非正規労働者の課題について ゴム連合の取り組みと考え方

2011年07月18日

ゴムタイムス社

ゴム連合(北条敏明中央執行委員長)は7月12日、京都国際ホテルで第44回ゴム産業労使懇談会を開催した。これまで法制動向などに注視しながら取り組んできた非正規労働者についての課題を取り上げ、加盟組合の非正規雇用実態調査の結果を踏まえて、今後の取り組み方針を確認した。ゴム連合の考え方については中央執行委員の前田康秀氏が説明した。

前田中央執行委員

前田中央執行委員

ゴム連合では、加盟組合の多くの企業が非正規労働者を雇用しており、非正規労働者に対する対応は、これまで法制動向などに注視しつつ取り組んできた。今後も非正規労働者は重要な労働力であり、企業や労組として国内企業基盤の維持・発展に向けた取り組みの観点から、非正規労働者の均等、均衡を考えた労働諸条件の処遇に対する考え方について、労使の論議につなげていくための課題提起とすることを目的に、今回の労使懇談会で取り上げた。
1990年代の半ば、バブル崩壊以降の長期不況による企業の経営政策の変化や人件費削減とポートフォリオの見直しなどで政府による雇用・労働法制の規制緩和が進み、正規雇用から非正規雇用へ移行し、その後急速に進展し、2010年には約34%が非正規労働者となっており、ほぼ3人に1人の割合にまで拡大している。
非正規雇用の質的変化を見ると、家計の主たる生計者が非正規雇用で働かざるを得ない傾向となってきており、年収200万円以下の層の増加が進み、近年は5人に1人という状況になっている。こうした雇用拡大の社会的影響については、企業にとっても熟練労働者の低下、次世代への技術伝承困難、生産性の低下など課題が表面化している。
ゴム連合が実施した加盟組合を対象としたアンケート結果では、回答52単組中、雇用ありの回答企業数は「期間工等」が30社、「パートタイム」45社、「高齢者再雇用」45社、間接雇用のうち「派遣労働者」が37社、「研修生・その他」16社となり、多くの企業が非正規労働者を雇用していることが判明した。
非正規労働者に対する取り組み状況は、派遣法など労働法制に対する取り組みはもとより、事前受け入れの協議制や正社員登用(制度化)への取り組み、苦情相談窓口の設置や職場ごとのコミュニケーションを図る取り組みなどが推進されているものの、具体的な処遇改善への取り組みは依然進んでいないのが実態。

熱心な討議が行われた労使懇談会

熱心な討議が行われた労使懇談会

非正規労働者に対する処遇改善が進まない理由については①組合員・正社員の雇用を守ることに主軸が置かれ、非正規労働者による人員の調整が行われていたこと②組合員・正社員の労働条件改善も困難な環境下にあったこと③人件費の抑制・福利厚生の抑制―などが背景にあり、法遵守の意識は強いが、社会的責任、役割の意識が薄いことがあげられた。
非正規労働者に対する課題については、技術や技能伝承の問題や安全意識に対するギャップ、モチベーションによる生産性、業績への影響、スキル向上、能力開発などへの教育の必要性、職場のコミュニケーションなどがあり、このほか組合員の過半数割れへの対応も指摘された。団塊世代者の退職などがその理由で、2010年度は8支部・組合で発生した。
一方、労働政策研究機構調査による直接有期契約労働者の声には次のようなものがある。
「有期労働契約であり、常に雇用に対する不安がある」
「業務内容に対する賃金、評価面での正社員との格差への不満」
「現状を不本意な状態であると捉え、正社員への登用を希望する」
同研究機構では「処遇対応を実施している企業の有期契約労働者は会社業績への貢献意欲、スキル向上意欲、職業開発能力に対する意識が強い」とまとめている。
ゴム連合では、労働組合の果たすべき社会的な役割を踏まえ、非正規労働者が抱える課題に対して積極的に関与していくことを基本スタンスとし、今後は非正規労働者に対する労働諸条件の実態を把握、直接雇用の非正規労働者問題を優先的に取り組むほか、労使協議を基に是正すべき課題に対する認識の共有化を図り、労使の合意形成の基礎、処遇改善に向けた取り組みを展開することにしている。
なお、ゴム連合は2011年春季生活改善において、非正規労働者に対する取り組み方針を初めて本格的に実施した。実態把握が大きな狙いであるが①正規従業員への登用制度の整備②賃金格差の是正に向けた取り組み③福利厚生制度の処遇見直し④派遣労働者の社会保険への加入確認など。
この調査結果では「正規従業員への登用制度の整備」では制度ありが62単組中29単組、「賃金格差是正に向けた取り組み」では、昇給制度ありが25単組、労使協議等取り組みが16単組で、取り組みなしの回答は21単組だった。
前田氏は「2011春季生活改善の取り組みにおいては、多くの単組で非正規労働者に対しても実態の把握から労使協議による課題の共有化などの取り組みが行われた」と述べた。
今後の取り組みの考え方については、直接雇用の非正規労働者の労働条件に関する処遇の実態を把握した上で、課題を整理して労使で共有化を図り、改善項目の取り組みを推進していく。
具体的には「正社員登用制度の整備と運用に向けた取り組み」で、制度のない単組では制度の整備に取り組み、制度を導入している単組は制度上の課題認識の共有化と是正の推進。
2番目は「均衡処遇に向けた賃金格差是正への取り組み」、3番目は「教育関連の取り組み」、4番目は「その他課題に対する取り組み」。
前田氏は「今後も直接雇用の非正規労働者は多くの企業で必要とされる。業務内容においても正規社員と拮抗しており企業業績に対する影響も大きくなりつつあり、直接雇用の非正規労働者に対する処遇改善取り組みは必要不可欠」と指摘し、最後に「処遇改善を推進するためにも組織化の観点も重要。それぞれがおかれる互いの環境を理解して、社会的責任と役割のもとに、ゴム連合としても取り組みを推進していく」と結んだ。

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