IRC2016 北九州技術展 国際ゴム技術会議

2016年10月17日

ゴムタイムス社

北九州 国際ゴム技術会議

IRC 2016 Kitakyushu

 日本ゴム協会は、2016年国際ゴム技術会議(IRC2016北九州)を10月24日から28日にわたって、北九州国際会議場および西日本総合展示場(福岡県北九州市)で開催する。
 「国際ゴム技術会議」は、世界中のゴム・エラストマー分野の関係者が一堂に会し、科学技術の進歩と発展に向けた国際的交流を図ることを目的に、世界各国で順次開催されている。日本では、05年の横浜に次いで11年ぶり5回目の開催となる。また、会議と同時に、延べ入場者数が4500名を超える大規模展示会「ゴム・エラストマー技術展」も開催する。
 技術展には、国内のゴム関連企業だけでなく、アジアのゴム関連企業も数多く出展。開催地の北九州は、アジアの玄関口であることから、アジアをはじめとする多くの国や地域の方々の来場が期待される。弊紙では、技術展に出展するゴム関連企業のうち、旭化成、宇部興産、クラレ、平泉洋行、三福工業の5社を紹介する。

出展企業

旭化成

http://www.asahi-kasei.co.jp/

 

SBBSの粘接着剤用途を紹介する展示パネル

 旭化成は独自のポリマー設計技術により、常に最先端を行く新製品の開発を進めてきた。
 今回の展示会では、シリカ分散性を向上させて、省燃費性とグリップ性能を飛躍的に改良させたエコタイヤ向けS―SBRなどの合成ゴムや、各種樹脂の改質材・相容化材、粘接着剤などの幅広い用途に対応できる、エラストマーの製品と技術を紹介する。
 具体的には、合成ゴム系では変性S―SBRとBRに関する連続重合法・バッチ重合法の開発戦略と技術情報、エラストマー系については「タフテック」「S.O.E.」「SBBS」の最新技術を紹介する。
 S―SBRに関しては、同社では連続重合法を採用している。この製造法の特長は、耐摩耗性やグリップ性などトータルバランスに優れた製品が作れること。
 同社は、現在の主力である第4世代の「Fシリーズ」に続き、全ての面でFシリーズを上回る第5世代製品「XFシリーズ」「XBシリーズ」を開発中だ。今回の展示では、こうした開発戦略と技術情報を紹介する。
 一方、エラストマー系のタフテックは、耐候性・耐熱性に優れた水添スチレン系熱可塑性エラストマー。各種樹脂の改質剤、相容化剤、粘接着剤やエラストマーコンパウンドのベースなど、広い用途がある。
 S.O.E.は制振性・低反発性・耐磨耗性を特徴とする水添スチレン系熱可塑性エラストマーで、各種樹脂、エラストマーコンパウンドの改質材、発泡体、粘接着剤、アスファルト改質材などとして用いられる。
 同社では、こうした合成ゴムと熱可塑性エラストマーの最新技術と製品により、来場者に同社の技術力をアピールする。

宇部興産

http://www.ube-ind.co.jp/

 宇部興産の合成ゴム事業では、独自技術を活用して、顧客ニーズに適合する製品の実現に努めている。
 今回の展示会では「UBEPOL VCR」と、「UBEPOL MBR」のポリブタジエン製品を紹介する。
 UBEPOLVCRは、ブタジエンゴム(BR)中に樹脂をミクロンオーダーで微細繊維状に分散させた複合体で、ゴム製品の軽量化・低燃費化・生産性向上に貢献する材料だ。
 「412」「617」「450」「800」の各グレードがある。
 412は標準グレードで、押出し特性に優れており、高硬度化・高弾性率化が容易である。
 617は412に比べ、さらに樹脂の補強効果を高めたグレード。やはり高硬度化・高弾性率化を容易に行える。
 450は特殊製造法によって、分子量分布の広いマトリックスを持つグレードである。VCRの特性と一般BRの物性を、高次元でバランスさせることが可能である。
 800は450同様、特殊製造法により分子量分布の広いマトリックスを持つが、450の押出し特性をさらに改良したグレードだ。
 同社の合成ゴムは、基本的にコバルト触媒で重合するハイシスBRである。
 これに対し、UBEPOLMBRは、メタロセン触媒により特殊な構造を実現した新規BR。主にポリスチレン改質材用途で優れた特長を示している。
 同社では、これらを差別化商品と位置付けており、こうした商品を展示することで、技術力をPRするとともに、拡販につなげていく方針だ。

クラレ

http://www.kuraray.co.jp/

 

液状ゴム

 クラレは液状ゴム「クラプレン」を展示する。
 「クラプレン」は大きく分けて、液状イソプレンゴム(LIR)、液状ブタジエンゴム(LBR)、液状スチレンブタジエンゴム(L―SBR)に分けられる。
 これらは低分子量の粘稠な合成ゴムであり、残存モノマー、残存溶媒をほとんど含まないため、ほぼ無臭、無色透明だ。また、分子量分布が狭いという特長を持っている。
 「クラプレン」は可

