【新年インタビュー】住友ゴム工業 池田育嗣社長

2018年01月09日

ゴムタイムス社

 ダンロップスポーツを経営統合することで、先に買収したダンロップブランドを今後の事業展開に活用し、グループを挙げて事業の成長と収益力向上を目指す住友ゴム工業。池田育嗣社長に17年を振り返ってもらいつつ、18年の方針などを聞いた。

◆17年を振り返って

 点数をつけると100点満点で今年も昨年と同じ80点。今年はダンロップブランドの権利を全て獲得し権利者になれたこと、スポーツの事業を全世界で展開できるようになったこと、そのためにダンロップスポーツ社と統合したことなど、将来に向けた種まきができただけでなく、技術的にも賞を頂き、売上も2桁増の見込みなので、本当は点数を上げたかったが、利益面では原材料の価格高騰を回収することができず、大幅な増収になったものの、減益となったので、この点数とした。

 経営体制では、1月1日から、住友ゴムとダンロップスポーツは経営統合し、ダンロップスポーツは住友ゴムのスポーツ事業本部として新たにスタートすることになった。また、住友ゴムグループは今年4月に英国のスポーツダイレクト・インターナショナルから、海外のダンロップブランド、商標権並びにダンロップブランドのスポーツ用品事業およびライセンス事業を譲り受けた。この結果、タイヤ事業では欧米やインド、豪州等を除く世界の幅広いエリアでダンロップ商標権の所有権者となり、スポーツ事業と産業品事業では、全世界でダンロップブランドの商品を展開することが可能になった。

◆北米市場について

 開発面では、1月に「米国テクニカルセンター」を本格稼働。3月にはタイヤテストコースで四輪車用タイヤの評価を新たに開始するなど、顧客ニーズを取り入れた商品力の高いタイヤをスピーディーに市場に投入できる現地開発体制を整えた。生産面については、北米の米国工場、南米のブラジル工場でそれぞれ生産能力を拡大する計画が順調に進捗している。

◆欧州・アフリカ市場について

 開発面では「欧州テクニカルセンター」が、8月から稼働を開始した。これにより今後、欧州・アフリカ市場での顧客ニーズに沿った商品開発のリードタイムが短縮でき、市場での競争力をますます高めることが可能となる。生産面では欧州市場への供給拠点であるトルコ工場が順調に生産能力の拡大を続け、南アフリカ工場でも乗用車・SUV用高性能タイヤの生産能力を増強しており、トラック・パス用タイヤ工場も来年7月より稼働予定だ。販売面では英国において年初に大手タイヤ販売会社ミッチェルディーパー社を買収し、FALKENブランドの販売拡大を積極的に推進した。

◆アジア・太平洋市場について

 商品カの強化、販売応網の拡充を積梅的に進めた。昨年から低燃費タイヤの自主規制がスタートした中国で、基準に適合した「SP TOURING R1」「エナセーブ EC300+」をいち早く展開した。この2商品は他のアジア市場でも展開を進めており、環境対応タイヤ市場におけるプレゼンスをさらに高めていく。販売面では中国で展開する小売店網「Dガード」の展開強化、中国、インドをはじめとするアジアにおけるFALKEN取扱い店舗数の拡大。オーストラリアでの「FALKENパルス」店の拡大など、各国で取扱店舗数が順調に増加している。

◆産業品事業の動向については

 医療用精密ゴム部品では2015年に買収したスイス・ロンストロフ社の子会社としてスロベニアで新工場建設を決定した。新工場は2019年4月から稼働予定で、これにより医療用精密ゴム部品の欧州における生産能力は2016年比で3倍になり、これを活かして、グローパル展開をさらに進めていく。また、インフラ商材では東京オリンピックに向けた整備物件の需要の取り込みを積極的に進めており、土木海洋・体育施設商品とも順調に推移した結果、産業品事業としては過去最高の売上・利益を達成する見込みだ。

◆スポーツ事業の統合により、研究開発体制に変化はあるか

 スポーツ製品に要求される技術力は上がっている。ダンロップスポーツだけでは、研究開発力が時代に合っていないと考えている。タイヤの持つ研究施設、解析技術を使用したら、飛躍的に性能が高い製品ができる。そのために、住友ゴムと一緒になり、タイヤの技術者を含め様々なアイデアを出し、顧客が驚くような製品を作りたい。

◆18年の方針は
 「VISION2020」で掲げた「Go for NEXT~真のグローパルプレイヤーになる~」ことを目指し、次の3点を方針としてまとめた。

 第一は「変化をチャンスと捉え、力強く成長しよう」。変化を先取りし、強みを活かし他社優位性のある商品開発やサービス構築で変化をチャンスに変えること。タイヤでは、新しい技術開発コンセプト「SMART TYRE CONCEPT」を、時代に先駆ける商品開発として、早急に具現化を図り、スポーツ、産業品でも、他社を上回る付加価値の高い商品をスピーディーに展開し差別化を図っていく。

 第二は「中期計画を確実に実行し、収主主力を高めよう」。スポーツ・産業品も含め、全世界でバランスよく利益を稼ぐ体制を構築していきたい。そのために生産・技術開発・販売部門それぞれが連携を深め取り組みを強化することで、一層の収益増を図る。また、ダンロップブランドの活用を全社で進め、これを全部門で販売促進にも活かし、プランド価値を向上させ、収益力強化につなげていく。来年は確実に業績回復を成し遂げるべく、グループ全体で中期計画に織り込んだアクションを強化・実行し、収益力向上に取り組む。

 第三は「一人ひとりが成長し、活気ある組織にしよう」。グローパルに事業拡大し、成長していくためには、一人ひとりの社員の成長とそれを組織力強化につなげることが不可欠だ。環境変化が劇的にスピードアップする中、グローパルに様々な課題が出ているが、社員には、必要な知識・経験を磨くことに加え、自主性を持ち、どんなに困難な課題であっても克服し、目標達成までやり抜く強い意志と熱意あふれる企業人を目指してほしい。

(アングル)
 品質不正問題について、「つらい、他人ごとは思えない」と同じ生産部門出身の立場から感想を語った池田社長。品質管理体制においては、ルールを決め、抜けや漏れがない体制を作るのが基本だとし、今後はグローバルでも品質管理システムに対応し、海外でも抜けや漏れがないようにしたいと意欲を見せていた。

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