日本ゼオンと名大が受賞  熱可塑性エラストマーの開発で

2023年05月16日

ゴムタイムス社

 日本ゼオンは5月12日、名古屋大学大学院工学研究科の野呂篤史講師(未来社会創造機構マテリアルイノベーション研究所及び脱炭素社会創造センター兼務)らの研究グループとの共同研究成果により、「2022年度日本レオロジー学会技術賞」および「第35回日本ゴム協会賞」を共同受賞することを発表した。
 同社は、名古屋大学との共同研究で、同社が上市している熱可塑性エラストマー(製品名:Quintac)に対して化学修飾を施すことで、「強靭な官能性スチレン系熱可塑性エラストマー」を開発している。
 特にイオン性官能基を導入したものでは、引張強度、タフネス、耐衝撃性が、従来のものと比べて3倍以上の値を示すことが分かっている。この共同研究成果に対して、2報の査読付き論文を共同発表、さらに国内外で複数の特許が成立し、国際的な産業競争力も有していることから、今回、日本レオロジー学会及び日本ゴム協会から、それぞれ2022年度日本レオロジー学会技術賞及び第35回日本ゴム協会賞を共同受賞することになった。それぞれの賞はレオロジーを含む技術(工学、工業化技術を含む)に関して特に顕著な業績のあった者に授与される賞、ゴム及びその周辺領域における科学・技術又はその産業分野の発展に寄与し、その業績が極めて顕著な者に授与される賞となっている。
 同社は、1985年よりスチレン系熱可塑性エラストマーであるポリスチレン-ポリイソプレン-ポリスチレントリブロック共重合体(以下、SIS 製品名:Quintac)を製造・販売している。
 SISは、室温においてプラスチックとして振る舞う成分と、ゴムとして振る舞う成分とを化学的に繋いで得られる高分子材料で、室温では天然ゴムや合成ゴムと同じように利用でき、一方でプラスチックのような熱加工性も有している。柔軟性・伸縮性と加工性を併せ持った材料として、粘接着剤を始めエラスティックフィルムなどの用途で利用されている。最近では、軽量化が要求されるモビリティ分野において、容易な加工性だけでなく、既存品よりもさらに高強度で高靭性を示す新たな熱可塑性エラストマー(TPE)の開発が求められている。
 このような背景のもと、名古屋大学との共同研究により、Quintacのポリイソプレン部に対して、水素結合性官能基やイオン性官能基などの非共有結合性官能基を数mol%以上導入することで、強靭な非共有結合性の官能性SISを新規に合成・開発した。
 特にイオン性官能基を導入したSIS(i-SIS)の引張強度、タフネス、耐衝撃性は、官能基未導入のSISと比べて3倍以上の値を示しており、高い新規性、学術的重要性から英文学術誌で論文が受理・発表されており、国内外で複数の特許も成立して国際的な産業競争力・潜在力をも有していることが認められ、今回の受賞に至った。
 今回開発した官能性SISは、軽量でありながらも強靭な材料であるため、脱炭素社会、持続可能な社会の実現に寄与する技術であり、同社は本格的な製造販売に向け検討を進めていく。
 今後も社会の期待に応える独創的技術をさらに磨き上げながら、「持続可能な地球」と「安心で快適な人々のくらし」に貢献していくとしている。

分子模式図

分子模式図

授賞式の様子

授賞式の様子

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