三洋貿易 「長期経営計画」達成へ経営体制強化

2026年07月14日

ゴムタイムス社

「長期経営計画」達成へ経営体制強化

営業利益90億達成目指す ゴムは基幹商材と新規商材を拡売

 長期経営計画「SANYO VISION2028(SV2028)」で掲げた目標達成に向け、社内組織の改編を進める三洋貿易。経営体制の一層の強化を目的とした組織改編及び担当役員の設置を取締役会で決めるなど、SV2028の目標達成に向けた取り組みを加速させている。

 26年2月19日に都内で開催した成長戦略説明会で新谷正伸社長は「組織改編を行った理由の①は、SV2028の最終年度(28年9月期)の営業利益目標90億円の達成、②はPBR1倍以上、③は『人のSANYO』を体現すべく、人的資本の充実を達成する、この3点が重要になる」と話した。その上で、ファインケミカル、インダストリアル・プロダクツ、サステナビリティ、ライフサイエンスの4つのセグメントに統括役員を設置し、市場での戦略性および専門性を高めることとした。 
 さらに、SV2028目標達成への確度を高めるべく、執行委員会の名称を「SV2028達成委員会」に改編し、戦略的かつ機動的に事業執行と体制強化を進めていく。新谷社長は「単に名前を変えたのではなく、これは目的意識をもった会議体にするための改編。SV2028達成をやり抜く体制ができた」と強調した。
 同社の営業利益の推移をみていくと、前期(25年9月期実績)は64億3000万円、今期(26年9月期予想)は62億円を見込む。「サステナビリティにおける大型プロジェクトが端境期にあることや、バイオ関係のビジネスが消滅したこともあり、今期は踊り場になる。ただ、既存ビジネスに加え、新規案件が順次収益に貢献するため、目標とする28年9月期の営業利益90億円は必達できる」(新谷社長)と達成に自信を示した。
 営業利益90億円に向けた各セグメントの上積み分の内訳(3年間でのプラス)に関しては、サステナビリティは3年間で15~20億円、インダストリアル・プロダクツは同4~5億円、ファインケミカルは同3~5億円、ライフサイエンスは同3~5億円を見込む。このうち、サステナビリティは「営業利益が大きく進捗するセグメント」(新谷社長)として、再生可能エネルギー、海洋開発、資源循環といった案件に期待を寄せる。
 資源循環では、海洋鉱物資源事業への展開として「南鳥島レアアースプロジェクト」に参画中。「レアアースは昨今ニュースで取り上げられることも多い。ニッチな分野だが、社会貢献できる分野として期待している」(新谷社長)と力を込める。
 説明会では、4セグメントの統括役員が各事業の成長戦略を説明した。ゴム事業部と化学品事業部で構成されるファインケミカルセグメントでは、小宮康上級執行役員ゴム事業部長が同事業部の成長戦略を紹介。小宮氏はファインケミカルの成長戦略について「基幹商材の更なる拡売、新規商材は高付加価値商品と環境対応商材の拡売」の2点を挙げ、それぞれ具体的な施策を紹介。
 その他のセグメントでは、インダストリアル・プロダクツセグメントは難波嘉己取締役兼執行役員事業部門担当・経営企画部長、ライフサイエンスセグメントは田口耕児上級執行役員ライフサイエンス事業部長、サステナビリティセグメントは平澤光康取締役兼執行役員事業部門担当が各セグメントの現状や成長戦略を説明した。


 

果物野菜の鮮度を最大 2倍に保つシール販売開始

 三洋貿易のライフサイエンス事業部は、世界中で大きな社会課題になっているフードロス改善に貢献する商材の発掘・販売に力を入れている。 25年2月より販売を開始した「StixFresh(スティックスフレッシュ)」もその一つだ。スティックスフレッシュは、果物のカビを防ぐ天然由来100%の成分を塗布したシールタイプの商品。果物や野菜などの青果物のパッケージにシールを貼り付けることで、鮮度保持期間を最大2倍まで保つことができる。大規模な冷蔵設備や特殊なコーティング剤を必要としないため、手軽に扱える点が同シールのメリットとなっている。スティックスフレッシュは、米国のスタートアップ企業であるRyp Labs(ライプラブス)が製品開発に成功した。 同社は25年1月にライプラブスと販売代理店契約を締結し、日本市場での販売をスタートさせている。今後は農家や卸売業、小売業などあらゆる場面で利用できる商品として、日本国内のみならず東南アジアでの販売も視野に入れている。


 

