JSR 合成ゴム増収も市況下落響く 「アートン」など戦略事業が拡大

2013年01月31日

ゴムタイムス社

  JSRの2013年3月期第3四半期連結決算は売上高が2753億4800万円、前年同期比6・2%増の増収ながら営業利益は249億3900万円、同14・2%減、経常利益304億8900万円、同4・8%減の減益決算となった。

 増収ながら営業減益となったのは、売上総利益の悪化、売上原価の上昇、販売・一般管理費の増加が響いた。営業利益の進捗率は年間360億円に対し70%を若干下切っており、経常利益、純利益は75%、75%以上でほぼ計画通りとなっている。経常利益は昨年12月末に円安に触れたため為替差益がプラス要因となったことに加え、韓国の持ち分法子会社の業績が改善されたことで営業利益に比べ同4・8%減の小幅のマイナスとなった。純利益は211億7200万円、同11・8%増と改善されているが、これは法人税実行税率の改善、海外子会社の税額負担の軽減が寄与した。

 エラストマー部門の売上高は1425億9100万円、前年同期比8・7%増、営業利益116億9000万円、同21・9%減。販売数量は前年同期に比べ3万トン弱増加。前年の震災の後の鹿島工場の操業停止による影響が2万トンあり今期はその分が回復、エコタイヤ用のS-SBRは1年前に比べ4割弱伸びており、1万トンを超える数量増となっている。 エラストマー製品の営業利益はエラストマー製品の市況下落局面による一時的なマージンの悪化、鹿島工場、四日市工場の定期修理、四日市工場のエコタイヤ用S-SBRの能増などの償却費増が収益を圧迫した。

 合成樹脂部門は売上高390億3200万円、前年同期比3・5%増、営業利益は23億800万円、同36・3%増と自動車生産の堅調推移にスライド、売上、利益ともにほぼ計画通りとなった。
 多角化部門は半導体部門がほぼフラット、FPD材料は減収となったが、精密・材料加工事業であるスマートフォンや多機能携帯端末向けの耐熱透明樹脂「アートン」の位相差フィルムが出荷を伸ばし、戦略事業は前年同期に比べ50億円以上増収となり、総売上高は937億2400万円、同3・6%増、営業利益は109億4000万円、同11・8%減となった。営業利益は半導体、FDPの不振に加え、アートン、IPOの設備の立ち上げ、JMエナジーのリチウムイオンキャパシタのパイロット、試験などの設備増強による固定費の増加が収益を圧迫した。
 通期の業績予想については見直し作業を行っておらず、売上高3780億円、営業利益360億円、経常利益405億円、当期純利益280億円を見込んでいるが、第3四半期までの計画進捗率が68~69%の営業利益については、「為替が足元90円、当社の為替感応度は多角化部門を中心に年間1円で5~6億円、四半期で1億から1・5億円ぐらいで、これら円安による為替差益が期待できるほか、エラストマーでは補修用タイヤの需要が10~12月期よりは戻ってくるとみている。半導体も1月~3月期は最先端の20ナノメーター世代が少しずつ立ち上がり、増えてくるとみており、計画とそんなに大きなかい離はない」(平野勇人執行役員)としている。

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