ゴムタイムス70周年の画像

創刊70周年特別企画 各社の事業戦略 住友理工

2016年10月24日

ゴムタイムス社

創立100周年に売上高1兆円へ
「着実な成長」と「体質強化」 新中計「2020V」を策定

西村義明会長兼CEO

西村義明会長兼CEO

 住友理工は5月に2020年度までの新中期経営計画「2020年住友理工グループVision(2020V)」を発表した。同計画では、29年の創立100周年に売上高1兆円とする目標に向け、20年度までをその仕込みの時期と位置付け、Visionテーマを「着実な成長」と「体質強化」に設定。前中計「2015V」の残課題と外部環境変化を踏まえ、「環境技術強化」「モノづくり革新」「新規顧客開拓」の3点を経営戦略として掲げている。

■各事業部門の課題と対策

 前中計では、15年度の連結売上高4200億円、営業利益・IFRS事業利益340億円、営業利益率8%、ROA8%、ROE10%とする数値目標を設定した。しかし、売上高は目標に達したものの、利益面はいずれも未達となった。
 この結果を受けて、同社では各事業部門の課題を明確化し、その解決策を示した。
 自動車用品部門については、前中計期間中に経営戦略として積極的に進めた基盤整備の結果、グローバル・メガサプライヤーの地位をほぼ確実なものとした。
 しかし、グループ全体でのさらなる飛躍のためには、取引のある日系自動車メーカーはもとより、海外自動車メーカーへの新規の拡販が不可欠である。そこで、その販路拡大の主要な役割を担う、ダイテック社とアンビス社の収益力向上が急務との認識を示した。
 ただ、アンビス社に関しては課題であった事業構造改革が完了したことから、今後の収益拡大が見込まれている。
 一方、ダイテック社は、主要な活動基盤とする南米の自動車市場が冷え込む中で業績の回復が遅れている。しかし、経営体質の強化と組織の刷新・スリム化を推進。住友理工グループのグローバルに広がる拠点網や販路、技術などを活用し、経営統合によるシナジー効果の創出を加速させることで、収益を拡大していく方針だ。
 防振ゴム事業では自動車メーカーの相次ぐ進出に伴う需要増に対応するため、メキシコの子会社に第2工場を建設し、来年2月に生産を開始する予定。国内では、山形県米沢市に建設中の住理工山形が6月に稼働を開始した。
 これら新拠点の設立と合わせて事業全体を再編し、資源や人材の最適な配置により、さらに競争力の高い製品供給体制の構築を図る。

グローバル展開する産業用高圧ホース

産業用高圧ホース

 ホース事業では欧州での日系自動車メーカーへの拡販を狙う重要戦略拠点として、ポーランドに新会社を設立し、今秋から生産を開始する予定。欧州自動車メーカーへの拡販を担うダイテック社との両輪で、欧州でのシェア拡大を進める。
 昨春設立した「住理工FCシール」では、トヨタ自動車の燃料電池自動車「ミライ」の増産に対応し、安定的な供給を確保。グループ全体で小型軽量化・環境性能向上に対応し、高い安全基準を満たす技術開発や次世代自動車への新製品開発に取り組む。
 一般産業用品部門のうち、産業用ホース事業では「TRI京都」(10月1日付で「住理工ホーステックス」に社名変更予定)に事業を移管し、これまで小牧製作所(愛知県小牧市)に置いていた事業部の運営拠点を、新設する京都事業所に移転する。
 中国をはじめとする新興国などでインフラ需要が低迷する中、TRI京都をグローバル展開におけるマザー工場と明確に位置づけ、事業基盤の再編と強化を進めることで、経営資源の集約と事業基盤の強化を実現し、「住友理工ブランド」でのグローバル拡販を図る。
 化成品事業では12年秋に設立したタイの製造子会社が本格稼働を始めているほか、化工品事業では欧米の既存拠点を活用した鉄道車両用防振ゴムなどの拡販を進めており、各事業のグローバル展開を加速させる。
 また昨秋、同社製品を広く取り扱う販売子会社「住理工商事」を発足。自動車向け以外の産業用ゴム製品を中心に、マーケティングや営業力を強化しながら、一般産業用品の事業拡大を図る。
 新規事業部門については、健康介護事業で体圧を検知する「スマートラバー(SR)センサ」を応用した製品群の開発・製品化を進めている。
 医療や介護の現場でリハビリ支援などに活用できる「SRソフトビジョン」シリーズのラインアップ拡充に加え、心臓マッサージの訓練をサポートする評価機器「しんのすけくん」を3月下旬に発売した。同機器は、行政や教育・医療機関への普及を通じて正しい心肺蘇生法の習得を促し、「安全・安心・快適」な暮らしづくりを目指す。

 


 

