年頭所感 ランクセス 張谷廷河社長

2021年01月02日

ゴムタイムス社
張谷廷河社長

張谷廷河社長

 新年あけましておめでとうございます。
 年頭にあたり謹んで新年のご挨拶を申し上げます。

 2020年を振り返りますと、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、世界は未曾有の共通課題に取り組んだ年となりました。この一年で、人々の仕事、生活様式にかつてない大きな変化が起こり、産業界ではDX(ディジタル・トランスフォーメーション)が加速しました。さらに、9月に発足した新内閣の所信表明では、2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする「脱炭素社会の実現」についても言及されました。また、政府から2030年半ばまでにガソリン車の販売を禁止する方針が示されるなど、電気自動車の普及に向けても議論が大きく進展した一年でもありました。

 さて、弊社の日本での事業に目を向けますと、新型コロナウイルス危機による需要低迷により自動車や航空業界などの一部産業ではマイナスの影響を受けました。一方で、昨年から新たに発足した「コンシューマー・プロテクション」部門では、人と環境にやさしい製品を提供することで市場の需要を捉え、事業を成長させることができました。さらに、従業員の働き方においても、安全を守りながら、業務効率の向上に取り組み、改革が大きく進展しました。「デジタル化」が進み、2月末から開始した在宅勤務体制を継続しながら、業務効率を落とすことなく事業を継続することができました。この危機に際し、事業の継続に共に尽力してくれた従業員、そしてパートナー企業の皆さまに改めて感謝を申し上げたいと思います。

 また、グローバルでの事業においては、製品ポートフォリオの見直しが進み、水処理分野における逆浸透膜事業の売却、そして皮革用化学品事業の売却などを発表しました。厳しい経済環境の中でも、「コンシューマー・プロテクション」部門の躍進など、成長分野への注力により、新型コロナウイルス危機の影響を最小限に抑え、順調に事業を推進することができました。アジア太平洋地域においては、中国・上海のアジア太平洋地区の用途開発センターの起工式を行い、地域内の顧客の需要に適した製品・サービスの開発を進める計画が進展しました。コロナ禍においても持続可能な開発目標(SDGs)への取り組みを継続し、「2040年までにクライメイト・ニュートラル(気候中立)を達成させる」というグローバルでの気候保護に関する目標に向けてプロジェクトを順調に進めています。11月には新たに「ウォーター・スチュワードシップ・プログラム」の一環として、極めて高い水ストレスを抱える地域の内の4拠点において、持続可能な水資源管理を強化し、2023年までに総取水量を15%減少する目標を発表しています。

 ◆ランクセスの2021年の計画
 さて、2021年に目を向けますと、2020年に導入されたニューノーマル(新常態)を基盤にした様々な変革が続くと予想しています。ランクセスグループとしては、これまで築いてきた強固な財務基盤と、2020年に大きく加速したDX(ディジタル・トランスフォーメーション)による業務基盤を土台として、注力事業への投資を進め、事業のさらなる成長を推進すると共に、事業拡大に向けた様々な施策を検討してまいります。日本においても、3つの事業領域への注力を継続し、また持続可能な発展への取り組み、そしてデジタル化をさらに積極的に進めてまいります。

 注力分野の一つは、「コンシューマー・プロテクション」部門です。この新部門は、生活の多くの場面で人々とその環境を保護する3つの製品群で構成されています。その1つは、イオン交換樹脂や酸化鉄吸着剤による水処理・液体処理の製品群です。2つ目は、サルティゴによる農薬、医薬品、特殊化学品向け活性成分の開発における受託製造です。さらに、3つ目は消毒剤・衛生剤、飲料向け殺菌料・保存剤などの製品群です。これら3つの製品群は、高い成長率を示すとともに、産業循環の影響を受けにくく、2021年も引き続き事業の成長をけん引すると期待しています。

 2つ目の注力分野は、環境にやさしい「新しいモビリティ(New Mobility)」への取り組みです。現在、自動車産業は、低燃費、二酸化炭素排出量削減への取り組み、安全性、設計の自由度の向上など、様々な課題解決に取り組んでいます。弊社は、それらの新しいモビリティ分野における開発パートナーとして、軽量化や電気自動車向けの新しい製品ソリューションの提案を行ってまいります。特に、熱可塑性コンポジットシートや、高性能プラスチック製品において、より高い難燃性、耐久性、優れた加工性といった付加価値の高い製品を提供し、新しいモビリティの分野に貢献してまいります。

 さらに、3つ目の注力分野として、引き続き添加剤および潤滑油事業を強化してまいります。建築、自動車、機械、電子・電気機器などの幅広い製造業が対象となります。自動車の軽量化や電子材料への環境規制から、金属代替材料として樹脂化が進み、難燃剤への需要は増加しています。様々な産業への難燃剤の用途拡大に応える新しい材料の開発も進めてまいります。一例としては、バッテリー用リン誘導体などバッテリー需要への対応が上げられます。

 ランクセスは、2021 年も引き続きグローバル企業として、持続可能な社会の発展のために持続可能な開発目標(SDGs)を実現すべく、気候および環境の保護、人々の生活向上など国内外の様々な分野での取り組みを推進してまいります。さらに、弊社組織におけるダイバーシティ(多様性)の推進と、従業員の働きやすい環境と制度の充実化を積極的に進めてまいりたいと思います。

 最後になりますが、私自身、2020年1月の就任以来、未曾有の変化の時期を経験いたしました。日本法人の代表として迅速な判断と実践が求められ、例年にない頻度で従業員との直接的、間接的な対話の機会を持ち、共に変革に取り組んだ年となりました。

 2021年は、この大きく進化した体制を基盤にして、従業員、パートナー企業の皆さまと共に、日本における事業の更なる飛躍を目指して、事業強化に取り組んでまいります。

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