NEDO CNT銅複合材料を開発

2013年07月26日

ゴムタイムス社

 NEDOと技術研究組合単層CNT融合新材料研究開発機構(TASC)、産業技術総合研究所(産総研)は23日、従来から配線などに用いられている銅の100倍電流を流せる複合材料を開発したと発表した。
 同複合材料は単層CNTと銅を用いて開発。銅と同程度の電気伝導度と今までにない電流容量という優れた性質を併せもつ従来にない材料が実現した。また非常に軽く、高温でも高い電気伝導度を保つため、電子デバイスのさらなる小型化、軽量化、高性能化が期待され、将来電気自動車に用いられるモーターなどを飛躍的に小型化できる可能性もある。
 同研究の詳細は、英国の学術誌「Nature Communications」に23日(日本時間18時)に掲載された。なお、同成果はNEDOの「低炭素社会を実現する革新的カーボンナノチューブ複合材料開発プロジェクト」(平成22~26年度)において開発されたもの。
 カーボンナノチューブは炭素原子のみからなり、直径が0・4nmから50nm、長さがおよそ1~数10µmの1次元性のナノ材料。その構造はグラファイト層を丸めてつなぎ合わせたもので、層の数が1枚だけのものを単層カーボンナノチューブ、複数のものを多層カーボンナノチューブと呼ぶ。
 近年、電子デバイスの小型化が急速に進み、回路が微細化することで、回路に流れる電流密度が高くなっている。国際半導体技術ロードマップ(ITRS)によれば、2015年にはデバイス内の電流密度は銅と金の破断限界を超えるといわれている。一方で単層カーボンナノチューブ(単層CNT)などの炭素系材料は高い電流容量をもっているが、電気伝導度の点で配線材料としては不十分であり、新たな材料の開発が喫緊の課題であった。
 産総研とTASCは、NEDO委託事業である同プロジェクトを推進し、単層CNTの用途開発を行ってきた。産総研は単層CNTの合成法としてスーパーグロース法を開発しており、この方法で合成されたCNTは、他の単層CNTに比べ比表面積が大きいのが特徴。NEDO委託事業では、スーパーグロース法の開発を進めるとともに、この特徴を生かした導電性ゴムなどの複合材料を開発してきた。
 その結果、高い電流容量をもつ単層CNTと、高い電気伝導度をもち、配線材料として広く利用されている銅を用いて、双方の長所を生かした複合材料の開発を行うことに成功した。
 主な成果は、電気めっきを工夫することで、単層CNTの構造体内部まで銅を充填させ、銅と同程度の電気伝導度をもちながら、今までにない電流容量をもつ材料の開発と、温度変化による電気伝導度の低下が小さく、227 ℃での電気伝導度は銅の約2倍になること、銅や金より密度が小さいためデバイスの軽量化が図れることの3点。
 同研究では、銅イオンの有機系溶液と水溶液で、順に電気めっきすることにより複合材料を作製することが可能となった。また、開発した同材料の特性は、従来の配線材料の100倍の電流容量をもつことと分かった。
 同材料のCNTの割合は体積にして45%、密度は5・2g/cm3と小さく、装置に応用される際の軽量化も期待できる。同成果は配線やモーターなどの軽量化、小型化につながり、低炭素社会の実現へ向けた大きな成果と考えられる。
 今後は、同プロジェクトで開発された革新的なCNT銅複合材料を用いた配線形状部材の開発を進めるとともに、配線接合や線材形状の作製、コイル化などの技術開発を行う予定。また、量産製造プロセスの開発を行い、新たな用途開発を進めていく考えだ。
 さらに、10月31日から11月1日に産総研つくばセンターで行われる産総研オープンラボでの実物展示などを通じて、興味をもった企業と連携することで、実用化を目指していく。

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