■2020Vでの3経営戦略

 新中計で掲げた3つの経営戦略のうち、環境技術強化では、地球環境の保全は各国政府の施策にとどまらず、企業の責任であると考え、同社グループもこれらに積極的に取り組む。
 具体的には、環境配慮型製品(燃料電池車向けセル用ガスケット、窓用高透明遮熱・断熱フィルム、ドライバーモニタリングシステムなど)の開発、環境規制対応技術(燃料蒸散規制対応、製品軽量化)の開発、事業活動におけるCO2排出量の削減・水資源保全・環境負荷物質の使用量低減などを図る。
 モノづくり革新に関しては、技術の進歩が著しいIoTや情報処理技術などを積極的に利用。「SRIM20Act」としてグループ一丸となって投資・仕掛・リードタイムを2分の1以下とし、生産性2倍、災害ゼロを目指す。この活動は、製造部門だけでなくスタッフ部門も含めたグループ全体で実施する。
 新規顧客開拓については、既存事業では23ヵ国105拠点のグローバルネットワークや、新たに設立する自動車新製品開発研究所(仮称)を活用し、グローバルマーケットにおける拡販活動や、自動車以外の事業で海外展開を積極的に推進し、新規顧客を開拓する。
 こうした取り組みにより、20年度の数値目標として売上高5300億円、営業利益320億円、営業利益率6・0%、ROA(営業利益/総資産)7・0%、ROE(純利益/株主資本)8・0%を目指している。
 また、新中計では4分野別の活動方針を提示。自動車では自動運転技術の進化など新たな技術ニーズに対し、「環境・燃費」「安全・安心」「快適」をキーワードに防振・自動車用ホース・ウレタン事業に次ぐ新製品開発を進めることで、2020年度売上高4300億円(15年度売上高3691億円)を目指す。
 エレクトロニクス事業では、プリンタ機能部品の製品群の拡大や新事業の創出、大手企業とのパートナーシップを行い、売上高400億円(同304億円)を目指す。

 


 

欧州でホース事業拡大 ポーランドに新会社設立

今秋稼働を始めるSRK―HPの工場予定地

ポーランド拠点

 住友理工は2月26日、自動車用ホース製造・販売の新会社「スミリコー・オートモーティブ・ホース・ポーランド(SRK―HP)」を設立し、ポーランド・ソスノヴィエツで今秋から稼働を始めると発表した。
 ポーランド国内については、すでに同社グループの自動車用防振ゴム製造・販売会社「TRI Poland(TRP)」が2拠点で生産を行っており、SRK―HPは2社3拠点目の進出となる。
 同社グループは現在、23ヵ国103拠点で事業を展開。特に自動車用品部門では、世界5極(日本、米州、欧州・アフリカ、中国・韓国、アジア)で製品開発・供給体制を構築し、全世界の自動車メーカーに高い品質の製品を納入している。
 自動車用ホース事業は今年1月、各地域のニーズを取り込み、高収益化を図るため、エリアごとに統括する「地域センター」を北中米、南米、欧州、アジアの4極に設置し、顧客の要望にスピーディーに対応する体制を整えた。
 その中で欧州については、13年に買収・子会社化したイタリアの「ダイテック―ダイナミック・フルイド・テクノロジーズ(ダイテック社)がすでに、欧州自動車メーカーを主要顧客として取引拡大を積極的に推進している。
 一方、今回設立したSRK―HPは、主に欧州の日系自動車メーカーへの拡販を狙う、欧州圏における重要戦略拠点としての役割を担う。
 SRK―HPが日系自動車メーカー、ダイテック社が欧州自動車メーカーへとそれぞれ拡販を推進することで、欧州圏における自動車用ホース事業のさらなる拡大を図る。
 同社グループは、このSRK―HPの設立により、13年に買収・子会社化したドイツの自動車用防振ゴムメーカー「アンヴィス・グループ(アンヴィス社)」の販路を活用しながら、モジュール化技術を得意とするダイテック社と緊密に連携することで、「グローバル・エクセレント・マニュファクチュアリング・カンパニー」の実現に向けてさらなる成長を目指していく。

 


 

グローバル本社を開設 グループガバナンス充実

グローバル本社の開所式でテープカットする西村会長(中央)と松井社長(左)ら

グローバル本社の開所式でテープカットする西村会長(中央)と松井社長(左)ら

 住友理工では、同社グループの事業基盤が世界23ヵ国105拠点に広がる中で、グループ・グローバルでのガバナンス体制の構築が求められている。このため、1月に設立したグローバル本社に管理・戦略・サポート機能を集約して、経営管理の高度化や戦略的な事業展開を進めている。
 昨年、経営意思の伝達や情報の共有などを迅速に行うため、グループガバナンス委員会を設置した。
 子会社を管理するグループ規程を継続して整備しているほか、会計不正を未然に防ぐモニタリング機能や、ガバナンスが正常に機能していることを検証する内部監査機能を強化し、グループガバナンスの充実を図っている。
 4月にはグループ全体に共通する法令遵守の基準「グループ・グローバルコンプライアンス行動指針」を制定した。
 従業員への教育や研修を通じ、企業行動倫理の徹底を促すとともに、国際的な企業責任を果たしていく考えである。
 さらにグローバルに発生する危機に迅速に対応するため、災害対策委員会をリスク管理委員会に統合した上で、リスク管理室を再編し、1月から社長直轄の組織としてリスク管理センターを新たに設けた。
 部門間を横断する組織体制とし、自然災害や事件・事故、経営上の緊急事態などにおけるリスク管理の一元化と指揮系統の一本化を図り、同社グループに及ぶ損害を最小化する。

 


 

産業用ホース事業を再編

 住友理工は3月24日、京都事業所を10月1日付で新設し、会社分割を行い、小牧製作所に置いていた産業用ホース事業部の運営拠点を同事業所に移転すると発表した。
 これに伴い、13年12月に設立した産業用ホース製造子会社のTRI京都へ同事業を移管するとともに、TRI京都の商号を「住理工ホーステックスSRK―HT)」(仮称)へと変更する。
 SRK―HTは今後、グローバル展開におけるマザー工場として、同事業を主体的に推進する役割を担うとともに、京都事業所、SRK―HTとが一体となり、グループの経営資源の集約と事業基盤の強化を実現し、意思決定の迅速化や「住友理工ブランド」でのグローバル拡販を図る方針。
 今後は、開発から製造、販売、アフターサービスまでを京都事業所およびSRK―HTで一体的かつ効率的に管理することにより、競争力のある高品質な製品を供給していく。[/hidepost]

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