NEDO、単層カーボンナノチューブを用いて高導電性ゴムを開発

2011年09月16日

ゴムタイムス社

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、カーボンナノチューブ(CNT)を用いることで高伝導率・高機械耐久性を併せ持つゴム材料を開発した。

 合成効率を大幅に向上させたスーパーグロース法で作った単層CNT(SG-CNT)を、特殊な方法でゴムに分散させることで従来のカーボンブラックを用いた導電性ゴムの100倍の導電率(30S/cm)を有しつつ、約5000回の破断耐久試験に耐えうる材料を実現した。

 これまで課題だった導電性と機械耐久性を両立させたことにより、レーザープリンターの帯電ロールや静電気除去材だけでなく、その特徴を最大限生かしたフ レキシブルデバイス分野への導電性ゴムの実用化を目指す。

 導電性ゴムは母体として絶縁体であるゴム(もしくは樹脂)に導電性を付与するため、従来はカーボンブラックや金属粒子(フィラー)などの添加が行われてきた。しかし、十分な導電性を発現するためには多量のフィラーの充填が必要であり、その結果ゴムの特性が失われ、脆化するという問題が有り、高い導電性と機械耐久性を両立することは困難だった。

 ゴムおよび樹脂の性質を保ったまま高い導電性を発現させるためには、フィラーの充填量を低く抑えて導電性を発現させることが必要になるが、そのためには出来るだけ細く、長いフィラーをゴムの中に分散させることが求められていた。

 従来CNTを樹脂などに複合化するために、CNTが数本から数10本連なったバンドルと呼ばれる凝集体を超音波処理などにより、CNTを樹脂中に単分散させることを目指した研究が行われてきた。しかし、これではCNTが長さ方向に切断されるため、CNTの特性が十分に発現されないという問題があった。

  そこで今回、TASCプロジェクト本部の畠賢治副本部長、小橋和史研究員、阿多誠介研究員らの研究チームは、スーパーグロース法によるCNT(SG-CNT)が従来のCNTに比べて長軸方向に長く高純度であるという特徴を最大限に生かし、特殊な方法を用いてSG-CNTの切断を抑えながらバンドルをほぐすことに成功。さらにCNT同士の凝集を抑えながらゴム中に分散させることで従来に比べて数10倍~数100倍の高い導電性を持つ導電性ゴムの開発に成功した。

 一般に複合材料が高い導電性を発現する場合、フィラーが緻密に連なっており、このような場合ゴムの持つ柔らかく変形しやすいという特徴は失われる。これ は伸び縮みする母材の中に伸び縮みしないフィラーが張り巡らされていることが原因。そのため母材とフィラーとの間で剥離がおこり機械耐久性は著しく 低下するが、長く広がった構造を持つSG-CNTはマジックハンドの様に変形できるという特徴を有しており、ゴム中で母材の変形に合わせてその形を 変えることが出来るため、今回開発された導電性ゴムは約5000回繰り返し歪みに耐えるという優れた性能が確認された。

 また、繰り返しひずみを与えながら導電性ゴムの電気伝導性を測定したところ、他社製CNTを用いた場合に比べてSG-CNTを用いた導電性ゴムは格段に電気伝導性の劣化を抑えられていることも判明した。

 

 

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