創業100周年記念特集 東全ゴム工業 お客様のご要望に応える製品を

2021年10月11日

ゴムタイムス社

 

 

東全ゴム工業株式会社 100周年

 

― 創業100周年に寄せて ―

メンテナンス需要に期待 東全ゴム工業、江原伸一社長

 「ゴムの押出成形技術をひたむきに」をモットーに2021年10月10日、創業100周年を迎えた東全ゴム工業。長年にわたり培ってきたゴムの押出成形技術、プレス成型技術、コンパウンド精練技術を駆使し、様々な分野へ製品を提供してきた同社の7代目社長の江原伸一氏に100周年を迎えた感想や強みなどを聞いた。

江原伸一社長

江原伸一社長

 ◆創業100周年を迎えたお気持ちを。

 太平洋戦争や戦後の好不況、リーマンショックなど幾多の荒波を乗り越え、改めて思うのは100年続く事業を始めた創業者の日江井源太郎氏に「先見の明」があったということだろう。
 創業当時は自転車のタイヤに用いられるゴムチューブを生産していたが、まさに自転車のゴムチューブのように細く長く100年ものあいだ事業を続けられたことはすごいことだと思う。

 ◆事業のターニングポイントは。

 自転車のゴムチューブから現在のゴム製品製造へ事業を転換した昭和40年代初め、ちょうど野田工場(千葉県野田市)を新設した昭和43年頃になる。当時の野田工場は現在の5倍ほどの大きさの面積があり、従来の工場と比べて大型のゴム用機械を導入しやすい環境になったことも大きい。
 野田工場では、同じチューブ状の製品だけど、大型機械を動かすことでA4サイズ断面の長尺製品が生産できる体制になった。そのことが今につながったと思う。

 ◆製品構成について。

 土木建築用資材で使われるカーストッパーやコーナーガードなどの製品を始め、港湾施設やマリーナで使われる防舷材、その他工業用資材、難燃性ゴム生地なども生産している。
 売上に占める製品構成では、公共事業やインフラ整備関連の製品が半分程度を占めて最も多い。ただ、製品構成は変化している。社長に就任してから5年近く経つなかで、公共事業やインフラ整備関連ではメンテナンス需要の取り込みに向けた受注活動に力を入れてきた。
 なぜ、公共事業やインフラ整備のメンテナンス需要に着目するかというと、新規事業の着工件数については年々減少傾向にある。
 一方、道路や橋、港湾設備など社会インフラ網は老朽化が急速に進む。インフラ設備の予防保全に使われるゴム製品の需要は今後も期待できるからだ。

 ◆社長のご経歴を教えてください。

 当社はそれまで創業者一族で事業を続けてきたが、私が学生の時に社員のなかから初めて創業者一族ではない母(江原正子専務取締役)が6代目の社長に就任した。母が社長になったときにいずれは社長を継ぐ意識が漠然だが芽生えた。ただ、一度は外で勝負してみたいという気持ちもあり、卒業後は自動車関連の一般企業で勤務した後、30歳で当社に入社した。
 入社後は、営業や生産、現場の仕事を経験しながら経営全般のことを一通り学んだ。特に、力を入れてきたのが総務系の仕事。その一環として社員の有給休暇の促進にも取り組んだ。
 大手のゴム会社であれば別だが、当社のような中小ゴム会社の場合、いかに社員が働きがいをもち仕事に取り組んでもらえるかが大切だ。それは福利厚生の部分でもそうだし、工場設備の部分も重要になると考えている。

 ◆東全ゴム工業の強みを挙げると。

 一番の強みは小回りがきくこと。小さな会社なので、どちらかといえば大きなロットはあまり得意ではない。ただし、仕事の依頼があれば、まずは挑戦してみようという風土がある。社員から難しい仕事の話しがきても私は「いいよ」というだけ。仕事を断るのは簡単だけど、まずやってみなければ次も始まらない。

 ◆次の100年に向けた抱負を。

 会社の方針としては、これまで100年間で培ってきた技術や製品は大きく変えずに踏襲していく。ただ、それだけでは生き残れないので、時代に合わせたことも取り組まないといけない。
 会社の経営を川の流れで例えると、川の流れが少し曲がったり、細くなったりしてもその変化に対応する。それこそ自転車用のゴムチューブではないが、細く長く事業を続けながら、お客様のご要望に応える製品を生み出していく。そのためにも社員が快適に仕事に取り組んでもらえるよう、今後もさらなる環境整備を進めたい。

 


 

お客様とともに製品開発

長年培ったゴム成形技術を駆使

工場全景

 東全ゴム工業の野田工場は、同じ断面の長尺製品を得意とする4基の押出成形機(60~150mm)の押出成形設備と、油圧プレス成型機(100t)8台のプレス成型設備を主力とし、コンパウンド精練設備としてオープンロールや自動裁断機、加工設備として回転式切断機や油圧式切断機などを保有する。

 これら設備を使い、製造する主な製品は、土木・建築用の建設資材、その他産業用の工業品資材、その他産業用のゴムコンパウンドなどがある。

 建設資材ではカーストッパー(物流倉庫・トラックターミナル用緩衝材)、ケーブルプロテクター(地上配線防護材)、H鋼カバーゴム(鋼材端部保護材)、防舷材(岸壁や桟橋など港湾構造物)、止水パッキン(下水道構造物)を生産している。

