活躍するリケジョ007 住友ゴム工業㈱ 増井友美さん

2021年03月11日

ゴムタイムス社

活躍するリケジョ007 住友ゴム工業㈱

研究開発本部 分析センター主査 増井友美さん

 

「未来のタイヤの開発に携わり、持続可能な社会の実現に貢献していきたい」

◆現在担当されている仕事について教えてください。

 私が所属する分析センターでは、主要製品であるタイヤだけでなく、ゴルフ用品、制振ダンパー、医療用ゴム栓などのスポーツ・産業品の材料分析や開発支援、原材料の品質検査などを行っています。
 同センターは主に製品開発での課題の解決、新材料開発のための分析手法の開発、品質の管理を担っています。製品開発者と連携を取って材料分析を行いながら新規分析手法を開発する人もいれば、私のようにシーズ研究として新規分析技術開発を中心に行う人もいます。このように多様な働き方をしているのが同センターの特徴です。
 具体的には、私は国の大型研究施設であるSPring-8(大型放射光施設)やJ-PARC(大強度陽子加速器施設)を活用し、ゴムの内部構造とタイヤゴム性能の関係について研究を行っています。
 さらに最近では、これら施設から得られる高精度かつ大量のデータを用いたビッグデータ解析なども行っています。非常に高いスキルが求められますが、大学院博士課程での経験や前職(日本原子力研究開発機構)でのキャリアを活かしながら仕事を進めています。

◆材料分析手法の開発というのは。

 材料の内部を調べるには分析手法が必要となります。しかし、現在の技術をもってしてもゴムの内部を全て解明することはできません。そのため、分析で調べられなかった事象は、謎のまま材料開発を進めるしかないことも多々あります。
 そこで、リアルにゴム内部で何が起こっているのか明らかにするための計測技術を作ることが分析手法の開発となります。見えなかった物が見えるようになると、新たなアイデアが出たり、材料開発者と知見を共有し事実に基づいて次の材料開発につなげられたりするという面白さがあります。
 分析手法の開発により、想像していた結果とは異なる新たな発見につながることもあれば、長年の経験が実証されることで新材料開発の攻めどころになったりすることもあります。

 

◆現在の仕事のやりがいを教えてください。

 住友ゴムに席を置くとともに、東北大学の助教として活動しています。さらに、大学や研究所の先生方と多くの共同研究を進めています。ゴムの性能を向上させるための理論研究や結果の議論ができる機会が多くあり、非常にやりがいを感じています。さらに共同研究で得た基礎的な知見を材料や工程への提案という形で、製品の開発に繋げられた時には大きな喜びを感じています。
 このような活動が評価され、日本ゴム協会賞や科学技術分野の文部科学大臣表彰(科学技術賞)を受賞する事ができました。受賞した事で、様々な講演会に招待されることもあり、研究の幅が広がることを嬉しく思っています。

 

◆仕事をする上で、心がけていることを教えて下さい。

 仕事をする上で自分ひとりでは何もできないのでコミュニケーションを取ることを心掛けています。また、関係者の方に無理なお願いをする事も多いので、実施する理由や目的を理解してもらえるような分かりやすい説明と、お礼をしっかりと伝える事を大切にしています。

◆理系の道に進んだきっかけや、学生時代どのような学問をされていたのか、教えてください。

 小さいころから理系科目が得意だった事と、筋道を立てて考えていくと1つの解に辿り着くところに面白さを感じ、大学、大学院では物理学を専攻しました。自然現象の中でも特に興味があった生物の細胞膜の構造や機能について研究を重ねていました。

 

◆現在のお仕事を選んだ理由を教えてください。

 大学院時代は人工細胞膜の研究を専門とし、細胞膜の構造や機能を解明するためのX線や中性子線を使った実験(分析)に没頭していました。その経験を活かす形で、博士課程(後期)修了後に日本原子力研究開発機構の研究員としての道に進みました。研究員時代に様々な研究者と交流をさせて頂く中で、ゴム材料は生物と非常に近い面白さがあることを知りました。そこで、X線や中性子線を用いた研究を精力的に進めている住友ゴムに魅力を感じ、私のキャリアを活かしたいと考え、現在に至っています。

◆入社されてからの印象や現在の職場環境について教えて下さい。

 入社前のイメージでは生物よりもゴムは単純だと思っていました。ところが、実際には学術的にも未解明な部分が多く存在し、人の経験や勘に頼り作られていることが多い事に驚きと楽しさを感じたことを今でも良く覚えています。住友ゴムで働くようになってから約10年になりますが、ゴムは奥が深く、今でも面白くて興味がつきない研究対象です。
 職場環境も大変満足しています。最初は、大学や前職とは研究の進め方が違っており戸惑うこともありましたが、逆に博士課程や研究所職員としての経験を周囲に広げていくことで将来の研究領域を拡大していけるという楽しさもありました。また、研究の自由度も高く、様々な事にチャレンジすることができるやりがいのある職場です。これまでチャレンジするにあたり止められた経験はなく、むしろどんどんやりなさいと言われています。

◆今後、どのような取り組みをしていきたいですか?

 当社では将来のタイヤを見据えた技術開発および周辺サービス展開のコンセプトを「スマートタイヤコンセプト」と名づけ推進しています。例えば、ドライ路面からウェット路面に変わった際にタイヤトレッドゴムの性能が変わりウェットグリップ性能を向上させるといったアクティブトレッド技術、使用してもタイヤの性能が変化しない性能持続技術の開発を目指しています。私はこのような未来のタイヤの開発に携わり、持続可能な社会の実現に貢献していきたいと考えています。
 また、分析センターには、大学で学位(博士)を取得した様々な専門性を有するメンバーが多く在籍しています。私は、これらメンバーの知恵と研究推進力を結集させ、基礎研究から製品応用までリードしていきたいと思っています。

◆お休みの日に何をされているのか、教えてください。

 週末は趣味のパン作りを楽しんでいます。材料配合比を変えた時のパンの味や食感の違いや焼き上がり、さらには製法を変えた時の違いはゴムと全く同じで、パン作りをしながらゴムに想いを馳せています。「パンならこれで美味しくなるから、ゴムでも上手くいくかもしれない」などと、ヒントにしている所もあります。
 また、身体を動かすことも好きで、高校・大学時代はテニスに打ち込んでいました。最近は家族と楽しめるスポーツということで、月に2回程水泳をしています。
 外部の実験施設での研究で休日出勤になる時には、主人が娘を見てくれるので、家族の協力にも支えられています。

 

会社名 住友ゴム工業㈱
所在地 〒651-0072 兵庫県神戸市中央区脇浜町3-6-9
TEL 078-265-3000
資本金 42,658百万円
従業員数 7,325名(連結ベース39,233名)
※2019年末現在

 

*この記事はゴム・プラスチックの技術専門季刊誌「ポリマーTECH」に掲載されました。

本文:2965文字

活躍するリケジョ007 住友ゴム工業㈱ 増井友美さん

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