活躍するリケジョ016 ブリヂストン 深澤里羅さん

2025年02月26日

ゴムタイムス社

活躍するリケジョ016 ブリヂストン

革新材料技術戦略・研究部ゴム構造制御技術研究課 深澤里羅さん

タイヤの長寿命化性能に寄与する耐摩耗性の向上へ
ポリマーの材料技術でタイヤを通し社会に貢献したい

ブリヂストンの経営を力強く支えるコア事業は、断トツ商品を作るプレミアムタイヤ事業です。そのタイヤの研究開発に携わる深澤里羅さんに、研究開発や仕事のやりがいなどについてお話を聞きました。

──現在、どの部署で研究開発をしていますか。

 私は革新材料技術戦略・研究部ゴム構造制御技術研究課に所属し、タイヤ用のゴム材料の研究開発をしています。所属している部門としては大きく2つのグループがあります。一つが、「断トツ」性能を目指す材料開発を担当し、もう一つがサステナブルな材料の研究開発をしています。私は「断トツ」性能を目指す材料開発のグループに所属しています。

 タイヤは様々な性能が求められています。例えば、タイヤを長く使って頂くためのライフ性能(以下、長寿命化性能)、タイヤを転がりやすくすることで燃費を向上させる低燃費性能、車のふらつきを抑え、安定してまっすぐ走るための直進安定性能などがあります。私はこのうち、長寿命化性能に関わる耐摩耗性をいかに高められるかを研究しています。タイヤを摩耗しにくくするためにはどういう材料が適切なのか、というゴム材料の研究をしています。

──どのような研究を担当されていますか。

 タイヤは様々な材料の組み合わせで構成されており、天然ゴムや合成ゴムといったポリマーをはじめ、充填剤、薬品などがあります。私の部署では材料ごとにチームが分かれており、着目する材料ごとに研究開発を行っています。私のチームはポリマーを担当しており、タイヤの長寿命化性能に関わる耐摩耗性向上の研究をしています。

──仕事のやりがいを教えてください。

 私は、既存の材料や技術に拘らず、今までタイヤに使っていなかった新しい材料を取り込み、今まで以上に「断トツ」に耐摩耗性能を上げられないかという点に力を入れています。タイヤの開発として誰も触ったことがない材料を扱うことになるため、サンプル作りからサンプルの評価方法、分析手法まで、試行錯誤しながら研究しています。すると、今までの材料とは違う特性を示す、耐摩耗性能が良くなるなど、新しい気づきが生まれます。新しい材料を触り、新しいメカニズムを明らかにしていくことが、難しくもあり、やりがいにも繋がっています。

 現在、ポリマーの分野で耐摩耗性の向上を目指していますが、他のグループは他の材料で耐摩耗性の向上を目指しています。最終的には、グループで相乗効果を発揮し、さらに耐摩耗性能を上げることに取り組んでいきたいです。

──仕事をする上で、心がけていることを教えて下さい。

 私は2020年のコロナ禍で入社しました。当時は、新人研修や最初の2~3ヶ月間は、ずっとオンラインで行われ、入社してからほぼ人と会うことがない状況でした。最近になって、毎日出社し、フェイストゥフェイスで会議するようになり、仕事を進めやすい環境になりました。私は信頼関係を築くにあたり、コミュニケーションの時間を大事にしています。そのため、できる限り出社して、対面で相談しに行ったり、対面での会議を設けて話し合ったりするように心がけています。

──学生の時、理系の道に進んだ理由を教えてください。

 元々高校生の時から理系の科目が好きでした。大学では、高分子材料を機能化する高分子化学研究室に所属して研究していました。なぜなら、身近な日用品には、例えば、撥水性や吸水性、高強度性、高伸縮性など様々な機能を持った素材があり、その素材が製品になって人々の生活を豊かにしていると考え、身近な素材の機能について興味を持つようになったからです。

 研究のひとつとして、バイオミメティクス分野で研究をしていました。そこでは生物の生態を利用して、機能的な高分子材料を人工的に作れないかという研究でした。例えば、モルフォチョウは特徴的な青色の羽をもつ蝶として知られていますが、色素は一切持っていません。しかし、羽に規則的な構造体を持っているため綺麗な青色を発色するのです。その仕組みを理解して「人工的にその仕組みを作れないか」、あるいは「色素の代替材料として作れないか」という研究をしていました。

──現在のお仕事を選んだ理由を教えてください。

 元々、様々な機能発現が可能な素材に興味があり、化学メーカーを探していましたが、ビジネス業態としてBtoBよりもBtoCに関心がありました。ただ、お客様に提供する製品を原材料から最終製品まで作っている企業が少ないと感じていた中、ブリヂストンはタイヤを作り、タイヤをお客様に販売するという川上から川下まで展開していることに、一番の魅力を感じました。

 また、私が小さい時のブリヂストンの思い出として、家族でドライブに行った際に、音楽をかけていましたが車内が騒がしく音楽が聴こえないことがありました。しかし、タイヤをブリヂストンの「エコピア(ECOPIA)」に履き替えたとき、車体は代わっていないのに、音楽がしっかりと聴こえ、車内の空間がこんなにも快適になるという驚きの体験をしました。その時に、幼いながらもブリヂストンのタイヤの性能の高さを感じました。

──入社当時の印象や研究テーマ、職場環境などについて。

 入社する前、堅苦しい大企業というイメージでしたが、とても風通しが良いです。また私の部署は、比較的自由な雰囲気があり、働きやすく、皆さんからフランクに接していただいています。

 1年目の新人テーマとして、リサイクルしやすいような材料や今までタイヤに使っていなかった材料をタイヤに使い、タイヤの性能を上げたり、リサイクル性を高められたりできないかという研究をしていました。現在のメインテーマは、タイヤの耐摩耗性能を高めることですが、私の新人テーマは、基礎的なアカデミックなテーマのため今後も論文や学会など社外の知見も取り入れながら取り組んでいきたいです。

──今後、どのような開発をしていきたいですか。

私が研究している材料技術は、まだ世の中に出ていません。そのため、「断トツ」の耐摩耗性を実現できる材料技術を世に出し、社会に貢献したいという気持ちが一番です。

 また弊社は、テクノロジーセンターが日本だけではなく、米国や欧州など海外にもあります。定期的に会議が行われ、技術交流も行っています。各テクノロジーセンターとコラボして、更に良いタイヤ性能に繋がるような材料技術開発をやっていきたいと思っています。

 タイヤの研究開発について、具体的に何をしているのかイメージがつきにくいと思いますが、タイヤについては、まだまだ解明できていないメカニズムが多くあります。今後は、社会全体でサステナビリティがテーマになっていきますが、サステナビリティとタイヤの性能の両立は大変難しいです。その相反するテーマを、いかに高次元で両立していくかを日々研究して頑張っていきたいと思います。

──趣味や休日の過ごし方を教えてください。

 趣味は中学、高校、大学でダンスをしていました。また、美術館に行く趣味もあり、具体的には上野や六本木にある美術館に行ったり、アーティゾン美術館(旧ブリヂストン美術館)にも行ったりしています。

 

*この記事はゴム・プラスチックの技術専門季刊誌「ポリマーTECH」に掲載されました。

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