 工業品資材では軌道用間隙パッキン(鉄道施設)、配管用ガスケット、ゴーカート用バンバーゴム、特殊ホース・チューブなどを生産。ゴーカート用バンパーゴムは「大手アミューズメントパークにもご採用していただいている」(江原社長)と語る。

 さらに、ゴムコンパウンドでは、難燃性クロロプレンゴムコンパウンド(UL94―V0認定)を生産しており、小ロット対応が可能な点も特長の一つとなっている。
 同社が製造したゴム製品は、過酷な環境下で使用されることが多い。同社はゴム弾性が少しでも長く続くよう材料受入段階から何度も試験をくり返し、より良い製品を届けられるよう何度も厳しく試験・検査している。

 製品開発では『じっくりと、しっかり』をモットーに、お客様の声を聞きながらお客様と一緒に製品を作り上げることで100年の歴史を築き上げてきた。

 江原社長は「数あるゴム会社の中から東全ゴムを見つけ連絡してくれる。お客様の問い合わせの数だけたくさんの特別なご要望がある。当社はこうしたお客様のご要望に沿った形状・数量を短納期で、かつ適正価格でご提供できるよう、これからも挑戦していきたい」と前を向く。

 


 

100年の歩み 沿革

1921年(大正10年) 創業者日江井源太郎氏が東全ゴム工業所(東京府北豊島郡三河島町)を創業、自転車チューブを専門に製造を始める。
1930年(昭和5年) 創業10周年記念行事を挙行。
1944年(昭和19年) 第2次企業整備令にて滝野ゴム(当時)、神内ゴム(同)、中畔ゴム(同)と合併し、興国ゴム工業株式会社を創立。疎開工場を福島県二本松に設け、陸軍の協力工場として操業を開始。
1945年(昭和20年) 東京大空襲により興国ゴムの三河島工場が全焼。
1948年(昭和23年) 企業整備令解除後、二本松工場を譲受、福島興国ゴム株式会社を創立。
同年3月、東京都北区赤羽に東京工場を設置し、同時に社名を現在の東全ゴム工業株式会社に改称し、二工場で操業を開始。
1956年(昭和31年) 日本ゴム工業会に加盟。
1957年(昭和32年) 火災のため二本松工場を焼失、すぐに新工場を再開し、ゴム靴専門工場として生産を続行、その後別会社として独立させ、自転車タイヤ・チューブ及び工業用ゴム製品の生産は東京工場にまとめ、企業の合理化を図る。
1958年(昭和33年) 東京工場でJIS認定を取得。
1968年(昭和43年) 7月千葉県野田市に新工場(野田工場)が完成し、操業を開始。
1970年(昭和46年) コネクター実用新案登録・意匠登録。
1973年(昭和48年) 野田工場でJIS認定を取得。
1976年(昭和51年) 難燃性ゴム生地のUL規格認定を取得。
1978年(昭和53年) 東京工場の設備を全部移管し生産を続行。
1981年(昭和56年) 金型腐食低減法の特許取得。
2004年(平成16年) 踏切防護材の特許取得。
2016年(平成28年) 第7代目社長に江原伸一氏が就任。
2021年(令和3年) 創業100周年を迎える。

 


 

東全ゴム、社名の由来

 社名の由来について、創業者の日江井源太郎氏は「試運転日が大正10年10月10日という全部十のつく日であった。全部十(とう)ということから、東全ゴムにしようと決めた」と、自伝の「私の歩んだ道」で述べており、「創業後は月産3000本を目標に自転車ゴムチューブの生産を開始した」と語っている。

 ただ、事業が軌道に乗り始めた矢先、関東大震災(大正12年9月1日)が発生。大震災による工場焼失は免れたものの、得意先のほとんどを失ったというが、震災により国民の足である自転車が多数焼失したたため、自転車チューブは飛ぶように売れたという。

 一方、戦時中になると、1941年にゴム産業整備実施方針が発令(第一次整備令)され、1944年には第二次整備令が発令された。東全ゴムは第二次整備令に基づいて、滝野、神内、中畔と合併して興国ゴム株式会社を創立。疎開工場を福島県二本松に設け、陸軍の協力工場として操業を開始した。戦時中は旧日本軍からの依頼もあったようだ。

 なお、1968年に稼働を始めた時の野田工場は、「今の5倍ほどの土地があり、一番多いときは100名の従業員が在籍していたと聞いている」(江原社長)。

 


 

企業データ

◆東全ゴム工業株式会社◆創業1921年(大正10年)10月10日◆所在地東京都千代田区神田松永町17番地(本社)千葉県野田市木間ヶ瀬2462番地(野田工場)◆資本金1000万円◆社員数30名(2021年9月現在)◆役員:代表取締役江原伸一、常務取締役江原秀行、取締役荒川善嗣、監査役江原正子◆業務内容:ゴムを原料とする製品の製造・販売、不動産の賃貸及び管理

 


 

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ゴムタイムス2021年10月12日号6面

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