やさしいタイヤ材料のはなし その①

2013年08月04日

ゴムタイムス社

空気入りタイヤから見るタイヤの進化

 自動車の進化とともにタイヤも進化してきました。このタイヤの進化を可能にした材料の話を少し寄り道しながら分かりやすく説明します。

 先ず、自動車とタイヤの誕生した歴史から話を進めます。自動車はタイヤなしでは走れない。自動車ができた時からタイヤはあったであろうと想像しがちですが、堺憲一著「クルマの歴史」(NTT出版)によれば、蒸気機関の発明者であるジェームスワットの助手の一人、ウィリアム・マードックが1784年ころには既に蒸気自動車を試作していたのに対して、スコットランド人の獣医ジョン・B・ダンロップが乗り心地改善のために、息子の自転車に空気入りタイヤを取り付けたのは1888年と百年も後のことです。
 実は、ダンロップの空気入りタイヤを遡ること40年、同じくスコットランド人R.W.トムソンが空気入りタイヤを発明していますが、耐久性の問題で実用化するまで長い年月を必要としました。1885年には当時の馬車とは比較にならないほどの高速で走る蒸気自動車が既にフランスで作られたとされてますが、これは空気入りタイヤができる以前のことです。
 馬車でゴトゴト走るのに慣れていたとはいえ、自動車はまだ快適な乗り物とは言えなかったでしょう。1894年には世界で初めての自動車レースがパリとルーアン間で開催されましたが、空気入りタイヤを装着した自動車は皆無で、デコボコの路面の衝撃で車輪のスポークが折れたなどのために完走できない自動車もありました。翌年にはパリ~ボルドー往復(1176km)の自動車レースが開催され、ダンロップが考案した空気入りタイヤを付けたガソリン自動車が初めて登場しています。
 ダンロップの特許に基づいてフランスでタイヤ製造を始めたミシュラン兄弟がプジョー車に空気入りタイヤを装着して出場したのです。彼らは、参加した中で最高速度の時速60kmを記録したものの、用意したスペアタイヤを全て使い果たしたため、途中でリタイヤしました。しかし、翌年のパリ ― マルセイユ間のレースでは大部分の車が空気入りタイヤを装着したと伝えられており、空気入りタイヤが主流となるきっかけとなったレースとなりました。

竹下道孝氏のプロフィール
1974年、ブリヂストンタイヤに入社。タイヤ、建築・土木資材及び高機能フィルムと幅広い分野を経験。研究部長、開発部長及び販売部長の経験から基礎研究と事業戦略が事業成功のカギであると痛感。2009年に日本ゴム工業会ISO国内審議委員会事務局長に就任。現在は同工業会技術顧問に就任すると共に技術士としての活動を開始。

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