やさしいタイヤ材料のはなし その②

2013年09月07日

ゴムタイムス社

空気入りタイヤから見るタイヤの進化 空気圧維持のメカニズム

 現在、この空気入りタイヤには乗用車用で200kPa(大気圧の約2倍)、トラック・バス用の大型タイヤでは800kPa前後の高圧の空気を充填しています。このためにタイヤは圧力容器ともいわれ、空気の充填作業などは慎重に行う必要があります。
 さて、この空気入りタイヤの機能を満足するために最も重要な働きをするのがチューブ、現在はチューブレスタイヤが主流となっているのでインナーライナーであり、適切な空気圧を維持するために重要な働きをしています。
 インナーライナーの材料にとって最も必要な特性は、空気が透過しにくいことです。ゴム風船は、数日経つと中のヘリウムが抜けて萎み、やがては空中に浮いていることができずに落ちてきますが、風船が萎むのはゴムに小さな孔(あな)が開いているためではありません。ゴム分子鎖間に気体分子より大きな空間があるためにこの空間を伝ってヘリウムが逃げていくのです。
 この空間の体積を高分子化学の世界では一般的に自由体積と呼びます。この自由体積という言葉をどこかでお聞きになった方も多いでしょう。
 さて、インナーライナーから空気が抜けるのもゴム風船からヘリウムが抜けるのと同じメカニズムで起こりますが、ゴム分子鎖間にある空間は、常に同じ位置に存在しているのではなく、ゴム分子鎖が動くのに伴って位置と形を変えます。丁度2本のロープを使って行う縄跳びのロープとロープとの間にできる空間を子供がすり抜けるように、運動しているゴム分子鎖の間にできた空間を見つけては気体分子がすり抜けていきます。
 従って空気を漏れにくくするためにはゴム分子鎖の動きを押さえればよいことになります。
 インナーライナーにブチルゴムを用いるのは、ブチルゴム分子鎖が動きにくく空気を透過しにくいためです。ブチルゴムの分子鎖は構成単位であるイソブチレン1分子あたりにメチル基が2個も結合しているため、この嵩高いメチル基が立体障害となり、ゴム分子鎖の動きを邪魔するためにブチルゴムの空気透過性は低いのです。

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