企業特集 シンコー ケミカルマスターバッチに注力

2012年11月26日

ゴムタイムス社

 精練部門  原料メーカーと連携強化
  自転車タイヤ  「シンコー」ブランドで高いシェア

   1946年の創業以来、ゴムの総合産業として、人々の暮らしを支える役割を担ってきたシンコー㈱(金原良和社長)。 生活に根差した自転車のタイヤ・チューブを原点に、さまざまな産業やゴム関連企業に素練りゴム、カーボンマスターバッチ、ファイナルバッチを供給。このほか、建設機械用のゴムパーツ、ゴム車輪、水田車輪、ゴムクローラなどの製造ラインを確立し、農業機械、建設機械向けに工業用ゴム製品を供給している。また、繊維、金属、ゴム、それぞれの素材の持ち味を生かした複合材料製品の製造技術の開発にも積極的に取組み、事業領域のすそ野を広げている。

 グループの核となるのがシンコー㈱。シンコー㈱(大阪府八尾市)ではシンコーの原点であるタイヤ・チューブ部門を有し、練り生地メーカーとして汎用ゴムコンパウンド、フッ素ゴムコンパウンド、ケミカルマスターバッチ、カラーゴムコンパウンド、シリコーンゴムコンパウンド、EPDM低硬度ゴムを混練り、生産。月産能力は500㌧。

 タイヤ・チューブ部門の独自に開発したトレッドパターンによって生産される耐摩耗性に優れた自転車タイヤは国内外を問わず広く採用され、シンコーブランドの看板製品となっている。自転車タイヤは同社の中国子会社「錦州新興橡膠制品有限公司」で、2輪用タイヤを韓国の㈱「新興」でそれぞれ生産しており、これら製品を日本に輸入し、日本国内で販売を行っている。日本市場でのシェアは約30%弱と高い。シンコー㈱での販売構成比は練りゴム販売が65%、転タ、2輪用タイヤ販売が35%となっている。

 もう一つの生産拠点はアジア各国へのアクセスがスピーディな㈱シンコー(九州・宮崎工場)。ゴム練生地に加え、ゴムシート加工、トッピング加工、自動車用チューブ、農業機械用ゴムクローラ、工業用ゴム製品、リサイクル製品を生産しており、ゴム練生地の生産能力は本社工場の6倍弱の月産2700㌧。

  九州・宮崎工場ではタイヤ・チューブの技術力をさらに発展、応用させた工業用品を事業展開しており、建設機械用ゴムクローラ、農業機材ではハーベスターやコンバインの足回り、工業用パッキン、防水シート、産業用車両用マットなどの産業機械部品、畜産用シートなどの大型プレス製品を生産している。同社ではこれらゴム製品のリサイクル化を推進し、磨り減ったゴムクローラを回収し、新生品を生産する体制も構築している。

 ゴム練の需給動向について、金平社長は「本年1~3月は受注が好調でしたが、4月から落ち込みはじめました。従来、当社は下期に受注が集中していましたが、円高による空洞化や自動車メーカーの自動車用部品の海外現地調達が加速しており、懸念されるところです」と、やや厳しい見通し。

 近年、同社が拡販を図っているのが、シリコーンゴムコンパウンド、カラーゴムコンパウンド、ケミカルマスターバッチなどで、中でもケミカルマスターバッチ「アンビエント」はゴム薬品の分散性を高め、低熱履歴、均一分散、職場環境の改善による品質向上を目的とした商品で、職場での作業改善に貢献することから注目を集めている。

 今後の需要見通しについては「大変厳しい環境にあるが、精練部門では原材料メーカーとの連携を強化し、グローバルに原料調達が出来る強みを生かし、高品質の高付加価値製品の開発を進め、新規顧客開拓に注力。タイヤ・チューブ部門では新製品を上市し、シンコーブランドをより広くアピールしていきたい」(同)としている。

左・金原良和社長、右・永井敏博専務

左・金原良和社長、右・永井敏博専務