拠点で約2300名の研究者がイノベーションを巡る環境の変化やそれらを踏まえて策定した国家戦略等に基づき、ナショナル・イノベーション・エコシステムの中核的、先駆的な立場で研究開発を行っている。
 産総研は2016年度から、企業のニーズに、より特化した研究開発を実施するため、その企業を「パートナー企業」と呼び、パートナー企業名を冠した連携研究ラボ(冠ラボ)を産総研内に設置している。
 AIST Solutions(アイストソリューションズ)は、「社会課題解決と産業競争力強化」を目指し、研究成果の社会実装に向けた体制と活動を強化するため、産総研100%出資により2023年4月1日に設立した株式会社となる。日本最大級の公的研究機関である産総研の技術資産と研究資源を活用し、積極的なマーケティング活動を通じて、市場や産業のニーズに即応すべく、オープンイノベーションの強化、エコシステムの構築や新規事業創出を行う。
 これからも3者は、バイオものづくり実用化への課題解決を通して、カーボンニュートラルをはじめとするサステナブルな社会の実現に貢献していく。

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