日本ゼオン 原料安で減収ながら増益に

2016年05月02日

ゴムタイムス社

 エラストマー 海外販売数量は増加  

 日本ゼオンの2016年3月期連結決算は売上高が2956億4700万円で前期比3・9%減となったが、原料安、為替円安により営業利益298億5600万円、同5・7%増、経常利益は321億5300万円、同3・4%増の減収増益となった。
 売上高は数量要因の伸長(プラス84億円)、為替プラス54億円があったが、市況軟化による価格要因がマイナス257億円となり、前期に比べ減収となった。販売数量は増加分(84億円)のうちエラストマー素材がプラス77億円。シンガポールの低燃費タイヤ用のS-SBRの本格稼働による増販、海外手袋用途で円安を背景に販売が好調に推移、化成品ではタイ子会社の熱可塑性エラストマーの増販が寄与した。

 価格要因のマイナス257億円のうちエラストマー素材は235億円。汎用合成ゴムおよび輸出向け熱可塑性エラストマーの価格下落などの市況価格悪化の影響を受けた。

 一方、営業利益は「原料安(238億円)と為替効果(54億円)が価格低下(257億円)をカバーし前期を上回った」(古谷岳夫執行役員)。原料は前期に比べ国産ナフサで2万900円(円/kl)のマイナス、アジア・ブタジエンでマイナス194㌦/tの原料安となった。

 エラストマー素材事業部門全体の売上高は1789億4000万円で同5・2%減、営業利益は207億2500万円で同23・2%増の減収ながら大幅な増益となった。

 このうち合成ゴムは拡販活動が進んだことにより、海外向け販売数量を伸ばしたが、市況価格悪化などの影響を受けたため売上高は1188億円、同7%減と前期を下回った。営業利益は原料安と為替効果により前期を上回った。合成ゴムの販売数量は前年比2%増の32万t。タイヤ向けの汎用ゴムは同5%増で、国内はタイヤメーカーの稼働率低下により減少し同16%減、海外はS-SBRのシンガポールの本格稼働、市況悪化の中、数量確保の戦略が寄与し同33%増と大きく伸びた。特殊ゴムは同4%減、国内が同2%減、海外も5%減とともに落ち込んだ。特殊ゴム比率は数量で31%、金額ベースで58%となった。
 
 高機能材料事業部門全体の売上高は709億7900万円で同0・1%増、営業利益は82億2100万円で同13・0%減となった。

 高機能樹脂関連は、主に光学レンズ用途での顧客の在庫調整の影響を受け、販売が振るわなかった。高機能部材関連では、モバイル向け光学フィルムの販売が堅調に推移する一方、テレビ向け光学フィルムが顧客の在庫調整の影響を受けた。 
 情報材料関連では、電池材料と電子材料の売上高は前期を上回ったが、トナーの売上高は前期を下回り、全体の売上高・営業利益ともに前期を下回った。
 化学品関連では合成香料の拡販が進み、販売数量・売上高を伸ばした一方、特殊化学品の販売が振るわず、全体の売上高は前期を下回ったが、営業利益は前期を上回った。
 次期の業績予想については、為替を1ドル105円と想定し、売上高2800億円、前期比5・3%減、営業利益は280億円で同6・2%減、経常利益は280億円で同12・9%減、当期純利益は190億円で5・1%増の減収減益を見込んでいる。今期設備投資は設備更新、生産改善を中心に291億円を計画。

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