住友ゴム工業 ハイブリッド事業の現況と事業戦略

2012年11月12日

ゴムタイムス社

ハイブリッド事業の現況と事業戦略

住友ゴム工業

 再投資できる利益体質構築

 20年に売上高800億円目指す 制振技術の普及・拡大に注力

 住友ゴム工業はグループの持続的成長に向け、2020年を目標年度とし、「Go for NEXT」を新たなスローガンとする新長期ビジョン「VISION 2020」を策定。ハイブリッド事業では制振技術の普及、ヘルスケアビジネスの展開による新分野の創出で2020年に売上高800億円を目指す。ハイブリッド事業の現況と今後の事業戦略について福本隆洋常務執行役員に聞いた。

福本隆洋常務執行役員

福本隆洋常務執行役員

 ハイブリッド事業の現況からお聞かせください。
 福本氏 全体では増収ながら微減益となっております。前年上期に海洋商品の大型受注があり、今上期はその反動が出ております。下期は売上高、利益ともプラスの見込みで通期でも増収増益を確保する計画です。

 上期の部門別の販売動向は。
 福本氏 機能部品統括部(OA機器用精密ゴム部品、オフセット印刷用ブランケット、医療用精密ゴム製品)では医療用精密ゴム製品が販売を伸ばし、制振事業推進部では、住宅用を中心とした制震ダンパーが順調に推移しました。また、生活用品統括部(ゴム手袋、ガス管、健康・介護商品)も堅調であったことから増収となりましたが、インフラ統括部(土木・海洋商品、建築フロア、体育施設)での、海洋商品の販売減が響き、減益となりました。
 今期は、弊社の最新の制振テクノロジーにより開発した木造住宅用制震ダンパー「MIRAIE(ミライエ)」を含めた制振ダンパーを成長商材と位置づけ販売活動を進めました。
 また、OA機器用精密ゴム部品は、現在、海外では中国の中山、ベトナムのハイフォンに生産拠点を構え海外事業を推進しており、堅調な伸びを見せております。しかし、欧州経済の冷え込みから中国の日系OA機器メーカーが大きく影響を受けており、下期の需要減退が懸念されるところです。
 ゴム手袋は国内向けの使い捨て手袋や家庭用手袋がともに堅調に推移しております。ガス管は昨年の震災以降、3月~4月にかけ特需があり、今上期はその反動もあり落ち込んでおります。車いす用可搬形スロープ「ダンスロープ」も上期は若干落ち込んでいます。

 インフラ統括部門が不振であったということですが。
 福本氏 大きな要因は海洋商品の需要減です。人工芝「ハイブリッドターフ」は、東北地区の復旧復興費でサッカー場の整備需要がありましたが、全体的には需要の一巡により若干のマイナスとなっております。今後は改修需要に期待を寄せております。

 下期の需要見通しは。
 福本氏 懸念される分野は、一つは欧州はじめ新興国での需要減が予測されるOA機器用精密ゴム部品です。年末にかけて厳しい状況を見込んでおります。もう一つは、土木・海洋商品です。国内の海洋商品需要が横ばいの状況に加え、海外も円高や海外メーカーとの競争の激化など厳しい状況が続きますが、資源国の港湾整備需要に期待を寄せています。

 木造住宅制震ダンパーの市場醸成

 長期ビジョンの中で注力する分野は。
 福本氏 一つは制振分野を伸ばしていきたいと思います。木造住宅用制震ダンパー「MIRAIE(ミライエ)」は国内がメインとなりますが、耐震プラス制振需要の意識が高まっており、当社は得意のゴム技術を活かし、市場を醸成していきたいと思います。また今後は、2×4工法用、3階建て用、リフォーム用とラインアップの拡充を図っていきます。
 ビル用制振ダンパーでは超高減衰テクノロジーを世界に展開し、地震多発国の高層ビルを中心に納入拡大を目指していきます。また、一般橋梁の耐震補強にも制振ダンパーが有効であり、積極的な販売を進めてまいります。
 もう一つはタイヤやハイブリッド事業で培われてきた技術とクリーン技術を融合させた医療用精密ゴム事業です。
 医療用ゴム市場は着実に伸びており、現在は国内がメインですが、今後は技術開発による差別化を図り、海外進出を視野に入れ、海外への展開を加速させていきます。
 OA機器用精密ゴム事業については、大きく伸ばすことは難しいですが、中長期的にはまだまだ伸びる分野とみています。
 需要の状況を踏まえ、適正な供給体制を構築していくことがポイントとなります。
 連結売上高800億円の達成にはさらなる投資が必要となります。それを利益面で支える体制を維持しなければなりません。生活用品統括部及びインフラ統括部で稼ぎ、成長分野へ投資ができる利益体質を構築していきます。
 成長商材と位置づける制振分野では、国内外に弊社の制振技術を普及させるほか、ヘルスケアビジネスではクリーンな製造技術と高度なゴム材料技術で、世界の医療・介護現場に安心と安全を提供していきたいと考えております。

 ハイブリッド事業部の注力商品

 ハイブリッド事業本部では、各商材別にビジネスチームと称したミニカンパニーを形成し、それぞれの分野の性能・品質・販売№1を目指している。ビジネスチーム別に技術・製造・営業の機能を集約することで、スピーディな意志決定と営業力・品質・納期の対応を実現している。
 機能部品統括部(ファインラバー、オフセットブランケット、制振ダンパー、医療用精密ゴム=クリーンラバー)
 ゴムの持つ優れた特性に先進のテクノロジーを融合。暮らしの安全性を高める制振技術から、OA機器に欠かせない精密ゴムまで、

 

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