専門技術団体に訊く18 団体インタビュー 日本プラスチック有効利用組合 平野二十四理事長

2025年08月05日

ゴムタイムス社

専門技術団体に訊く18 団体インタビュー

日本プラスチック有効利用組合 平野二十四理事長


プラを資源循環させる「あるべき姿」の共有目指す
マテリアルリサイクルを積極的に発信していく

 日本プラスチック有効利用組合(以下、NPY平野二十四理事長)は、プラスチックの複合再生(不要となったプラスチックの再生原料化と成形)事業者と趣旨の賛同者を会員とする全国組織団体です。プラスチック処理及び再生の促進と業界の発展を目的として、再生プラスチック製品の普及と、プラスチックの有効利用推進、啓発に取り組んでいます。平野理事長に組合の沿革、組合の特徴、業界の課題などについて尋ねました。

──組合の沿革について。

 日本プラスチック処理再生組合(現:日本プラスチック有効利用組合)は1976年6月に、プラスチックの複合再生事業者を中心に全国組織として、通産省(現:経済産業省)の指導とプラスチック処理促進協会(現:プラスチック循環利用協会)の支援を受けて設立しました。

 当時は石油化学産業が活性化している時代で、プラスチックが大量に使われる中、プラスチック処理に重点を置く以外に、プラスチックを有効利用する必要性が高まってきました。そこでプラスチック処理促進協会では、複合再生事業者育成に向けて設備資金の債務保証制度を発足させ、それを受けて同事業を開始した企業を中心に全国的な組織化を目指して、日本プラスチック処理再生組合を立ち上げたと聞いています。

 設立当初の組合員数は8社でした。組合の設立メンバーは、成形製品を粉砕させ、再生プラスチックを使い、成形製品として市場に還元するというところから始まりました。そして、1983年に日本プラスチック有効利用組合に改称しました。

 組合員数のピーク時は、50社ほどいた時がありましたが、ただ会員を増やすことでなく、組織の目的、目標の一致を重視しており、現在(4月時点)で26社となっています。NPYは現在、経済産業省製造産業局素材産業課の関係主要団体の一つであり、日本でプラスチックのマテリアルリサイクルに関する団体と言えば、NPYと言われるほど歴史ある団体であると言えます。

──組合の特徴を教えてください。

 全日本プラスチックリサイクル工業会(JPRA)は、不要となったプラスチックの原材料のリサイクルに注力されている団体です。一方、NPYは「世の中にある不要になったプラスチックを有効利用し、製品を作って市場に出す」という役割があります。一般的に言われているプラスチックリサイクルではなく、資源の循環に直接貢献するマテリアルリサイクルとして、再生材を使った成形製品の企画開発に重点を置いた団体であることが特徴です。これらの製品群は、再生プラスチック製品として初めてJIS規格の制定を実現し、グリーン購入、エコマーク、CFP(カーボンフットプリント)と多くの第3者認証や環境関連ラベル等の認定を受けています。

 またCO2排出量削減に向け、製品のCFPを見える化の取り組みの一環として、2012年に再生PEペレットと再生PPペレットのCO2排出原単位を共通原単位のデータベースとして、NPYはJPRAと共同で日本初の団体登録を行いました。

──事業活動について。

 総会、理事会、会員向けの会報誌の発行のほか、コロナ前までは、部会を立ち上げセミナーを開催していました。

 そのほか、経済産業省とプラスチック循環利用協会、NPYで再生3者会議を4か月に1回開催していました。そこではリサイクルや環境に関する情報交換をしていましたが、今年度から環境省や全日本プラスチックリサイクル工業会も加わり、再生5者会議となり、開催頻度も2か月に1回と増え、ますますリサイクルに向けて活発な情報交換ができると思います。

──マテリアルリサイクルについて。

 マテリアルリサイクルには、同じものへ戻す水平リサイクルがイメージしやすいですが、リサイクルをバランス良く持続的に取り組むためには、いらなくなったものと使いたいニーズもバランス良く繋がなくてはいけません。世間一般に言われるリサイクルは、「いらなくなったプラスチックを粉砕する、ペレットにするなどし、購入してくれる人に提供しましょう」という話が多いです。またPPやPEだけがプラスチックではありません。様々な種類のプラスチック素材があるため、「どの産業で、どんな再生プラスチック材料、製品ができて、どのような品質が求められているのか。だからこのようなリサイクルが可能です」という背景のもと、プラスチックの再生材料の用途マッチングすることが、今後重要になっていきます。プラスチックを原料化したが、用途は不明ではうまく継続的な資源循環が行われなません。用途を見据えた上でのリサイクルが必要になってきます。

──NPYの役割について。

 血液の循環になぞらえ静脈産業と動脈産業という表現がありますが、産業においては、廃棄物処理が主業の「静脈産業」、バージンメーカーのようなものづくりが主業の製造業を「動脈産業」と呼んでいます。再生原材料メーカーと再生成形加工製品メーカーが集まるNPYは、この特長を活かし、静脈産業と動脈産業を繋ぎ、心臓のような役割をしていると考え、私たちの様な資源循環のリサイクル事業を「心臓産業」と名付けました。

 NPYの持つプラスチックの再生加工技術は、資源循環に直接貢献するマテリアルリサイクルですが、これまで日本の直線経済の社会構造においてあまり知られてきませんでした。現在、環境問題、資源消費の在り方、廃棄物削減の視点からの行動変容の最先端で、プラスチックのマテリマルリサイクルが取り上げられています。そのため、NPYではマテリアルリサイクルの情報を今まで知られていない人にも積極的に発信し、より多くの人にマテリアルリサイクルの課題やあるべき姿を知っていただきたいと思っております。

──リサイクル事業の課題は。

 動脈産業、心臓産業、静脈産業の構図のなかにサプライチェーンとしてきちんとしたサステナブルな居場所を作れるかが課題になります。またそこで、プラスチックのリサイクルを正しく理解してもらい、業界全体でプラスチックを資源循環させる「あるべき姿」を共有することが大事になっていきます。

──最近のトピックスは。

 最近になり、ようやくマテリアルリサイクルについて話せる時代になってきました。NPYに加盟する企業は、全国に26社あります。我々の立ち位置は心臓産業です。まずは各拠点を活用し、地域に密着して面として連携し、規模を大きくしていくことが重要ではないかと思います。また各業界間でも連携し、良い循環事例を増やしていきたいです。お互いの専門的な知見を活かしつつ、連携することでより強固なプラスチックの循環世界が構築できると思います。マテリアルリサイクルにおいては、一か所に大きな拠点をつくり材料確保のためにより遠くの排出物を集め輸送距離を増やすより、既に各地で活躍しているこうしたリサイクル企業とのアライアンスでプラスチックのリサイクルの道が全国に開けるのではないでしょうか。

──今後の展開は。

 プラスチックのリサイクルのイノベーションは、「温故知新」という言葉をキーワードにサステナブルな資源循環連携を構築したいと考えております。歴史を正しく学べば、未来に向けた近道ができることを確信しています。NPYの温故知新を皆様と日本の資源循環の未来に是非多役立てたいと組合員一同頑張っております。

*この記事はゴム・プラスチックの技術専門季刊誌「ポリマーTECH」に掲載されました。