【新年インタビュー】TOYO TIRE 清水隆史社長

2020年01月06日

ゴムタイムス社

■ 新年インタビュー

「新しい道づくりの年」で更なる成長へ

TOYO TIRE 清水隆史社長


 19年は「第2の創業の年」と位置づけ、体制を強化しモビリティ分野をビジネスの中核に事業を進めてきたTOYO TIRE。年末の記者会見で清水隆史社長は、20年のテーマとして「新しい道づくりの年」を掲げ、新しい成長戦略をより確実に実現していく方針を示した。

■19年を振り返って。
 1月1日付で「TOYO TIRE」へ社名を変更した。役員はじめ従業員がモビリティに従事する喜び、責任ある覚悟を忘れず、社会に必要とされる存在感のある企業を目指していく。
 また、19年は「第2の創業の年」と位置づけ、事業を推し進めてきた。この数年間、基盤の立て直しにエネルギーを投入していたことにより、健全なカバナンスのもとで、各組織が一つの方向に向かって有機的に機能しあう事業経営の形がようやく整った。
 さらに、生産、販売、技術、コーポレートに携わる従業員が意識を揃え、次なる成長戦略を描いたこと、その実行に向けて様々なワーキングを進めるフェーズに入れたことは大きな成果の1つだ。
 また、モビリティ事業を中核に添えた第2の創業の年として、本格的に一歩を踏み出すことができた一年だった。差別化された得意分野が重要施策の柱となると考えており、その強みを磨くことでタイヤ業界では存在感を発揮することができた。とくに北米事業での取り組みが進み、成長の源泉となってきた。100年に1度の変革期に遭遇しているが、当社は独自の強みを更に強く伸ばすとともに、強みに隠れていた弱みをこの機会に克服していくことが、次の成長に向けた鍵になる。生き残りに執着するのではなく、勝ち残る挑戦をしていくことが、成長戦略の考え方だ。

■生産・販売・技術の動向について。
 生産については、既存工場の増強として、米国工場は第5期能力増強で19年4月から生産を開始し、マレーシア工場も10月から新生産棟で稼働を開始した。桑名工場はトラック・バス用タイヤの生産能力増強に着手している。
 トラック・バス用タイヤは当社が得意とするカテゴリーだ。独自のコンパウンド設計とその加工技術によって、高い耐摩耗性を維持しながら転がり抵抗を低減させ、耐久性に優れた商品は再利用(リトレッド)に強い構造を有している。今後、トラック・バス用タイヤは米国や国内に積極投入を行っていくため、桑名工場で生産増強に着手していく。そのほか、新たに欧州工場を作設立し、グローバルでのタイヤ供給の新しい世界地図を描いていく方針だ。
 大口径ワイド・トラック用タイヤの販売伸長は、2018年度北米タイヤ企業ラインキングの順位を1つ上げ、6位になった。また、ピックアップトラック/SUV/CUV用タイヤグローバル販売本数の販売構成比率は中計目標の40%に対し41%に達した。
 販売では、トラック・バス用タイヤ事業を強化していくため、国内外で分けていた技術サービス部門をカテゴリーごとに再編し生産財の専門部隊を設けた。今後、より特化した知見やバックグラウンド、技術の優位性を伝え、お客様に寄り添った質の高い営業体制の強化を図っていく。
 また、エリア特性に特化した販売体制を築き、欧州、中東、アフリカ地域を所管する「欧阿中東営業本部」と、日本を含むアジア、オセアニアを所管する「アジア・オセアニア営業本部」に分けた。米国、欧州、日本はまずますの本数を販売してきたが、後発の中国やアジアはまだまだ販売が弱い地区だ。この地区は三菱商事との業務提携を活かし、エリア特性に特化したマーケティングと営業施策を集中的に展開し、着実に増販を実現していきたい。
 技術においては、自動車産業が大きな変革期を迎え、軽量化、低燃費化、静粛性やライフサイクルの向上が必要となる。そのため、今後の低燃費化やEV化の鍵を握る空力を高精度にシミュレーションする「モビリティ・エアロダイナミクス技術」、タイヤ空洞共鳴音を効果的イ低減する独自デバイスを開発した「トーヨーサイレントテクノロジー」、エアレスコンセプトタイヤ「ノアイア」などを挙げ、グローバルに進化させる技術開発体制を築いていく。ノアイアは、従来は軽自動車用を用意したが、新たな自動車サイズ展開のため、サイズ拡大した。
 国内工場は省人化や自動化などを進め再構築を図る。生産したタイヤは、例えば米国、日本、アジア市場向けに、あるいはメイドインジャパンを好む地区向けに販売していく。また、ドイツで19年秋に開設したR&Dセンターでは、マテリアルや最新の自動車情報、次世代のモビリティ関する情報の収集を進めていく。そのほか、原材料の調査や新素材の研究開発にも取り組んでいく。

■免震ゴム対策の状況について。
 免震ゴム交換・改修工事は、現時点(19年12月)で154棟中144棟で工事を着工している。ほぼ9割が着工できるようになった。工事完了予定は133棟となっている。

■SDGsの取組みは。
 「TOYO TIREのSDGs」を19年3月に策定し、14のゴール達成に向け取り組んでいる。今後、さらにSDGsが重要になると捉えている。各統括部門内にプロジェクトチームを立上げ、プロジェクトチームで取り組んでいく。

■2020年の抱負。
 新しいブランドステートメントとして、「まだ、走ったことのない道へ」を掲げ、新たな道を作っていくというフロンティア精神を持ち、新しく描いたTOYO TIREの成長した姿をしっかりと実現していく。
 2020年は創業75周年を迎える。現在、三菱商事との統括的な関係性をベースに協業を順調に進めており、これを活用しながら、新しい成長戦略をより確実なものしていく。
 2020年のテーマは、「新しい道づくりの年」として、役員、従業員一人ひとりが様々なチャレンジを大小関わらず一つひとつ結実させていきたい

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