【新年インタビュー】TOYO TIRE 清水隆史社長

2019年01月01日

ゴムタイムス社

東洋ゴム清水社長

■ 新年インタビュー

「第2の創業期」として幕開け

TOYO TIRE 清水隆史社長


 

 1月1日に東洋ゴム工業から「TOYO TIRE」へとスタート。19年は「第2創業の年」と位置づける清水隆史社長。社名変更を機に体制強化していき、改めてモビリティ分野をビジネスの中核することで、新しいステージを築き上げていく。

◆この3年間の軌跡について

 当社の一連の不正問題から、社会に一から出直すと宣言したのが2015年の年末だった。16年は社内外の混乱が収束する間もないまま、スタートを切った。発足した新体制のもと、経営の最重要課題として①免震ゴム交換回収作業を着実に進めること②再発防止策の徹底を図ること③持続的に本業の収益を確保していくことの3点を掲げた。いずれも大きなテーマで、どれひとつとして、欠かすことができない、緊迫したなかでエネルギーを注ぎ込んだ16年だった。この16年は「変化の起点とする年」とした。
 17年1月には会社の支柱となる新たな理念を制定し、その理念のもと、誇りをもって正しく、仕事をしていくことを約束した。機能別の新組織も編成した。また、将来を見据え、持続的成長を目指すため、あるべき姿を描いた「中計17」を策定し、現在この中計の達成に向けた取り組みを進めている。さらに、17年5月には、伊丹に本社機能を移転。創業のゆかりの地である伊丹で、緊密なコミュニケーションと、スピディーな判断を持ち味として、従来以上に付加価値を生み出していけるよう、社内で連携を強化した。
 そのほか、硬質ウレタン事業や化工品事業は、事業の成長や発展を目的に譲渡。17年はものごとに取り組んでいくための新しい軸となるものを組み立て「新たな始まりの年」として、位置付けた年でもあった。
 18年からは、タイヤと自動車部品といったモビリティ分野に関わるビジネスを事業経営の中核に据えた新たな経営体制に生まれ変わった。これまで整えてきた、新しい器のなかに、それらにふさわしい、本物の中身を作っていこうと従業員に呼びかけた。当社の開発したエアレスタイヤのノアイアや進化した技術を社会に披露した。
 また、次世代モビリティ社会を見据えた様々な技術革新や三菱商事との資本業務提携の締結など、18年は「本物の中身づくりの年」だった。この3年間は、74年の歴史の中では、考えられなかったような大きな変革を行ってきた。また、現在もその途上にいる段階だ。

◆グローバルの生産増強について

 今後のグローバルタイヤ需要に対応していく体制の準備を進めている。
 まずは、北米タイヤ工場では第5期能力増強の着手を開始。19年4月生産開始に向け、18年2月より新工場棟の建設を着工した。増強内容は第1段階として、年産120万本としている。また、マレーシアタイヤ工場における第2期能力増強にも着手した。こちらは19年10月の生産開始に向け、18年8月より新工場棟の建設を開始し、増強内容は第1段階として、年240万本を計画している。

来年を第2の創業期と語る清水社長◆三菱商事との資本業務提携について

 11月に結んだ三菱商事との資本業務提携ついては、三菱商事グループのリソースを積極的に活用していく。また、戦略的に事業の拡張を図るとともに、様々な基盤をさらに厚くし、強固にしていくことが重要だと捉えている。
 当社はSUV(スポーツタイプ多目的車)・ピックアップトラック向け大口径タイヤは、米国で40%の高いシェアを占めている。今回の提携で販売力を新たに取り込み、米国以外の欧州、中近東、アジアなどの販路改革や営業強化に乗り出したい。そのために、三菱商事のネットワークを活用していく。
 さらに、三菱商事に対する第三者割当増資で約504億円を調達し、そのうち新生産拠点の建設には約330億円を充てる計画だ。今後、新しい生産拠点については、欧州がひとつの候補地として検討できるのではないか。三菱商事とは19年4月以降に、新体制で資本業務提携の内容を詰めた形で展開していく方針だ。

◆組織改正・人事異動について

 経営基盤の強化に向けた「本社機能の強化」、事業経営の推進に向けた「モノづくり力の強化」、「販売機能の強化」を柱に組織改正し、人材を配置した。19年3月28日の人事異動では、会長職を3年ぶりに復活させ、三菱商事から山田保裕常勤顧問が就く人事も発表した。会長職を復活させたのは、取締役会議長を担ってもらい、ガバナンスの強化を図っていくことを表している。

◆近況について

 18年は点数をつけるとしたら、80点。引き続きアメリカは好調に推移しているが、お客様から受注を頂いているにもかかわらず、出荷できない状態があった。この対策として、19年4月に北米タイヤ工場、10月にマレーシア工場の能力増強が完了することで対応していく。
 自動車部品については、想定よりも厳しい環境下だった。19年は赤字幅をできるだけ縮小していきたい。中計17の後半である19年と20年には、海外拠点の増産対応を速やかに実施し、さらに増産を行うこと目指していく。

◆社名変更について

 1月1日に「TOYO TIRE株式会社」に社名変更した。19年は「第2の創業期」と位置づけ、今回の社名変更は、タイヤや自動車用部品というモビリティビジネスを中核に添え、グローバルにTOYO TIREを本物のブランドにしていく。その覚悟を社名に込めたものだ。

アングル 

 清水社長は「社名にタイヤと掲げるメーカーは国内では当社だけ。この事業に携わる誇りと責任を持ち、モビリティ社会に貢献しつづける決意を社内外に宣言するものだ」と社名変更に込めた想いを語った。

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