【TPE特集】 クラレ Jシリーズの用途拡大進む

2012年05月14日

ゴムタイムス社

Jシリーズの用途拡大進む アクリル系「クラリティ」を量産化

クラレ

  • 住所: 東京都千代田区大手町1-1-3 大手センタービル
  • 住所: 大阪市北区角田町8-1梅田阪急ビルオフィスタワー
  • WEB: WEB http://www.kuraray.co.jp/

 ㈱クラレのエラストマー事業部ではユーザーと密着した開発体制を強化し、これまでに開発・展開してきた水素添加スチレン系エラストマー「セプトン」Vシリーズ、Qシリーズ、Kシリーズに続き、新たに「セプトン」Jシリーズを開発し、シリーズの拡充・強化を図っている。
 「セプトン」Jシリーズは柔軟性と圧縮永久ひずみのバランス、緩衝・制振性、成形加工性に優れ、特に非常に軟質な低硬度ゲル材料の設計に適した新規熱可塑性エラストマー。
 Jシリーズを用いた成形材料は、従来の低硬度コンパウンド以上の緩衝性、制振性能を有するのが特徴。軟質な低硬度ゲル材料として生活・雑貨部品、医療・介護用品、スポーツ用品、工業部品、電気・電子部品等の高付加価値な、高性能用途への展開が期待されている。
 また、同社エラストマー事業部ではスチレン系エラストマー「セプトン」、ウレタン系エラストマー「クラミロン」に加え、独自技術により開発したアクリル系熱可塑性エラストマー「クラリティ」を事業化、「クラリティ」の新潟事業所での量産設備(年産5千トン)が完成し、2011年から稼働を開始した。 「クラリティ」は メタクリル酸メチル(MMA)とアクリル酸ブチル(BA)のブロック共重合体で 同社のスチレン系熱可塑性エラストマー「セプトン」と同様のハードーソフトーハード構造を有する。 独自のリビングアニオン重合技術や特殊反応機による高効率生産技術によって、同社が世界で初めて工業化に成功したオンリーワン素材。
 MMAの「透明性」「耐候性」、BAの「柔軟性」「接着性」といった様々な特長を併せ持ち、既存の材料では満たされないニーズ向けに新しい素材として展開できる可能性が高く、その特長を生かした「粘着剤」「フィルム・導光部材」「成形材料」での光学および成形材料分野での市場展開を行っている。
 2011年度の同社のエラストマー事業は、日本市場では震災の影響による供給制限に加え自動車の減産により苦戦、期後半から自動車の増産で回復しつつあるが期を通しては若干のダウンとなった。中国市場は金融引き締めで前半は需要が減少したものの、下期以降から回復、アメリカは自動車用途、コンシューマグッズともに堅調でヨーロッパ市場はドイツ、北欧向けで自動車用途、メディカル分野が好調に推移した。
 同社では熱可塑性エラストマー事業をコア事業として位置付け、積極的なグローバル展開を進めており、旺盛な需要増に対応し、国内鹿島事業所でのデボトルネックで数百㌧の能力増強を図ったほか、グローバルな需要増に対応するため米国子会社「クラレアメリカ社」のヒューストンに第2工場の建設を計画、1ライン増設し2014年の稼働を目指す。現在、国内鹿島事業所では年産2万3000トン、クラレアメリカ社のヒューストン工場で同1万8000トンの生産能力を有する。 
 水素添加スチレン系エラストマー「SEBS」の世界需要は、加硫ゴム代替や軟質塩ビ代替用途を中心にして需要の拡大が続いており、現在約15万トン(2011年)の世界市場があり、年率約10%で拡大していると同社では推定している。
 また、同社は原油・ナフサ価格、C4留分をはじめとするエラストマーの原料価格高騰に対応、本年3月に安定供給の維持と採算改善のために国内、海外製品ともに値上げを実施、ほぼ浸透したとしている。

(2012年5月14日紙面掲載)

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