企業特集 三福工業 フッ素樹脂コンパウンド事業に注力 高機能素材を開発強化

2012年04月10日

ゴムタイムス社

 フッ素ゴムや汎用樹脂のコンパウンド・発泡体を製造販売する三福工業㈱(栃木県佐野市、三井福次郎社長)は同社製品を自動車分野から日用雑貨まで幅広くユーザーに展開している。
 同社のフッ素ゴムコンパウンドは自動車関連用途が7~8割程度を占めている。同社の強みの一つとして、フッ素ゴム専用に設計し改良を重ねた混練りラインを保有している点があり、専用化してから20年近くに渡る実績を持つ。混練りはフッ素ゴム用に設計されたニーダーまたはオープンロールで行っており、ユーザーの用途や要求に応じて開発段階から量産化に至るまで様々な提案ができるという。
 2011年度の実績は「昨年は震災の影響が一時的にあったものの、震災直後から福島工場(福島県田村市)を中心にあらゆる方面で対策を打った事が功を奏し、4月の半ばから回復基調となった。当社の復旧や対応が一番早かったとのお客様の声を頂くこともできた。またタイの大洪水では自動車関連で若干の影響を受けたものの、一部の分野においてタイで製造できなくなった分についての緊急対応需要が発生した。その結果売上では前年比18%増となったが、原材料費の上昇が響き営業利益では前年を下回る見込みだ」(同社)。
 最近では昨年の4月にフッ素樹脂コンパウンド専用工場(葛生工場)を開設。フッ素樹脂コンパウンドはフッ素樹脂(PTFE)をベースに用途に応じて各種充填材(フィラー)を添加したものであり、専門の成形メーカーなどに販売。成形メーカーで特殊な成形が行われ、化学工場や製鉄工場で耐熱・耐薬品性を必要とするパッキング材として使用される。
 「フッ素ゴムコンパウンドやフッ素ゴム発泡体で培った販売チャネルや技術との相乗効果を狙って工場を開設した。2012年は本格的に販売拡充していきたい」(同社)。
 また今後の計画として、2012年末に福島工場の敷地内に新しい汎用樹脂コンパウンドの工場を建設予定。2013年に稼働を計画している。
 「汎用樹脂分野でより競争力をつけるために工場建設を計画していた。当初は別の場所への立地計画もあったが、当社の福島工場周辺が震災で被災しており、被災地支援の一環として福島での雇用を増やすために福島工場敷地内への工場建設を決めた」(同社)。
 同工場の樹脂コンパウンドの生産能力は年間2500㌧を見込んでいる。
 同社は特に技術開発に注力しており、商品開発や用途開発も積極的に展開。展示会にも積極的に参加し、既存のユーザーも含め一般ユーザーにも認知度を高めている。
 同社が開発した製品の一つにフッ素ゴム発泡体がある。同素材は混練り技術と発泡技術を複合させ、混練りから発泡、抜き加工までを同社内にて一貫して生産している。特徴は独立気泡を有し、吸水性がほとんどなく、耐薬品性、耐油性、耐溶剤性が優れ、低アウトガス性の発泡体でシロキサンを含まないなどがある。低硬度のフッ素ゴムが存在しないなか、画期的な製品として注目されている。近年では液体を吸収することが可能な連続気泡を有した発泡体も開発した。
 直近では、シロキサンフリーのエラストマー系放熱材料を開発。同製品は樹脂のように成型ができ、ゴムのように柔らかく、また電気を通さずに熱を伝えやすく放熱しやすい特徴がある。同製品は発光ダイオード(LED)をはじめ、自動車や家電の部品の素材など幅広い分野での使用を想定している。またTPE関連の新材料、自動車の軽量化のための樹脂材料などの開発も進めている。
 グローバル展開として、同社はインドにおいては1998年より現地企業と合弁会社形態での進出をしている。近年は日系メーカーからの引き合いも増えてきているが、それらのニーズに対応する為にはパートナー企業の見直しが必要と判断し、設立13年を迎えたゴムコンパウンド製造の合弁会社との資本提携を昨年解消した。現在は新たな事業展開で日系メーカーへのアプローチを行う為、準備を行なっている。また昨年韓国のコンパウンダー、株式会社又新化学に出資。相乗効果を狙うと共に将来的には他国への共同進出なども視野に入れる。
 来期の業績予想では「自動車関連や内需関連を中心に需要の回復が見込まれるが、原材料や電力費などの値上げが見込まれており厳しい状況。昨年同様の水準は確保したい」(同社)。
 同社は今後も複合材の開発を強みとして、技術開発を強化していく。