新社長インタビュー 天満サブ化工 伯耆晶子社長 技術力向上と人材育成に注力

2019年07月22日

ゴムタイムス社

 ―社長就任の感想。

 当社は1935年に祖父の横井清一が創業し、今年創業84年を迎えます。二代目は父の横井一、三代目は兄の横井理、次いで私が引き継ぐことになりました。兄も私も、現在の本社所在地の大阪市城東区にあった工場の一角の社宅で日々製造現場を目の当たりにして育ちました。創業時の工場の周囲は田畑や空き地ばかりでしたが、年月とともに開発が進み学校や住宅地となったため、1991年(全面移転は1997年)に兵庫県小野市に規模を拡大して兵庫工場として移転しました。今後も代々培われ継承されてきたサブ製造の事業を大切に守っていきたいと考えています。

 ―ご自身の経歴について。

 入社するまで大学の非常勤職員として勤務していました。大学での専攻は植物学、研究分野は藻類の生理生態学、環境生物学で、研究対象は淡水産珪藻と、工業分野とは一見距離があります。

 しかし、当社が製造するサブの主原料は菜種油・大豆油などの植物油です。また硫黄や鉱物油などの石油由来の副原料が使われていますが、石油は珪藻の光合成産物を起源とするといわれていますし、油類の精製に珪藻土が使用されています。社業に付くまで全く意識しなかった、家業と研究分野とのつながりを今はたいへん興味深いことととらえています。

 入社後は一貫して主に財務面を担当していました。会社全体を俯瞰できるマネージャーとしての業務経験は、今後の経営にも活かせるものと思います。

 ―御社の製品について。

 サブとはゴムの軟質ゴム配合や加工性を向上させる目的で使われる加工助剤で、海外ではファクチス(「人造の・人工の」の意)と呼ばれています。高価であった天然ゴムの代替品(サブスティテュート)として使用されていた時代があり、それが「サブ」という日本名の由来になっています。現在はゴムに配合すると柔軟性を増しながらもべたつきやブリードを防ぐ特性から、ロールやベルト、チューブ、ホース、スポンジゴム、パッキン類、自動車部品などさまざまな工業品に使用されています。

 主な製品ラインアップは、植物油を硫黄で架橋させた硫黄ファクチス、塩化硫黄で架橋させた塩化硫黄ファクチス、特殊架橋させた硫黄・塩素を含まない無硫黄ファクチス。一部のグレード品を除き、ゲル化させた加硫植物油を粉砕し紛体の形状で袋詰めして提供しています。

 ―現在の課題について。

 サブ業界での寡占に甘んじて先々の事業展開につなげる努力を怠ってきた面があるのではと反省しています。加工助剤はゴムの配合設計に組み込まれないと使っていただけません。新たな配合設計にお使いいただくために、ゴム配合時のサブの有用性を示すデータをご要望に応じてご提供できるよう、また、サブ配合のゴムコンパウンドを練る際の技術上のアドバイスができるよう、技術部門での対応を急いでいます。また営業面でも、顧客のニーズに応じて細やかなサービスをご提供するために情報の収集と対応計画の策定を進める必要があります。

 小さな会社が生き残るには、独自性と技術力、そして人材育成が大切です。目下、若手の育成が重要事項であると位置付けていますが、若手・ベテランに関わらず、社内での教育に加えて外部研修も積極的に活用し、技術力をつけるとともに視野を広げて欲しいと考えています。

 ―今後の方針について。

 ゴム業界にも変化の波が来ており加工技術も日々進化していますが、加工助剤としてのサブのニーズがなくなることは当面はないと思っています。しかし、「サブを作り続ける」ことを基本方針として海外需要を視野に入れたサブの販路拡大に努めつつ、国内外の市場ニーズに合った新たな製品の可能性を探らなくてはいけないと気持ちを引き締めています。

 社内ではコミュニケーションを重視し、個々の社員の人となりを知ることでそれぞれの特性を生かした人

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