塑剤として機能するとともに、二重結合を有するため、固形ゴムと共架橋することで、通常のオイルで発生するようなブリードアウトがしにくいという特長もある。これによって、最終製品の品質を安定に保つことが可能になる。
 また、「クラプレン」を使用することにより、加硫ゴムの力学物性を落とすことなく混練時間を削減することができ、生産性の向上と生産コストの低減も可能だ。さらに、官能化グレードは金属やガラス、繊維などとの接着性にも優れている。
 こうした性能により、「クラプレン」はタイヤやベルト、ホースなどのゴム製品、コーティング剤や粘接着剤、シーリング材などの幅広い用途で使用されている。
 タイヤを例に取ると、製造時に使用することでムーニー粘度を低減し、ゴムの練り時間を短縮できるため、生産性の向上に寄与。製造工程が安定するため、原料ロス・不良品率を低下させることが可能だ。
 加えて、ガラス転移点温度が低く、低温領域でもゴム性能を維持でき、NR・SBR・BRなどの主材と共架橋が可能なため、ブリードアウトの抑制につながる上、低粘度化することで、カーボンブラックの分散性を良くすることができる。
 展示会では、「クラプレン」のこうしたメリットを、国内外からの多様な来場者に積極的にPRする。

三福工業

http://www.mitsufuku.co.jp/

 

エチレンアクリルゴム

 三福工業は、自動車・航空宇宙・OA機器など、様々な業界で実績のある高機能発泡体(スポンジ)の製造・販売を行っている。
 同社のブースでは、スポンジの特長や使用用途に合わせ幅広い製品ラインナップを展示。シロキサンフリーと低アウトガス性の特徴を生かしたフッ素ゴム発泡体を中心に、同社製品を使用した特殊加工品や新規開発品など、実績のあるものから、今後活用が期待されるものまで、各種スポンジを紹介する。
 すでに実績のある製品の一つとして紹介するのが、ホットプレス用緩衝材「MF―20S」だ。従来のフッ素ゴム発泡体に比べ、圧縮永久歪み(CS)を改良したことで、ライフサイクルを長期化。長時間の使用に加え、回数を重ねてもへたることがない。
 また、プレス熱や接着剤などの薬品による劣化に強く、シロキサンをはじめアウトガス性が非常に少ないことから、外部への影響もない。ちなみに、プレス熱では230℃まで使用可能だ。
 さらに、プレスの圧力分散が一定となり、製品成形時の不良率改善に効果。ワークの凹凸による緩衝材鏡面のキズや切れなどが非常に少ないことも特長だ。
 プレス緩衝材以外にも、優れた圧縮永久歪み性を生かし、他の分野でも活用されている。
 一方、今後の活用が期待される製品の一つとして紹介するのが、世界で初めてエチレンアクリルゴム(AEM)を原料として開発した「AEM発泡体」である。
 ゴムとして抜群の耐熱性と耐油性に加え、マイナス35℃まで耐え得る耐寒性も兼ね備えている。耐オゾン性・耐候性にも優れ、非ハロゲンで低発煙性も特長となっている。
 期待される用途として、耐熱・耐油性を生かしたパッキン材・緩衝材用途、設備関係の断熱材用途、通気性を生かした薬液吸着材や吸音材用途などが見込まれている。

平泉洋行

http://www.heisengp.co.jp/

 

スピントリム

 ケミカル専門商社の平泉洋行は、輸出入販売するゴム用機械・試験機のほか、離型剤などの材料を紹介する。
 出展製品を挙げると、「プリフォーマ」は、バウエルグローバル社のゴム用押出機で、ゴム前成形用途として使われる。ECOシリーズでは良品押出のための維持と操作性が向上した。
 「スピントリム」もバウエル社の製品で、ゴムのバリ取り装置として使われる。窒素ガスを使用せず、円板の回転でバリを除去することが可能。ブースでは、実機展示することで、来場者に特長をわかりやすくアピールする。
 IRHDマイクロ硬さ計は、ゴム・エラストマーの硬さをIRHDスケールで測定する、ウォーレス社のゴム用試験機。ボタン一つで自動的に硬さを測定することができるため、人による測定差異を解消できる。
 同じくウォーレス社の「ラピッドプラストメータ」は、これまで天然ゴムの受入検査として使われてきたが、最近は顧客からのアイデアでゴムの練り現場で使われる機会も増えており、用途が広がっている。
 ゴールドリュッケ社の「ポア!スキャン」は、発泡ゴムを始め、多孔質材料のセル構造を高速かつ高精度に解析する、分析機器。最近は、自社開発品をPRするためのプレゼンツールとしても使用されている。
 シグマエンジニアリング社の「シグマソフト」は金型内部で発生する様々な熱影響を考慮したゴム流動及び加硫状況等の解析を行う最先端のバーチャルシミュレーションソフトウェア。最近では、金型開発段階で成形不良及び問題の事前予測が求められるケースが多く、顧客からの相談も増えている。高精度な成形支援ツールとして業界でのさらなる普及を目指す。
 また、ブースでは「ダイヤモンドコート」と「サーモラスト」などの副資材や材料も出品する。
 ダイヤモンドコートはITW FLuids North America社の水系離型剤で、ゴムやウレタンなどを金型で成形する際、離型性向上に効果を発揮する。また、溶剤に比べて環境に優しい上、利便性に優れている点も特長。
 サーモラストはクライブルグ社のスチレン系熱可塑性エラストマー。自動車からコンシューマー、工業用品まで幅広い用途に使われている。二色成形性及び難接着樹脂との接着性能に優れている。
 これら製品や材料に関しては、すでに特定の顧客を持っているが、「当社は今回の技術展をきっかけに、普段接点が少ないお客様や、取引がある会社でも当社製品を知らない違う部署に対し、製品を広く知ってもらいたい」(福澤久慈執行役員機械ビジネスユニットリーダー)と考えている。
 さらに、10月25日と26日には海外メーカーの担当者を招き、会場内でセミナー講演、国際会議講演を開催する。講演会を開くことにより、製品だけでなく、平泉洋行の認知向上も図る方針だ。