ランクセス「LANXESS Rubber Day Japan」を開催

2011年11月30日

ゴムタイムス社
講演するラクランクセスAG経営委員会会長アクセルC・ハイトマン氏

講演するラクランクセスAG経営委員会会長アクセルC・ハイトマン氏

エコタイヤの急速な需要に対応 最先端の合成ゴム技術を披露

 ドイツの特殊化学品メーカー、ランクセスの日本法人ランクセス㈱(ペーター・ワインマール社長)は、合成ゴムの未来を語るシンポジウム「LANXESS Rubber Day Japan」を11月21日、東京・新橋のコンラッド東京2階「風波」で開催した。同シンポジウムでは「環境対応型車社会を推進する技術イノベーション」をテーマに合成ゴム分野の最先端技術についてのパネルディスカッションや革新的な合成ゴムのデモンストレーションが行われ、タイヤ、工業用ゴム製品メーカーの材料担当役員や日本国内の販売代理店各社の代表ら約200名が参加した。タイヤ業界向け高性能ゴムのプレミアムサプライヤーとして、ランクセスは旺盛な需要に対応、全世界で合成ゴム生産量を増強することを明らかにした。

開会あいさつするペーター・ワインマール社長

開会あいさつするペーター・ワインマール社長

 NdーPBR
 NdーPBR(ネオジウム触媒ポリブタジエン)は、「エコタイヤ」のトレッドとサイドウォールに使用され、タイヤのエネルギー消費や転がり抵抗の低減を実現する低燃費タイヤ向けの高性能ゴム。世界各地の拠点で追加増強する。ドルマーゲン(ドイツ)、オレンジ(米国)、カボ(ブラジル)の拠点で、年間計5万トンの追加増産を図っており、ドイツとブラジルでの追加増産は、2012年第1四半期までに本格稼動する。また、アジア地区での需要増大に対応、シンガポールにNdーPBRプラントの新設を計画。2015年に稼動予定の新プラントの投資額は約2億ユーロ。年間14万トンの製造能力を持つ。ジュロン島に建設中のブチルゴム製造プラントに隣接して建設される。
 同時にランクセスは、トリウンフォ拠点(ブラジル)において新技術を導入するにあたりフィージビリティスタディを実施しており、標準タイヤ向けのESBRの製造を、「エコタイヤ」向けのSSBRの製造に転換する可能性を検討している。
 年間製造能力11万トンを備えるトリウンフォ拠点の製造転換を行うには、4000万ユーロから6000万ユーロの投資額が必要となり、2012年中旬には、最終決定がされる予定。

シンポジウム会場

シンポジウム会場

世界初のバイオ原料EPDM開発

 EPDM
 オランダのDSM エラストマーズ事業「ケルタン」を買収したことで、年間製造能 力16万トンを備えたシッタート・ヘレーン拠点、年間製造能力4万トンのトリウンフォ(ブラジル)拠点を有する。ランクセスは「ブナ EP」をマール拠点(ドイツ)およびオレンジ拠点(米国テキサス州)で製造し、年間製造能力は約12万トン。
 この買収によりランクセスは、従来の技術と比較してEPDM製造時に必要なエネルギーと製造コストを削減し、さらに広い用途への応用ができる革新的なケルタンACE技術を活用し、既存のプラントへもACE技術の導入を進めており、ヘレーン拠点でパイロットプラントを建設。

 バイオ原料使用のEPDM
 バイオ原料(サトウキビ)を使用した世界で初めてのEPDM「ケルタン エコ」を開発。「ケルタン エコ」は、サトウキビで製造されたエチレンを使用。
 石油系原料のエチレンと同水準の品質で、CO2排出量削減にも貢献する。トリウンフォ拠点で同製品を世界市場向けに年間約1万トン製造する予定で、最初の500トンがすでに販売された。
 トリウンフォ工場では現在、EPDMを年間4万トン製造。ヘレーン工場(オランダ)、マール工場(ドイツ)およびオレンジ工場(米国テキサス州)でEPDMを製造している。将来、EPDMの全グレードは「ケルタン」の商標名で販売される。

ブチルゴム新プラント 13年に稼動開始

 ブチルゴム
 ハロブチルゴム需要は、チューブレスタイヤのインナーライナーに使用され、アジア地域のラジアル化およびチューブレスタイヤのトレンドが牽引。世界的な需要増に対応するため、ベルギーのズヴァインドレヒトにあるブチルゴムプラントの製造能力を10%増強することを決定。現在、同プラントの年間製造能力は約13万5000トンだが、2000万ユーロを投資し、1万4000トンを増強する。2011年第3 四半期にプラント改良工事の際にこの増強のほとんどが行われ、2012年第2四半期に完了予定。
 シンガポールではジュロン島で4億ユーロを投資し、年間10 万トンの製造能力を持つ新ブチルゴムプラントの建設が進められており、2013年第1四半期に稼動開始予定。同社はカナダのサーニアにも年間製造能 力15万トンのブチルゴムプラントを有し、サーニアとズヴァインドレヒトの各拠点は現在フル稼動で操業している。

H-NBRの生産能力を40%増強へ

 NBR
 台湾合成ゴム(TSRC)社との共同投資により中国・南通に合弁事業「ランクセスTSRC(南通)化学工業有限公司」を設立。南通に年間約3万トンのNBRの製造工場の建設を進めている。生産開始は2012 年上半期。南通の製造拠点が稼動するまでは、ランクセスが有する世界最大のNBR製造拠点(フランス・ラバンツェナウ)から、中国の顧客に向けて製造・供給を行なっている。「ペルブナン」「クライナック」「バイモード」「ナノプレン」の商標名で販売。NBRは、シール、油空圧ホース、ゴム手袋、弾性糸、印刷ロー ルやロール用ブランケットなど広範な用途に使用されている。

 HーNBR
 レバクーゼン(ドイツ)とテキサス州オレンジ(米国)の製造拠点に数百万ユーロを投資し、水素化ニトリルゴム(HNBR)の製造能力を40%増強する。「テルバン」の商標名で販売。
 ドイツと米国における製造設備の増強はすでに開始されており、 レバクーゼンでは2012年4月に、オレンジでは2012年12月までに完成の予定。HーNBRゴム市場は、グローバルで年間2桁の成長率を示している。特に中国やインドなど世界の自動車メーカーからの力強い需要によるもの。

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