企業特集 十川ゴム 次代を担う人材の育成を進める

2020年10月26日

ゴムタイムス社

原価低減努力さらに推進
デジタル化の取り組み加速へ

 

十川利男社長

十川利男社長

 「コロナ禍で一番の悩みはお客様と積極的な商談や打ち合わせが思うようにできないこと」と語る十川ゴムの十川利男社長。足元の状況や新型コロナウイルス対策などについて十川社長に聞いた。

 ◆前期を振り返って。
 前期は売上高が140億200万円で前期比3・0%減、経常利益は2億3500万円で同23・3%減の減収減益だった。海外では昨年来からの米中貿易摩擦の激化や英国のEU離脱、国内では10月の消費増税もあり、国内外の経済環境が厳しかった。年明けに半導体産業に復調が見られたものの、新型コロナウイルスの感染拡大がそれを打ち消した形だ。

 ◆コロナウイルスが業績に与えた影響は。
 3月末あたりから当社も影響を徐々に受け始めた。緊急事態宣言が発出された4月はそれほどの落ち込みは感じなかったが、5月は人やモノが動かなくなり、リーマンショックの時にも経験しなかった程厳しかった。6月に自粛が緩和されて社会も動き出し、6月後半あたりからモノが若干動き始めたものの、20年4~6月期の売上高は前年同期比15%程度減少した。

 ◆分野別の状況は。
 分野別では、コロナウイルスの影響で自動車業界は大幅減産が行われ、当社の自動車産業用ゴム部品は大きな影響を受けている。また、前期調子が良かった医療機器産業分野は、需要が伸びると見ていたが、感染を恐れて病院に行かなくなる人が増え、医療用ゴム部品も落ち込んでいる。さらに、ゴムシートなど汎用品の需要も冷え込んでいる。

 ◆今後の見通しを。
 コロナウイルスの収束時期が不透明なことから、我慢の状況が続きそうだ。ただ、悲観的になりすぎても良くないと思っている。一部の自動車メーカーがわずかでも動く情報もあり、願望としては9月以降の持ち直しに期待している。

 ◆コロナ対策について。
 感染防止対策として、手洗いや消毒、検温、マスク装着とともに、3密回避に向けた取り組みを継続している。また、不要不急の出張や会議を見直したり、東京支社は電車内の感染を防ぐため、時差出勤を行っている。
 在宅勤務については、一時的に事務系の従業員を中心に実施し、私や副社長らも在宅勤務を行った。政府が推奨する在宅勤務率8割はクリアできなかったが、感染状況の厳しい地域においては従業員3割程度が在宅勤務を行った。
 一方、工場は食堂が最も密になりやすい場所なので、昼休みの時間をずらし、分散して食事を摂るようにしたほか、公共交通機関利用の従業員には一時的に自動車通勤を推奨した。

 ◆営業戦略について。
 お客様対応は対面が基本になるので、営業スタッフにはアルコール消毒液を携帯させている。会社としてコロナウイルス対策を取っている姿勢を示したなかでの営業活動を行っている。
 ただ、WEBでの打ち合わせを希望するお客様も多い。こうしたご要望に応じ、当社は様々なWEBコミュニケーションツールを活用し、お客様との打ち合わせなどを行っている。さらに社内でもオンラインでのコミュニケーションを広げるため、これを試験的に導入する取り組みも始めた。

 ◆課題への対応策は。
 移動や面会が制限される状況にあるが、社内外でしっかりとコミュニケーションが取れるようデジタル化を含めた取り組みを加速させる。
 工場では引き続き原価低減努力を行う。設備投資は今ブレーキを踏んでいる状態だが、中長期的には少子高齢化の問題は先送りできないので、工場の省人化・自動化設備の導入は計画的に実行していく。さらに、人材教育の機会を増やし、次代を担う人材の育成も進めたいと考えている。

 


 

ホース
製品設計提案進める

エコジョース 

エコジョースドレン排水ガイドシステム施工イメージ

 20年度(4~6月)のゴムホースの需要動向は、用途別では自動車用が前年同期比20%減、高圧用が建機関係の減少により同20%弱減、その他は同10%減となり、落ち込んだ。一方、樹脂ホースは、スプレー関係が同10%減、家電関係は横ばい、水栓関係は同5%増となった。

