技術・開発者インタビュー 朝日ラバー 石黒英治技術グループ長、市川明工場長

2020年10月28日

ゴムタイムス社

技術・開発者インタビュー 朝日ラバー
生産本部白河工場 石黒英治技術グループ長
生産本部白河工場 市川明工場長

右は市川工場長、左が石黒グループ長

 工業用ゴム製品の製造・販売する朝日ラバー(渡邉陽一郎社長)。販売開始から18年で出荷数量18億個を突破したASA COLOR LED(以下、ACLED)について、白河工場の概要をはじめACLEDの歴史、特長などを市川明生産本部白河工場長(以下、市川)と石黒英治生産本部白河工場技術グループ長(以下、石黒)に聞いた。

 ASA COLORの色へのこだわり

──白河工場の概要を教えてください。

 市川 弊社は約30年前に福島県に工場進出しました。白河工場ができる前は私も石黒も泉崎村にある福島工場に勤務し、光関係の仕事をしていました。福島工場が手狭になってきたことやより良い環境で製造したいと考えたことから、2006年に新たに白河工場を建設し、操業を開始しました。白河工場の製造工程はクリーンルームとなっており、半導体製品の製造を視野に入れて設計しました。白河工場は操業してから約15年が経ちます。生産品目としては光学事業に関わる製品を中心に製造し、主力製品はACLEDや、耐熱性と耐紫外線性に優れるASA COLOR LENSなどです。
 工場の敷地面積は約1万坪であります。光学事業に関わる従業員は約100人が所属しており、設計や開発、製造などに従事しております。

──「ASA COLOR LED(以下、ACLED)」など歴史について教えてください。

 市川 弊社は創立から50年以上の歴史がありますが弊社の特徴的なコア技術として、光や色調に関わる製品があり、約45年の実績を持っております。
 現在のようにLEDが一般的になる以前は、自動車内装照明の光源には電球が使用されていました。弊社は、電球へ直接に被せるキャップ形状のカラーフィルター「ASACOLOR LAMP CAP(以下、ACLAMP CAP)」を供給しておりました。このACLAMP CAPは、5000色の色調バリエーションを持ち、お客様のデザインに沿った照明色を得ることができる製品として、多くの車種に採用をいただきました。しかし、世の中では省エネに対する意識の変化や、信頼性を重視する動きにより、自動車の内装照明が電球からLEDへ置き換えが加速されるとの予測がされるようになりました。また、LED業界では1993年に青色LEDの量産化、1996年に白色LEDの量産化がスタートし、LEDを搭載した自動車の内装照明のデザインが大きく変化したことを鮮明に記憶しております。我々はLEDへの置き換えに強い危機感を持ちました。電球が無くなるということは、弊社が納めているACLAMP CAPの需要が無くなることを意味します。ただ、当時のLEDでは、黄緑色LEDや赤色LEDなど10色もないくらいのバリエーションであり、欲しい色を出せないのがLEDの課題でありました。また、色調のばらつきも大きな課題となっていました。弊社はこれらのLEDの課題に着目し、新製品の開発を推進しました。青色LEDと、様々な蛍光体を配合したキャップを組み合わせることで、1万色のカラーバリエーションと、色調ばらつきを抑えることにより、既存LEDが抱える課題を解決することができました。2000年2月に開発が完了し、新製品としてACLEDを発表しました。量産化にこぎつけたのは2002年です。

 石黒 お客様のご要求に沿った製品や技術を提供することにより現在も継続的な採用実績をいただいております。また、弊社の品質保証体制も大きく変化しました。LEDという電子部品を保証するための体制づくりも製品の開発と同時並行で推進してきました。

白河工場

白河工場

──ASA COLOR LEDの特徴・用途と需要について。

 市川 ACLEDは自動車の内装照明を中心にご採用をいただいております。現在、製造している9割以上が自動車向けの用途となります。ACLEDは青色LEDに蛍光体を配合したキャップを接着し、さまざまな色調を得ることができること特徴とするLEDです。例えば、インスツルメンツパネルにあるメーターやスイッチなど文字が光る部分にはLEDが裏側に配置されています。それらの照明は設計された色調であり、規格値に沿った色調(光度や色度座標)のLEDの光源が要求されます。1万色の色調バリエーションを駆使して、弊社はお客様が必要な色調のLEDを提供しております。

