住友スリーエム フッ素樹脂のリサイクル化技術確立

2012年11月20日

ゴムタイムス社

フッ素樹脂のリサイクル化技術確立

住友スリーエム

 超低硬度グレードを新発売 3Mダイニオン「フッ素ゴムコンパウンド」

 住友スリーエムの化学製品事業部は「3M ダイニオン フッ素ゴムコンパウンド」の標準コンパウンドSFMシリーズに新たに硬さ41度の超低硬度グレード「SFMー40L」を追加、11月から本格販売を開始した。
 この超低硬度「SFMー40L」は従来の高機能フッ素ゴムの硬度が60~80度であるのに対し、この新グレードは硬度41度、成形性が良好であり、可塑剤・オイルを添加していないことから物性の低下が少なく、ブリード発生もないグレードだ。しかも加工性、装着性、離型性においても従来の高機能タイプの性能を維持しており、同社では自動車用部品のガスケットシール、バッテリー、エンジン回り部品に加え、複雑な形状での加工性が向上することから給湯器のジョイントやソーラー関連製品へとフッ素ゴムの事業領域の拡大を図る。
 標準コンパウンドSFMシリーズには従来の低硬度タイプに加え、圧縮成形用、インジェクション成形用、低圧縮永久ひずみタイプ、高フッ素含有タイプの各種をラインナップしており、他種ゴムに比べ耐熱性、耐燃料油性、耐オイル性、高温シール性に優れることから自動車・輸送機器産業をはじめ化学・機械、情報・通信機器関連分野での高機能部品の素材として多数採用されている。今後もコンパウンド性能の高機能化を進め、市場に合わせたコンパウンド設計製造を意欲的に進める。

 「3MダイニオンTHV熱可塑性フッ素樹脂」 蒸散規制対応ホースで需要拡大

 一方、フッ素系ポリマーの中でも近年、需要が拡大しているのが、「3M ダイニオン THV熱可塑性フッ素樹脂」。従来のフッ素樹脂に比べ、柔軟性が飛躍的に向上し、低温での加工が可能なほか、透明性が高く光学性に優れ、無機の酸・アルカリ・炭化水素系溶剤、アルコールに耐性を発揮するのが大きな特徴。米国での燃料蒸散規制強化(LEVⅡ)対応の自動車用燃料油ホースや防火規制に対応した耐防災ガラスなどでの採用が拡大している。現在、バリア性の高い製品についても開発中という。

 化学製品事業部の概要

 3M社ではフッ素化合物のユニークな特性に着目し、合成法から商品化まで独自の研究・開発を進め、現在、フッ素系ポリマー製品のバリエーションはPTFE(4フッ化エチレン)、高機能添加剤、熱可塑性フッ素樹脂、高機能フッ素ゴムなど多岐にわたり、幅広く存在する市場や用途、多様な生産技術に対応する数多くのグレードをラインナップしている。
 住友スリーエム・化学製品事業部では、欧米で製造したこれらフッ素ポリマー製品を輸入し、日本市場で販売を行っている。フッ素ゴムについては、同社製造事業所である岩手スリーエムで製造している。
 フッ素系ポリマーのブランド名は「ダイニオン」。ドイツのヘキスト社からフッ素樹脂事業を買収後、1996年からブランド名を「フローレル」から「ダイニオン」へ変更した。

 高機能フッ素ゴム 「3M ダイニオン 高機能フッ素ゴム」

 厳しさを増す高性能化への要求に応えるべく開発された製品で、200~230°Cといった高温下での長期連続使用が可能な耐熱性と、油、溶剤、酸、オゾンなどに対する耐性を併せ持つ。自動車、化学プラントその他多くの工業用用途をはじめ、従来の弾性体では使用に耐えられない上述のような環境下でも高いシール特性、耐久性を発揮する。

 熱可塑樹脂 「3M ダイニオン THV熱可塑性フッ素樹脂」

 柔軟性や加工性に優れ、透明度が高い、きわめて幅広い用途展開が可能な高機能素材。用途はフィルムのほか、他種材料とのラミネート、チューブ、ホース、電線の被覆等がある。また繊維等へのコーティングで防汚性、耐候性を付与できる。

 フッ素樹脂のリサイクル化技術確立

 3M社では環境面における社会貢献に注力しており、その一環として一般的にフッ素樹脂の乳化重合時に標準的な乳化剤として使用されているAPFO(PFOAアンモニウム塩)の代替品として、2007年に新乳化剤を開発。これにより3M社では2008年8月から製造工程においてPFOAを使用しない、乳化剤によるフッ素ポリマー製品の製造を開始している。また、フッ素系ポリマーの原料であるホタル石の有効活用を図るべく、フッ素樹脂をリサクルして原料に戻す「PTFEリサイクルプロジェクト」を立ち上げ、ドイツ環境省の助成を得てフッ素樹脂のリサイクル技術を確立した。2013年後半にもパイロットラインで実用性プロセスを見極め、欧州で14年から完全循環型のリサイクルシステムの商業化を目指す。
 また、これらリサイクルシステムの確立と並行して、継続的安定供給を図るため欧州、米国の製造ラインの能力増強を進めており、災害リスク回避のための危機管理対応力を強化している。

(2012年11月19日紙面掲載)

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