ユニチカ バイオマス素材80%以上配合の射出成形用樹脂を開発

2012年01月25日

ゴムタイムス社

 ユニチカ(本社大阪市中央区 安江健治社長)は、植物由来のポリ乳酸を原料としたバイオマス素材「テラマック®」の比率を約80%以上に高めたうえで、耐衝撃性と耐熱性をABS樹脂レベルに向上させた耐衝撃性射出成形用樹脂を開発した。ポリ乳酸には、NatureWorks社の「ingeo」を使用している。
 「テラマック®」耐衝撃性射出成形用樹脂は、全組成中に配合される植物由来のポリ乳酸比率が80~90%と高く、ABS樹脂と同等の耐衝撃性と耐熱性を 達成した同社独自のバイオマスプラスチックです。地球温暖化対策や枯渇資源の節約に貢献できる環境配慮型樹脂をコンセプトに、これまでに培ってきたポリ乳酸結晶化促進技術や加水分解抑制技術に加え、独自のコンパウンド技術などの組み合わせにより実現した。
 同社はこれにより地球環境への貢献とともに、ABS樹脂に求められる耐衝撃性を要する用途への展開を図っていく。

1.技術開発の背景
 石油資源を原料とした従来のプラスチックは、廃棄時の焼却により二酸化炭素などの地球温暖化ガスを増加させる。一方、トウモロコシなどの植物資源を原料とするポリ乳酸は、廃棄時に二酸化炭素を排出しても、植物が成長する過程で二酸化炭素を吸収するカーボンニュートラルであるため、大気中の二酸化炭素などの地球温暖化ガスの増加を抑制できる。さらに、植物由来のポリ乳酸は、毎年育成できる植物を原料にするため、枯渇資源に依存せず、よって、化石資源の消費を抑制することもできるが、従来の石油由来樹脂と比較して、耐衝撃性や耐熱性に劣り、成形加工性が悪く、加水分解しやすいことなど、多くの問題を抱えていた。これらの解決には、主に石油系樹脂と混合することによって対応されているが、石油系樹脂の配合比率が大きくなり、環境負荷低減効果が十分に発揮されない場合もあったという。
 同社は、これらの問題に対応すべく、長年培ってきたポリ乳酸の結晶化促進技術や加水分解抑制技術に加え、独自のコンパウンド技術などを組み合わせることにより、新たな環境配慮型樹脂として「テラマック®」耐衝撃性射出成形用樹脂を開発した。

2.「テラマック®」耐衝撃性射出成形用樹脂の特長
 ABS樹脂と同等の耐衝撃性と耐熱性を達成するにあたっては、結晶化促進技術や加水分解抑制技術に加え、独自のコンパウンド技術を応用することにより実現している。

1)地球温暖化対策や枯渇資源の節約に貢献
 植物由来のポリ乳酸比率が80%以上と極めて高いことで、石油資源の枯渇問題や地球温暖化防止への貢献が期待できる。ポリ乳酸は、汎用ABSとの比較でコンパウンドの樹脂製造から製品の焼却までのライフサイクルで発生するCO排出量を約70%削減できるほか、枯渇資源の消費量を約70%削減することができる。また、日本バイオプラスチック協会のバイオマスプラマークも取得済み。

2)ABS樹脂と同等の耐衝撃性と耐熱性を併せ持つ
 ポリ乳酸樹脂のシャルピー衝撃強度は2kJ/m程度であるのに対して、今回開発した「テラマック®」耐衝撃性射出成形用樹脂のTE-8005Mは23kJ/m、TE-8005MT9は11kJ/mとABS樹脂と同等の耐衝撃性を持ち、また耐熱性も荷重たわみ温度(0.45MPa)で100℃以上を保持し、こちらもABS樹脂と同等レベルを達成している。

3.今後の展開
 同社は、ポリ乳酸を主成分とする環境低負荷のバイオマス素材「テラマック®」を、フィルム、シート、繊維、スパンボンド等で幅広く展開している。今回開発した「テラマック®」耐衝撃性射出成形用樹脂は、ポリ乳酸の耐衝撃性や耐熱性を大幅に向上することができたことから、OA 機器、IT 機器、電気部品への筐体や自動車内装部品への展開を図っていく。現状の価格は汎用ABSの2~3倍だが、用途拡大での量産化により汎用ABS同等の価格を目指し、将来的には「テラマック®」事業の最も重要な柱の一つになると考えている。具体的な販売計画は2年後(25年度)で1億円、5年後(28年度)で5億円を目指している。

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