 6月以降のホース需要を見ると、自動車生産の回復に伴い、自動車用が徐々に回復に向かっており、上期全体では10%強の減少になる見通しだ。

 ホース事業を取り巻く環境は、新型コロナウイルス感染症の収束が見えておらず、非常に不安定な状況にある。ただ、こうした不安定な時期だからこそ視野を広く持ち、これまで他社が開発してこなかった製品群にも目を向け、「新たな工夫を加えることで製品を開発することも重要になる」(同社)と考えている。

 製品開発では、IoT時代でデジタルデータを駆使することで、ホースを使う様々な顧客に対し、新たな機能や付加価値を有する製品設計開発の提案を進めている。

 その一環として、ホース事業では「食」をテーマにした製品開発に注力している。現在は漁業・農業関係用のホース製品の開発に取り組むとともに、食品工場向け製品の充実も図る。
 これまで難しいとされていた「特殊ケミカル系ホース」の開発にも取り組んでいる。

 顧客の要望に応じて、新市場に向けた製品展開も積極的に進めている。

 例えば、最近上市した製品では、潜熱回収型ガス給湯器(エコジョーズ)専用のドレン排水ガイドシステム(給湯器から側溝までを結ぶ専用チューブ・ドレンガイド・ホルダーで構成される)として、共用廊下で安全性および基本的な性能要求事項を満たす製品設計を行い開発した。

 ホース事業の下期見通しは、半導体関係は前年を下回ると予測。一方、自動車関係は回復基調で推移するほか、ガス関係も増加すると見ている。20年度通期は前期並み程度まで戻したいと考えている。

 


 

ゴムシート
品質管理・検査体制拡充へ

 シート関係では高導電性、放熱性、難燃性等の機能を求められるものづくりに注力している。汎用品の在庫対応というよりも、お客様のテーマに基づき、機能をお客様が要求するレベルで対応するケースが増えている。

 その一例として、お客様が従来塗料を用いて対応されていたものを、ゴムとしての有効機能を付加するという点で、全く製造したことのない素材による長尺シートの開発の依頼というようなケースもある。「ハードルは高いが完成の喜びを感じたいと、技術や開発スタッフも全力で取り組んでおり、非常に楽しみなテーマとなっている」とし、「今後も従業員が前向きに取り組めるテーマを積極的に手掛けたい」(同社)と考えている。

 製造面では、シート関係で大きな設備更新は実施していないが、品質管理や検査体制の拡充に向けて、連続加硫設備の寸法自動測定設備や製品自動切断設備、製品自動梱包設備、仕上工程の連続検査自動設備、連続耐電試験設備など、順次新規設備を導入している。

 コロナ禍での工場の稼働や営業活動は、工場の従業員は車通勤が多く、通常の稼働を保つことができている。勤務体制は各地区における従業員の安全性を考え、テレワーク、時差通勤などで対応。非常事態宣言時には東京ではテレワークと時差通勤を合わせて100%が実施対応し、その他の地区は発生状況により異なるが50%程度の実施対応を行った。

 営業面でテレワークに対応すべく、IT機材を充実するとともに、ソフトやアプリも活用してWEBでの会議や打合せを取り入れるなど、スムーズな社内外の対応を情報システム部が主体となり速やかに推進した。

 教育面では、こうした時期だからこそできる教育の充実を図っている。例えば、営業部門では製品プレゼン教育の様子を動画で社内イントラネットに掲載し、他拠点の教育を見て互いに学べるようにしている。また、WEB活用により遠隔地の複数拠点が同時に同じ教育を受ける方策も取っている。

 シート事業の20年度見通しは、上期は前年同期比でマイナスとなる予測をしているが、下期からはシート需要も上向き傾向で推移するとみており、通期では前期並みまで戻したいと考えている。

 


 

十川ゴムの20年3月期
自動車産業の不振響く

十川ゴム3月期決算 20年3月期は、売上高が140億200万円で前期比3・0%減、経常利益は2億3500万円で同23・3%減、当期純利益は1億6000万円で同9・6%減となった。

