専門技術団体に訊く19 団体インタビュー エンプラ技術連合会 佐々木 克事務局長

2025年11月07日

ゴムタイムス社

専門技術団体に訊く19 団体インタビュー

エンプラ技術連合会 佐々木 克事務局長


エンプラ業界の健全な発展を目的に活動
日常生活に欠かせないエンプラの良さをPR

 エンジニアリングプラスチック(以下、エンプラ)業界の健全な発展を目的に活動する業界団体「エンプラ技術連合会(JEPTEC)」。その事務局長である佐々木克氏に、会の沿革、活動内容、課題、そしてエンプラの可能性について話を伺いました。

──会の沿革について。

 JEPTECの前身は1978年に設立された「工業熱可塑性樹脂連絡会(エンプラ連絡会)」であり、これはエンプラ電取法連絡会幹事会を母体として発足したものです。

 当初は10の樹脂技術研究会が存在していましたが、現在はPA(ポリアミド)、POM(ポリアセタール)、PAT(PBT 熱可塑性エラストマー樹脂)、PPE(ポリフェニレンエーテル)、PPS(ポリフェニレンスルフィド)、LCP(液晶ポリマー)PAR(ポリアリレート)の7つに集約されています。 

 各研究会はそれぞれ独自に活動していますが、共通課題については連絡会として一本化する方が効率的でした。こうした背景から、1999年に現在の「エンプラ技術連合会」へと改称されました。

──会員数は。

 現在の会員は、各樹脂技術研究会に参加する製造者および輸入販売業者で構成されており、会員企業は17社になっております。かつては20〜30社が加盟していましたが、不況時の経費削減、競争法上の懸念を最重視するような風潮等の時代の流れのほか企業の組織編成の変化もあり、会員数は減少傾向になっています。

──活動内容を教えてください。

 活動方針としては、内外の情報調査・研究、行政規則の改廃に関する情報共有、関係機関との連携、そして会員間の情報交換が柱となっています。具体的な活動は、電気安全委員会、ISO・JIS委員会、環境委員会の3つの委員会を中心に展開しています。

 電気安全委員会では、IEC規格やUL規格など、国内外の電気安全規格に関する情報交換を行っており、年6回の会合を通じて、規格の制定・改定・廃止に関する情報を共有しています。エンプラにとって適切な規格となるよう、関係団体への働きかけも行っています。

 ISO・JIS委員会については、ISO/TC61(プラスチック)やJIS規格に関する活動を行っており、国内委員会に出席して意見を述べるなど、エンプラに適切な規格の維持管理にも取り組んでいます。

 環境委員会は、環境負荷物質や化学物質管理、安全衛生、食品衛生法、リサイクル、CO₂排出など、幅広い環境課題に対応しています。環境負荷物質管理に関しては、エンプラは数多くの添加剤を使用していますが、その多くは各会員会社の機密事項にも属するため、情報の収集が難しいという課題もあります。

 組織運営については、総会を年1回開催し、会長は1年、各委員長は2年の任期で交代になります。最近では、コロナ禍以降はハイブリッド形式での開催が定着しました。

実務に役立つ「エンプラ DATA BOOK」

実務に役立つ「エンプラ DATA BOOK」

──エンプラの環境対応の難しさについて。

 リサイクルやCO₂排出問題など、昨今環境に関連する課題がクローズアップされてきています。リサイクルに関しては、PETやPSのような単一素材は比較的リサイクルが進んでいますが、エンプラは多くの添加剤を使用したり、他材料との複合化が進んでいたりするため、分別が困難であり、PCR(ポストコンシューマーリサイクル)の実現には多くの課題があります。PIR(ポストインダストリアルリサイクル)のように用途によっては回収が可能な場合もありますが、製品ごとに仕様が異なるため、コストが増大するという現実も考えなくてはならず、社会全体で折り合いをつける必要があります。こうした課題に対して、過剰な要求が来ないように、会員企業との意見交換を重ねています。

 現状ではプラスチックのない世界には戻れないため、うまく付き合っていく方法を探ることが重要になってくると考えています。

エンプラDATA BOOKは、日本語、英語、中国語に対応

エンプラDATA BOOKは、日本語、英語、中国語に対応

──会の出版物を教えてください。

 出版物としては、現在「エンプラDATA BOOK」を発行しており、各種エンプラのグレード別物性値を会社別に一覧表としてまとめたものになります。1993年の初版以来、2年ごとに改訂されており、2025年4月には第17版が発刊されました。日本語、英語、中国語に対応しており、会員企業だけでなく非会員にも販売しています。新人研修や製品比較など、実務に役立つ資料として好評を得ています。

──会の課題がありましたら。

 現在の課題としては、会員数の減少に伴い、連合会の存在意義を感じてもらえるような活動の活性化が求められています。電気安全規格、ISO・JIS規格、環境問題など、継続的な活動を通じて、外部への情報発信を積極的に行っていきます。2027年には設立50周年を迎えます。

──エンプラの強みは。

 エンプラなしでは現代の生活は成り立ちません。エンプラは、自動車や家電だけでなく、日常生活に密接に結びついて欠かせない素材であり、代替は現実的ではありません。日本の技術力は高く、添加剤や配合、コンパウンド、品質管理において世界でも優れていると思います。代替ではなく、エンプラでなければ実現できない世界を広げていきるように、会として活動をしていきたいです。

*この記事はゴム・プラスチックの技術専門季刊誌「ポリマーTECH」に掲載されました。