JSR S-SBRタイの新プラントが完工

2013年09月30日

ゴムタイムス社

EPDMも韓国第2工場が稼働 タイヤ向け需要が回復

 JSRが合成ゴム事業の注力分野として位置付けている低燃費タイヤ向けのS―SBR(溶液重合スチレン・ブタジエンゴム)、EPDM(エチレン・プロピレンゴム)製品の海外新増設プラントが相次ぎ立ち上がった。
 低燃費タイヤ向けS―SBRについては、国内では2011年12 月に四日市工場の生産能力を2万5千トン/年増強して6万トン/年体制としており、欧州にもStyron(Europe),GmbHにて3万トン/年の引取り権契約に基づいた生産を行っており、グローバルでの生産能力は、現在、合計で9万トン体制。世界的な環境意識の高まりやタイヤの低燃費性能の格付け制度の普及を背景に、低燃費タイヤ向けへの需要は今後さらなる拡大が見込まれることから、同社ではタイのラヨン県に年産5万トン能力の新プラント(第1期)の建設を進めていたが、このほど完工し、試験運転を経て今秋から商業生産を開始することとなった。2015年稼働を検討しているタイの第2期5万トンを加えると、タイの新プラントは将来的に合計10万トン/年の生産能力を有することになる。
 一方、EPDMについても事業の供給体制強化を図るため、グループ企業である錦湖ポリケムにおいて既存工場の位置する韓国麗水国家産業団地内に新たに建設を進めていた年産6万トンのEPDM製造プラントの第2工場が完工、2013年9月から本格稼働を開始した。この第2工場竣工により同社のEPDM生産能力は合計15万トン/年となった。
 同社は第2工場への生産ライン増設(6万トン/年、2014年7月に着工し2015年9月生産開始予定)も決定しており、その稼働後はJSRグループ全体ではJSR鹿島工場の3万6千トン/年と合わせ24万6000トン/年のEPDMの生産能力を保有することになり、品質・コスト等の競争力の強化と事業規模の拡大を図ることで、世界におけるEPDMのリーディングカンパニーを目指すとしている。
 上期の合成ゴム販売は「輸出向けタイヤ生産の落ち込みから販売数量減となり、ブタジエン価格に連動してBR、SBRの輸出向けの市況が決まってくるので、円安にもかかわらず充分なスプレッドが確保できず採算が悪化した。特にブタジエン価格が㌧あたり一時800ドル、天然ゴムも安値となっていたが、この点がタイヤ需給の悪さを表していた。逆に言えば、ブタジエン価格が現在は1400ドル近くに戻ってきており、天然ゴムも一時に比べれば回復、中国の流通在庫も減ってきており、第1クオーターが底だった」とし、下期の需要見通しについては、 「ここへきてヨーロッパへのタイヤ向け需要が回復基調にあり、このまま戻ってくれることを期待している」としている。S―SBRについては、「現在は各社の新プラント立ち上がりにより一時的に需給が緩んでいるが、JSRのS―SBRはハイエンド向けのバッチ重合変性品を得意とするところで、各国におけるラべリング規制の導入、強化によりハイエンドの分野の需要は間違いなく伸びるので、その需要をしっかり取り込んでいく」、EPDMについては、「輸出向け市況が極端に下がりスプレッドの確保が出来ず、利益幅が圧縮されている。更に競合各社がキャパを上げてきて来るので、品質レベルの向上やコストダウンに対する創意工夫を推進してきたい」としている。
 ナフサ価格高騰については、同社はフォーミュラーリンクで対応しているが、「電気料金、LPG価格が上がってきており、ユーティリティの上昇については、自社で負担で出来る範囲を超えてくるのであればお客様にご負担をお願いせざるを得ないことになる。原材料動向に加えユーティリティ関連コストについては引き続き注視していく」としている。

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