アフターコロナインタビュー ~コロナ禍における技術・開発者の働き方~ 加藤事務所 加藤進一社長

2020年10月29日

ゴムタイムス社

アフターコロナインタビュー ~コロナ禍における技術・開発者の働き方~
加藤事務所 加藤進一社長

 ITを駆使する能力がカギに

 ゴム原材料・ゴム製品・ゴム機械の販売とコンサルタントを行う㈱加藤事務所。「コロナ禍で海外への仕事の取り組み方が変わる」と語る加藤進一代表取締役社長に、アフターコロナを見据えた技術者の働き方などを聞いた。

─新型コロナによる研究・開発現場への影響について。

 物理的な面では、出社できないことや実際に試験ができないことのマイナス面は大きいです。とくに、4~6月にかけ各社とも研究現場に対しても出社せずにリモートワークに変わりました。周りを見ると、週のうち1~2日は出社し、集中して実験を行ったところが多いようです。このことは上場企業のケースですが、中小企業では、東京以外の工場や研究所は、現在進めている開発を止めることはできないため、自動車で出勤をする場合は出社しても良いというケースもありました。
 また、今回のコロナ禍で技術者同士のコミュニケーションが取りにくくなりました。今まではワイワイガヤガヤと議論する中からアイデアが生まれるケースが多くありました。コロナ禍でこのような議論ができなくなり、技術者同士が気軽に話し合うことができなくなってしまいました。

─アフターコロナで変わるものと変わらないものは。

 開発の現場で、開発テーマや研究の方向性は大きく変わらないでしょう。ただ、海外出張ができないことで仕事の取り組み方が変わっていくのではないでしょうか。海外出張ができないということは、2つのデメリットがあります。
 ひとつは、海外拠点に渡航できないこと。現在は、各社ほとんどの駐在員を引き上げましたが、製造現場の品質管理を担当する人は戻した企業が多いです。日本人が対応しないと製品の品質管理の問題が生じてしまうためです。また今までは上場企業の場合、海外の材料メーカーに対して品質監査をするため年に1回渡航していました。しかし、コロナ禍で全部ストップしました。現在は、海外の材料メーカー側で自己採点をしてもらい、レポートを提出し書類審査を行い対応しています。今後、このやり方で問題が生じなければ、3年に1回の割合で品質検査をすればいいという方向に変わってくるかもしれません。
 もうひとつのデメリットは、以前なら海外の学会に参加していましたが、現地で情報交換が出来なくなりました。海外の講演を聴くことはWEBの講演会に切り替わり、国内で講演を聴くことが可能になりました。ただ、海外の学会で現地のキーパーソンに会い、情報交換することが非常に重要でしたので、これが出来なくなったことは影響が大きいです。

─今回の新型コロナで浮き彫りになった問題点は。

 海外出張する際は、品質監査で行く場合や海外の学会で行く場合のほか、海外から機械を調達する場合に渡航します。今までは機械の出荷前検査を海外で行い、機械を日本で搬入した後、海外から技術者を日本に呼び、再度調整をすることが必要でした。新型コロナでこの一連の流れが出来なくなりました。

─技術者として今後必要になってくることは。

 ITを活用することがますます必要になってきます。例えば、さきほど前述しましたが、海外で機械の出荷前検査などができなくなったため、WEBを使い出荷前検査を行うようになりました。また、海外からの技術者を呼んで再度調整させることも、LINEやZoomなどを活用するようになりました。今後はITを活用することで、7割程度の業務は渡航しなくても出来るようになるのではないでしょうか

─今後、研究や開発分野に変化はありますか。

 研究・開発は大きく変化しませんが、ゴム製品に求められる要求物性が変わってくる可能性があります。例えば、医療関係のゴム部品で遠隔操作ができる部品があり、住友理工と豊田合成が取り組んでいる製品などが挙げられます。また、ブリヂストンはタイヤを購入して終わりではなく、購入後の関わり方に対してITを活用していくビジネスを展開していますね。

─イノベーションや技術の在り方に変化はありますか。

 新型コロナで中国材料に対するアレルギーが広がりました。つまり、今まで中国材料オンリーでゴム製品を製造していた企業が、今回の新型コロナを機にリスク管理として代替品をアジアやヨーロッパで探す動きがでてきました。今後は、100%中国材料だったが、70%は中国から調達し、残り30%は違う国から調達するという「脱中国」の動きが進むのではないでしょうか。その時に、技術者は違う国から調達した材料の評価をすることが増えてきます。また、今後はゴムの技術者もZoomなどを使い面談をすることが当たり前になってきます。そのため、管理職の立場の人は、リモートワークの管理、セキュリティ面での対応、脱中国のリスク管理などに対応することがより求められてきます。

─社内外に発信したいメッセージは。

 リモートワーク含めITを駆使することに対し、ある程度の基礎知識を持っていることが当たり前になってきます。また、海外でオンラインのコミュニケーションを行う場合、英語の話す、聞く能力がより必要になってきます。今まで対面だと顔の表情など判断できましたが、WEB上は正確な英語を伝えないといけません。ゴムやタイヤ技術の用語を使った英語の会話力が非常に求められてきます。
 当社ではゴム商社の強みを生かし、海外出張のオンライン化の有料サービスを開始しました。そこでは、ユーザーの顧客のアポイントを取ることから始まり、通訳をするサービスです。コロナ禍で海外出張ができない人に活用していただきたいですね。

*この記事はゴム・プラスチックの技術専門季刊誌「ポリマーTECH」に掲載されました。

 

本文:2359文字

アフターコロナインタビュー ~コロナ禍における技術・開発者の働き方~ 加藤事務所 加藤進一社長

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