 セグメント別では、ホース類のゴムホースは船舶・車両産業用、一般機械産業用などが増加したが、自動車産業用の燃料ホース、土木・建設機械産業用などが大幅に減少し、減収となった。ホース類の売上高は60億900万円で同4・3%減。

 ゴム工業用品類は、型物製品は医療機器用が大幅に増加したが、自動車産業用、ガス産業用、住宅設備産業用が減少し減収した。押出成形品は船舶・車両用が大幅に増加したが、食品機械産業用のシリコーンチューブ、一般機械産業用のチューブ類、自動車産業用等の減少で横ばいとなった。

 ゴムシートは、住宅設備産業用の耐電シートが増加したが、その他産業用のシート全般が振るわず減収。この結果、ゴム工業用品類の売上高は68億3800万円で同2・8%減。

 


 

東京パラリンピック出場目指す
赤井大樹選手

赤井大樹選手

赤井大樹選手

 入社4年目の赤井大樹さんは、奈良工場製造課に勤務しながら、陸上パラ競技で輝かしい実績を残すアスリートだ。赤井さんは、今年9月に開かれた日本パラ陸上競技選手権大会でT201500mで3分56秒24(日本新記録、アジアタイ記録)を出して1位となり、20年10月現在T20世界ランキング3位の位置にある。

 赤井さんが陸上を始めたのは市町村対抗こども駅伝出場を目指した小学3年生から。中学3年生にはジュニアオリンピックに出場し、全国都道府県対抗駅伝に出場。智辯学園高等学校へ進学後は、奈良県の駅伝メンバーに選ばれ、県大会で優勝した。

 赤井さんは「来年4月時点で世界ランキング6位以内で東京パラリンピック出場が決まります。出場できることを信じ、メダル獲得を目指しトレーニングに励んでいます。将来は目標のマラソン挑戦や、全国都道府県対抗駅伝で奈良県代表となり、チームに貢献できるような選手になりたいです」と抱負を語る。

 


 

「三方よし」を経営理念に
自分よし、相手よし、他人よし

 同社は創業時より、自己を活かし、相手を良くし、多くの第三者に益をもたらす「三方よし」の精神を経営理念とした事業活動を展開してきた。

 同社では、この「三方よし」という経営理念は、過去も、現在も、そして未来において貫して揺らぐことのない不変のものだとしている。

 「三方よし」の核となるのは『人』である。社内、社外を問わず、きめ細やかな心配りによる心通うコミュニケーションを行い、不変の想いである「人を大切に―」を実践している。

 また、経営環境が激しく変化する状況において、顧客に選ばれる存在価値のある企業であることが、永続できる大きな条件であると考えている。

 同社は今後も、顧客の需要をいち早く捉え、情報を共有化することで、スピーディーに対応する体制への変革を図っていく。

 


 

《沿革》

1925(大正14年5月)
大阪市浪速区大国町に十川ゴム製造所を創立

1929(昭和4年7月)
合名会社十川ゴム製造所を設立、大阪市西区
に営業所を開設

1943(昭和18年7月)
徳島工場新設(徳島県阿波郡阿波町)

1949(昭和24年4月)
東京支店を開設(従来出張所)

1956(昭和31年4月)
十川ゴム株式会社設立

1959(昭和34年4月)
合名会社解散し株式会社十川ゴム製造所を設立

1961(昭和36年9月)
堺工場新設(大阪府堺市上之)

1966(昭和41年4月)
日本工業ゴム株式会社設立

1967(昭和42年4月)
奈良工場新設(奈良県五條市三在町)

1970(昭和45年5月)
本社を大阪市西区立売堀1丁目に移転

1987(昭和62年3月)
北陸営業所を開設

1990(平成2年3月)
東京支社を開設(従来支店)、福岡支店を開設(従来出張所)、札幌営業所を開設(従来出張所)

1995(平成7年4月)
日本工業ゴム株式会社、十川ゴム株式会社と合併し、新商号を株式会社十川ゴムとして発足
本社を大阪市西区南堀江4丁目に移転

2005(平成17年4月)
中国浙江省に紹興十川橡有限公司を設立

2012(平成24年11月)
ISO14001全社統合認証取得

2014(平成26年10月)
四国(徳島)、北九州(小倉)に出張所を開設

2025(令和7年5月)
創業100周年を迎える

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