変成シリコーン樹脂系構造用接着剤による異種材接着

2020年10月01日

ゴムタイムス社

*この記事はゴム・プラスチックの技術専門季刊誌「ポリマーTECH」に掲載されました。
*記事で使用している図・表はPDFで確認できます。

特集1 次世代に向けた接着・接合技術と最近の動向

変成シリコーン樹脂系構造用接着剤による異種材接着

セメダイン㈱ 橋向秀治

1.はじめに
 接着剤は、物を固定するために用いられる。接着は接合された物の付加価値を向上し、生活を豊かにすることができる部材である。
自動車・車両、建築、電機、繊維・革加工、製本、航空機、家具市場などに多く使用されている。
 また、近年ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などのエンジニアリングプラスチック、CFRP(炭素繊維強化樹脂)など高機能な部材が使用される中、より異種材の接着が可能な接着剤への注目が集まっている。 

2.弾性接着剤
 弾性接着剤は当時シーリング材用の樹脂として開発された変成シリコーン樹脂(以下MS)を接着剤として使用したのが始まりである。1988年に「強い接着剤からはがれない接着剤へ」という新しい概念のもと「弾性接着剤」として発売を開始した1)
従来使用されていたエポキシ樹脂系接着剤は、初期強度を高くすることで必要接着強さまで低下する時間を長くし、耐久性を確保する設計思想であった。
 一方、MSを使用した弾性接着剤は硬化物がゴム状弾性体となる。そのため、初期接着強さはエポキシ樹脂系接着剤と比べ低くなるが、さまざまな応力を緩和できる。また、破壊までのエネルギーは大きくなり、長期耐久性を得ることできる(図1、図2参照)。
 弾性接着剤は耐衝撃性、変形追従性、耐久性等の性能が評価され多くの用途で使用されている。

3.MS系弾性接着剤2)
3.1 MSの硬化機構
 MS系接着剤に使用されている一般的な樹脂骨格、および硬化機構を図3、4に示す。
主鎖構造に可とう性に優れているポリエーテルを持ち、また、分子量が液状ポリマーとしては高分子量(数平均分子量5,000から20,000)であるため、硬化物は一般的な接着剤使用領域(-40℃以上の温度)でゴム状弾性体となる。
3.2 MS系接着剤の特徴
 MSをベースとした弾性接着剤は、下記特徴を有する。
①外的な振動、衝撃などを緩和する
②熱ひずみなど膨張、収縮を緩和する
③変形追従性を有する
④接着界面に応力が集中しにくい
⑤線膨張係数の大きい異種材料同士の接着に発生するひずみを緩和する
⑥脆弱な基材の接着時、基材を傷めにくい
⑦広範囲な接着性を有する
⑧ポリウレタン樹脂系で見られる硬化時の発泡がないなど

4.MSの自動車構造用異種材接合への応用3)
4.1 自動車構造用異種材接合の現状
 欧州自動車メーカーを中心に、自動車の車体に「構造接着」技術への実用化が加速している。背景としては、

 

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