技術士からの提言 第4回 上

2010年03月29日

ゴムタイムス社

 第4回 上 「さらに進めたい、地震防災で国際的貢献」

 今年は本当に地震が多い。各国で被災された方々に衷心よりお見舞い申し上げる。
 災害は忘れた頃にやって来る。中でも地震はその突発性が際立っている。いつ、どこに、どんな地震が襲来するか予測できない。それ故、地震ほど日頃の「そなえ」が重要なものは無い。それは個人レベルに始まり、家族、集合住宅、学校、企業、地域、行政、…、およそ人々の営みのあらゆるレベルで、崩壊の防止、生活や諸活動の維持、復旧、復興といった要素について備えなければならない。読者諸氏も、地震があった時の身の護り方、家族との連絡の付け方など、日頃からご家族と共有されていることと思う。日本はしょっちゅう地震のことを思い知らされているので、こういう備えは多分世界最高の水準だろう。問題はあまり地震を経験していないところと、地震防災について行政が行き届いていないところだ。1月のハイチ大地震は、地震動による都市の破壊だけでなく、政府の統治能力の瓦解で被害が深刻化している。いわゆるノンエンジニアド住宅の脆弱性に加え、防災における政治の責任の重さを改めて強く印象付ける大地震だった。
 1月25日掲載の第1回拙文の隣に、政策研究大学院大学岡崎健二教授が「安全な住宅をめざして」と題したエッセーを寄せられていた。そのテーマがノンエンジニアド住宅である。以前より本テーマに関心を持っていた筆者は、文中紹介されていた「途上国のノンエンジニアド住宅の地震被害軽減に関する国際シンポジウム」を傍聴した。
 2月26日霧雨の中、六本木の新名所国立新美術館に隣接する政策研究大学院大学を訪れた。74年前のこの日は大雪、まさにこの地に駐屯していた帝国陸軍歩兵第3連隊が主役の一翼を担ったその事件は、その後東條英機ら統制派が実権を掌握、日本が戦争の泥沼に進んでいく大きな契機となった。2010年のこの地では、人類共通の敵、地震災害から民を護るための取り組みが話し合われる…、日本人の着実な進歩に自信を持とう。
 シンポジウムでは、今年度建築研究所と政策研究大学院大学が行った、インド、インドネシア、トルコ、ネパール、パキスタン、ペルーの大学や研究機関との、各国のノンエンジニアド住宅の実態を把握する共同研究の成果、および本問題に対する日本の貢献の実績と今後について議論された。(つづく)

(2010年3月29日掲載)

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