伝動ベルト特集 一般産業用は好調推移 自動車用は海外が堅調

2018年11月30日

ゴムタイムス社

 伝動ベルトは自動車のエンジンを始め、一般産業用機械や精密機械、OA機器などで動力や回転を伝達する役割を担っている。伝動ベルトを大別すると、摩擦力を利用して力を伝える摩擦伝動ベルトと、ベルトの歯とプーリの歯がしっかり噛み合って力を伝える噛み合い伝動ベルトに分けられる。このうち、摩擦伝動ベルトはVベルト、Vリブドベルト、平ベルト、噛み合い伝動は歯付き(タイミングベルト)ベルトがある。

―用途別の需要動向
 用途別の状況を見ると、自動車用の国内については、ベルトを使用しないハイブリッド車の拡大やベルトメーカーによる海外生産シフトなどで、新車用需要は頭打ちだ。また、ベルトの長寿命化に伴い交換サイクルが延びており、補修用も需要は厳しい。

 一方、自動車用の海外は欧米や中国、アセアンなど主要地域の需要は堅調だ。アセアンでは、タイは自動車用の補機駆動用伝動ベルトが伸長、インドやベトナムではスクーター用の変速ベルトが増加している。その中、ベトナムではバンドー化学が新工場の稼働を今年5月から開始。旧工場を移転拡張した新工場は、スクーター用変速ベルトを中心に農機・産業機械向けのベルトを生産し、スクーターや農機需要の拡大へ対応していく。

 一般産業用は、国内では射出成形機や工作機械、半導体製造装置などが好調。また、人手不足を理由に工場の自動化・省人化投資が広がるなかで、産業用ロボット向けも伸びている。「射出成形機に比べるとロボットは1台あたりに使われるベルトの本数は少ないが、国内ロボットメーカーは製品開発に旺盛で今後も需要拡大が見込める分野」(メーカー営業担当者)という。 

 このほか、監視カメラや医療関係でも伝動ベルトの需要拡大が見込まれており、メーカー各社はこれら成長分野に向けたスペックイン活動に力を入れている。
また、海外の一般産業用では、米国は民間設備投資の増加で販売が増加している。中国は射出成形機向けの好調が続いている上、農機向けも一時期の低迷から回復しつつある。アセアンについても農機向けを中心に販売は順調だ。

―今後の見通し
 今後の伝動ベルト市場に関しては、自動車用は電動化でベルトの需要は厳しいとみられる。ただ、一概にはそうとは言えず、日本ではエンジン付きのオートテンショナの採用が増えている。また、海外では「油中タイミングベルト」が欧州の自動車メーカーで採用され始めており、欧州や中国自動車メーカーの動向次第では、油中タイミングベルトの採用が急速に拡大する可能性もある。

 また、一般産業用でこれまで活況を呈してきた射出成型機や工作機械向けは、ここにきて中国向けで受注に陰りが見え始めている。とはいえ、「今後は実需に近づいていく」(同)とし、一般産業用の国内需要は大きな落ち込みはないというのがベルト各社共通の見方となっている。

◇伝動ベルトの生産量
 日本ベルト工業会の統計によると、2018年1~9月の伝動ベルト合計生産量は8646tで前年同期比3%減となった。内訳は内需が7530tで同3%減、輸出は1116tで同8%減となり、内需・輸出とも前年同期を下回っている。

 品種別の生産状況をみると、歯付ベルトの内需が1029tで同3%減、輸出は379tで同横ばいとなり、歯付ベルト合計は1408tで同2%減。V・ファンベルトは内需が5981tで同3%減、輸出は521tで同20%減となり、合計では6502tで同5%減。その他ベルトは内需が520tで同5%増、輸出が216tで同18%増となり、合計は736tで同9%増となっている。

 

 

 

 

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