南鳥島レアアースPJに参画

 三洋貿易は「SV2028」においてサステナビリティ領域を成長の主力エンジンに据え、3年間で15~20億円の営業利益の上積みを目指している。
 サステナビリティ領域では、①再生可能エネルギー、②海洋開発、③資源循環の3つを重要案件として設定。同社のグリーンテクノロジー事業部・エネルギーソリューション事業室が戦略立案、2004年に三洋貿易の100%子会社となったコスモス商事が事業運営を担う。
 資源循環では、南鳥島レアアース(希土類)プロジェクト(PJ)に同社グループのコスモス商事が参画中。同プロジェクトでは、内閣府の「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」海洋課題の推進法人である国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)が所有する地球深部探査船「ちきゅう」に対し、コスモス商事が輸入販売している採鉱機・揚泥管・浮力体および遠隔操作無人探査機(ROV)を納入した。
 具体的には、浮力体は24年8月末に納品(合計820個)、揚泥管は25年5月末に納品(合計424本)、採鉱機は25年冬に納品、ROVは25年秋に納品し、ちきゅうへ実装を完了した。
 コスモス商事は1990年の会社創立時、石油天然ガス、地熱・温泉の井戸を掘る際に必要となる掘削機の輸入販売から事業をスタートし、現在では掘削業界で主要機器プロバイダの一角を占める。SIPでは、27年から南鳥島沖の海底(水深6000m)からレアアースを含んだ汚泥を本格採取(1日350t)する計画だ。同社グループでは、本格的な採泥試験の成功に向けて全面的にサポートする。さらに、今回確立した技術を武器に、将来的にはレアアース泥をはじめ、マンガン、ノジュールや熱水鉱床といった次世代の海底鉱物資源の新たなる領域を切り拓き、海洋ビジネスの成長を加速していく。


 

酪農分野の新しいソリューション・メタスマート拡販に力

 三洋貿易グループで畜産用飼料を輸入販売するワイピーテックは、フランスの配合飼料メーカーが開発した乳牛用飼料「メタスマート」の本格展開に乗り出している。
 メタスマートは、仏のAdisseo社が開発したメチオニン製剤の機能性飼料添加物。
 25年3月に農林水産省から新規飼料添加物として指定されたことを受け、「メタスマート」として日本市場で販売を開始した。
 昨今の地球温暖化現象を受けて、暑さに弱い乳牛は、ヒートストレス(暑熱ストレス)により乳量の減少や乳脂肪が低下する現象が起こっている。メチオニンは、乳牛のタンパク質合成に必要な制限アミノ酸とされ、家畜の成長を促進し、飼料の効率を高めるために不可欠な栄養素となるが、メタスマートは、牛の健康と乳の生産に欠かせない必須アミノ酸である『メチオニン』を効率よく補給することができ、通常は、牛の第一胃(ルーメン)で分解されてしまう成分を特殊な技術によって保護し、しっかりと吸収させることができる。
 家畜の生産性向上と環境負荷低減を同時に実現できる点もメタスマートの特長に挙げられる。アミノ酸バランスを最適化し飼料中のタンパクを1%削減することで、尿中窒素排出を削減。飼料中カーボンフットプリントが約10%削減されるため、「メタスマートは畜産業の課題に貢献するソリューション」(同社)と位置付ける。
 ワイピーテックは、メタスマートのセミナーを各地で開催しており、飼料メーカーや販売代理店などのPRを通じ、中期的には乳牛用配合飼料の50万t(16%)への採用を目指す。将来的にはメタスマートをライフサイエンス部門の中核を担う素材として育成していく考えだ。


 

多様な個性が価値を生む、三洋貿易の最適解

障がい者雇用を本格開始

 三洋貿易は、障がい者雇用の新たな価値提供につながる取り組みを本格開始した。その一環として、26年1月からは同社が採用した「クラフトメンバー」と呼ぶ障がい者3名が茨城県牛久市の「ダイバーズヴィレッジ牛久」に就労し、コーヒー豆の選定から焙煎、パッキングまで行う業務を行っている。26年6月22日には、同社本社で社員向けに障がい者雇用の意義を深めてもらうイベントを開催した。
 イベントの冒頭、和田久美子執行役員は「多様な個性や強みを持つ社員を、当社はクラフトメンバーと呼んでいる。ただ、コーヒーを提供することが目的ではない。人の可能性をどうすれば価値に変えられるか。当社はその方法を問い続けてきた。コーヒーはその最適解を可視化したものになる」と強調する。
 同社の最適解は、創業以来大切にしてきた指針「自由闊達」の企業文化に支えられている。「自由闊達という文化があるからこそ、多様な個性が価値として発揮される。クラフトメンバーが提供しているコーヒーも多様な個性から生まれてきた価値になる」(和田執行役員)と話す。
 イベントでは、新谷正伸社長や社員、クラフトメンバーも参加。クラフトメンバーが作成したコーヒーは、社員が飲むだけでなく、同社営業社員の手を通じ、「ノベルティグッズとしてお客様にも価値をお届けしていきたい」(和田執行役員)としている。


 

EVバッテリー劣化を高速診断

 三洋貿易は、25年5月に販売を開始した電気自動車(EV・PHEV)のバッテリー診断機(テスター)「EverBlüe Drive」の拡販に力を注いでいる。利便性、安全性、経済性の3点を特長とするEVバッテリー診断機は、利便性では、急速充電口に機器を挿入するだけでバッテリーの劣化度を短時間(30秒)で測定可能。ハンディータイプでかつ軽量(750g)。安全性は、データ取得のための充放電は不要。さらに17万8000円と手ごろな価格に抑え、診断回数は無制限とするなど経済性も備える。
 EVバッテリー診断機を使うメリットは、中古EV・PHEVの買取、販売時の査定工程の一部として活用できる、アプリでのデータ連動により、スムーズな診断レポートの出力が可能といった点が挙げられる。 
 日本の電気自動車の普及が遅れている大きな理由の一つに、EVバッテリーの正確な劣化度がわからず、下取り価格が低く抑えられてしまうことがある。 この現状を変えるべく、同社では同バッテリー診断機の提供を通じ、国内の中古EV車市場の確立を目指していく。