十人十色の事業承継 第6回

2013年06月03日

ゴムタイムス社

 退職後、会社から一定の収入を受ける方法

 今回は、前回お約束をした退職後も会社から一定の収入を得る方法について述べたいと思います。
 どの様にするかというと、退職後も社長は取締役として会社に残り、一定の役員報酬を得るようにいたします。
 取締役といっても、毎日会社に出社する事はありません。取締役会が開かれた時のみ出席いただくか、委任状を出せば大丈夫です。このようにすることで、取締役として会社の経営に参加している事を示すことになり、取締役の責任を十分果たしていることになります。
 次に収入の受取方法です。取締役として就任している訳ですので、役員報酬が当然受取れます。受取れる金額は退職直前の1年間で得た役員報酬を12ヶ月で割った額の最大49%までです。なぜ最大49%なのかは、それ以上受取るとそもそも退職をした事が認められないという税務上の取り扱いに関係してきます。
 この方法を選択すれば、退職後も年金だけではなく、役員報酬も受取り、安定した収入を確保出来る事になり、しかも退職したとはいえ自分の会社がどの様になって行くかを見守っていくことが出来ます。
 またこの方法は、会社にも有利な事になります。会社が十分に退職金を出せるだけの資金が有る場合は別ですが、退職金を全額支払うには資金が足りない場合、あるいは全額支払うと手元資金が少なく成り承継者が不安を感じるような場合は会社にとって大変助かります。
 以前このコラムで「事業承継にはまずキャッシュフローが大切ですよ」とお話致しましたが、覚えておいででしょうか。この方法は会社にとってまさにキャッシュフローの問題を解決してくれる事にもなるのです。
 ランニングコストとしての役員報酬を支払うのはそんなに難しくありませんが、一度に多額の現金が社外流失してしまうのは、事業承継者にとって結構頭の痛い問題になります。
 また、決算上も特別損失という形で、退職金を一度に支払った場合は赤字の決算になる事が多いのです。
 中小企業にとって、決算で赤字が出てしまうということは金融機関等の融資の問題に対しても有利な事では有りません。
 また当然、その期は赤字になりますから、従業員に対してもボーナスを出しにくくなるという状況に会社は置かれてしまいます。そうなると、従業員達の仕事に対する意欲が低下する可能性も出てくる訳です。
 退職者にとっては、退職金を一度に貰うとその年だけ大きな所得税がかかってきてしまいます。一方、会社の方は巨額の退職金を一度に払うことによりキャッシュイフローの問題や、決算の問題、曳いては従業員の仕事に対しての意欲の問題にも成ってくるというマイナス面が多分に浮き上がってしまうのです。色々な面を考えますと退職金を一気に払うという事は一考の余地が有ると思います。
 その為、一気に退職金を貰うのではなく、この様に徐々に受取っていく方法を私はお薦め致します。

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