年頭所感 クラレ 伊藤正明社長

2020年01月10日

ゴムタイムス社

 昨年はクラレグループにとって逆風の一年となりました。米中貿易戦争の影響を受けて一部事業で需要が低迷したこと、用途展開の遅れや競合との競争が激化した事業が多かったことに加え、米国エバールプラント火災事故の影響からの回復遅れ、火災事故による訴訟、カルゴンカーボンのユーティリティトラブルなど、クラレグループ内外の要因により、業績については厳しい結果となる見込みです。

 一方、昨年はタイのプラント建設をスタートさせたこと、光学用ポバールフィルムの新ラインが稼働したこと、水溶性ポバールフィルムの新工場建設工事の進捗など大型工事が進展しました。加えてクラフレックス岡山工場にメルトブローン生産設備を増設することを決め、クラレ岡山事業所の動力設備の第一期更新工事にも着手しました。また、プランティック事業でもアメリカにおける樹脂事業の新展開に取り組んでいます。このように業績は厳しい状況にありますが、中期経営計画で掲げた施策の実行と進捗の面では、着実に進めることができたと考えています。

 一昨年のエバールプラントにおける火災事故については、訴訟が進行中なので詳細には触れませんが、プラントをスタートさせる際に、安全への過信や慢心がなかったか、安全な立ち上げに万全を期していたか、今一度振り返ってチェックする必要があると考えています。この対策として、もう一度安全活動の原点に戻って、危険予知とその訓練の見直しと徹底により、一人ひとりが危険に対する感受性を一段と高める取り組みを改めて始めます。全員が「安全はすべての礎」ということを念頭において、「安心して働ける会社、事故や災害が起こらない安全な会社」を作り上げるべく、自らの責任として無事故・無災害を目指していただきたい。
 次に、2020年度の世界経済は、米中の貿易戦争が多方面の覇権争いへとさらに拡大・激化し、英国のEU離脱問題は混迷の度を深め、世界各地の地政学リスクも高まる一方であり、加えて米国の利下げを起点とした金融緩和ドミノの可能性など懸念材料が目白押しです。一方、日本の国内景気はオリンピック・パラリンピックまではという期待感はあるものの、関連する建設工事は既にピークを過ぎ、消費増税の今後の影響を考慮すると、一層慎重に見ていかねばならないと思います。

 そのような中、本年はクラレグループにとって中期経営計画「PROUD2020」の最終年度であると同時に次の中期計画を策定する年でもあります。現計画に込めた自分たちの「思い」をもう一度確認し、掲げた諸施策の進捗を点検して、戦略・アクションプランの変更が必要だと判断した場合は躊躇なく迅速に対応すること。このような取り組みを通じて、本年を次期中期計画に備えた足元を固める一年としていただきたい。

 ここで、私がいつも申し上げていることを繰り返します。一つ目は安全についてです。全員が「安全はすべての礎」ということを念頭において、「安心して働ける会社、事故や災害が起こらない安全な会社」を作り上げるべく、自らの責任として無事故・無災害を目指していただきたいと考えます。

 二つ目はクラレグループで働く社員が、「そこで働くことに誇りを持てる会社」にしたいということについてです。昨年は炭素材料事業において、公正取引委員会から排除措置命令を受けました。2017年にも防衛装備庁入札に係る排除措置命令を受けて、取引の見直し、再発防止に取り組んできましたが、再び排除措置命令を受けたことは誠に残念で痛恨の極みであります。取り組みに何が足りなかったのか、進め方に問題がなかったかを検証した上で、今一度全社を挙げて不正な取引の防止をはじめ、コンプライアンス体制の見直し、強化を図らねばなりません。

 また、クラレグループはさまざまな個性を持った人達が安心して働ける職場、働きやすく、働き甲斐のある職場をつくっていくことを目的に働き方改革を進めています。この活動を通じて、ダイバーシティに富んだ、社員の皆さんが誇りを持って働ける会社の実現に向け取り組んでいきましょう。

 最後に長期ビジョンのありたい姿でもある「独自の技術に新たな要素を取り込み、持続的に発展していく会社」についてです。独自の技術をベースに、クラレの内外にある新しい技術・力を活用して、既存事業はさらに強く大きくするとともに、今後の成長を期待する事業は早期の規模拡大と収益向上を目指していただきたい。研究開発のあり方、進め方を見直してから、少しずつ成果に繋がり始めていますが、まだまだ道半ばです。「さすがクラレ」と言われる新素材、新技術を一日も早く世に出して、成功体験を積み重ねていきましょう!

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