 石黒 また、特殊照明の分野にも採用をいただいております。照明デザイナー様より様々なご要求をいただいております。例えば、「レンガ造りの建物で夜も昼と同じようにレンガの色で照明したい」、「高級国産和牛の販売店のショーケースでよりおいしく見せるためにはどういう光がいいのか」「寺院の木目をきれいに見せたい」という相談を受け、お客様の要望に合わせたカスタムLEDを提供しています。

──ASA COLOR LEDの今後の開発は。

 石黒 更なる技術革新を進めたいと考えております。車載内装照明の質感を向上させるために、色調のばらつきを小さくしたいというお客様のご要望は絶えることがありません。弊社では、製造工程の精度を上げるための取り組みを日々進めております。また、大学との共同研究により、新たな機能を付加する光の製品化を進めております。弊社はLEDに限らず、照明事業として広くとらえ、弊社のコア技術を活かしていきたいと考えています。

──製品開発をするうえで、心がけていることは何ですか。

 石黒 他社が追従できない当社のコア技術を活かすことを意識しています。なかでも、色調ばらつきの低減には、こだわりを持って取り組んでいます。開発当初の製品と比較すると、現行製品の色調ばらつきは16分の1程度になりました。

──技術者や開発者の育成で工夫している点は。

 石黒 技術者に必要なスキルをリストアップし、そこに目標を設定し、技術者がそれに対して今自分はどこにいるのかというのがわかる表を作っています。自分ができることは何か、また足らないところや必要なところは何かをしっかり認識できます。技術者個々のスキルを上げることが組織力の強化につながると考えています。

 市川 人材育成については、モチベーションを保つことが重要になっていきます。そのためには成功体験を積ませることが必要と考えます。あえて口出しせずに、仕事を若い技術者に任せています。確かに失敗すること、寄り道することもありますが、それもいい経験になり、また自分の仕事がお客様に喜ばれたなど一つ一つの成功体験が仕事へのモチベーションにつながっています。

──アフターコロナで技術・開発者の環境の変化について教えてください。

 石黒 当初は、コロナ禍によりお客様への訪問が規制され、コミュニケーションが難しくなったことが開発の壁になっていました。しかし、現在は環境が整いお客様とリモートで打ち合わせができるようになりました。特に、不便は感じておりません。

 市川 対面でお客様とコミュニケーションがとれないことは、マイナスイメージでありました。しかし、「出張の移動時間がないため、むしろ進捗が速くなった」という声が技術者より出てきています。リモートを活用することで、仕事の効率化に繋がっているというプラスの面も見いだせました。

──コロナ禍で工場が取り組んでいる対策を教えてください。

 市川 工場に入る前の検温、手洗い、消毒、換気、ソーシャルディスタンス、マスク着用、出張の制限、在宅ワークを行っています。また従業員に対してウイルスを周囲に感染さないための方法を朝礼で伝えたりや張り紙などもしています。最も難しいのはソーシャルディスタンスのため従業員同士のコミュニケーションが大きく減ってしまっていることです。

──技術者や研究者の働く環境について。

 市川 今開発するうえでの心がけですが、リモートで仕事ができるというのはお互いに信頼関係がないとできないことです。今回の新型コロナ禍を機に、お客様との信頼関係を築くことがより重要になってくると改めて感じました。

*この記事はゴム・プラスチックの技術専門季刊誌「ポリマーTECH」に掲載されました。

 


 

生産本部白河工場 技術グループ長 石黒英治氏

生産本部白河工場長 市川 明氏

 


 

会社名 ㈱朝日ラバー
代表者名 代表取締役社長 渡邉陽一郎
所在地 〒330-0801
埼玉県さいたま市大宮区土手町二丁目7番2
資本金 5億1687万円(2020年3月31日現在)
社員数 318名(2020年3月31日時点)

 

 

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