極東産業 放射化抑制の塗料材開発 安藤ハザマと共同で

2018年11月02日

ゴムタイムス社

 極東産業は11月2日、同社と安藤ハザマが共同で、低エネルギー中性子による放射化を抑制する塗料材を開発したと発表した。

 放射化は、中性子によりコンクリートや金属内の元素の一部が放射性となる物理現象で、中性子が発生する研究施設や医療施設では、施設内の人への影響やコンクリートなどが放射化することによる放射性廃棄物の増加が懸念されている。

 両社は、この問題の主因となる低エネルギー中性子による放射化の抑制を目的とした最大約30mmの厚塗りが可能な塗料材の開発に成功した。この塗料材はコンクリートや金属、ポリエチレン等の樹脂への塗布が可能で、平面だけでなく曲面などの複雑形状部にも直接塗布することができるため、従来の板状の材料では必要だった下地材が不要となり、中性子の発生源となる複雑な形状を持つ装置類にも塗布することができるほか、塗料材に含まれる水素成分により中性子を減速させ、ホウ素化合物が中性子を吸収することにより、放射化を抑制する。

 コンクリートの放射化抑制性能試験を実施した結果、この塗料材をコンクリートに10mm厚で塗布した場合、コンクリートの放射化量が塗布しない場合に比べ約25分の1に低減され、従来品と同等の効果があることが確認された。

 中性子はがん治療や高分子材料の構造解析、水素吸蔵合金の研究などに用いられており、これに関連する事業として、極東産業は放射線に強い素材や遮へいするための材料開発に取り組み、安藤ハザマは中性子を発生する加速器を用いたBNCT施設やPET施設、粒子線治療施設などの医療施設に多く携っている。がん患者の増加に伴い、同様の施設の建設が今後増加することが予想され、中性子を利用する高分子材料の構造解析や燃料電池などの分析・研究施設への適用も期待されることから、両社はこの塗料材の導入を積極的に提案することにしている。

 

開発した塗料材

開発した塗料材

10mm厚に塗布した例

10mm厚に塗布した例

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