住友ゴム トルコ工場が順調に拡大 欧州シェア5%目指す

2018年10月25日

ゴムタイムス社

 

トルコ工場全景

トルコ工場全景

 住友ゴム工業は10月5日、2015年に新設されたトルコの乗用車用ラジアルタイヤ・ライトトラックタイヤ工場を報道陣に公開した。トルコ工場は2015年に稼働を開始後、主に欧州向けの輸出拠点として順調に拡大しており、欧州市場で販売拡大を図るためには欠かせない重要な拠点。2018年9月における生産能力は日産1万6千本だが、2年後の2020年には日産3万本を計画しており、現在段階的に能増を進めている。欧州だけでなく、今後更なる拡大が見こまれる中東・北アフリカ・ロシアなど周辺市場への供給拠点としても期待されているだけでなく、トルコ国内市場についても、継続的な車両増加によるタイヤ需要の拡大などにより、新車用、市販用共に今後の拡大が見込まれている。トルコ工場の稼働により、トルコおよび周辺市場への供給体制を強化し、グローバルでのタイヤ事業の一層の拡大に取り組んでいく方針だ。

黒田豊取締役常務執行役員

黒田豊取締役常務執行役員

 工場見学会で欧州・アフリカ事業の説明を行った欧州・アフリカ本部長の黒田豊取締役常務執行役員は、「今年2月に中期的な目標として、2020年に売上高1兆1000億円、事業利益1300億円をかかげており、その7割以上を海外で生み出すこととしている。海外の中でも、特に欧米事業の拡大は重要な課題となっており、トルコ工場は欧州市場への製品供給基地という位置づけから、非常に重要な拠点である」とトルコ工場を紹介した。

 欧州・アフリカ事業については、「欧州・アフリカ本部組織は2016年に発足、本部組織の傘下企業数は7社あり、販売対応国数は110ヵ国、従業員数は5300名にのぼる」と概略を説明、同地域のタイヤ販売数については「2017年の販売本数は、2010年比で3倍強まで販売を伸長させており、さらに2022年には17年実績の1・6倍を目指していく」と方針を示した。  また、黒田本部長は域内トピックスとして、欧州テクニカルセンターの稼働、英国ミッチェルディーバー社の買収、南アフリカ工場の生産開始の3つを挙げた。

 欧州テクニカルセンターは2017年8月より稼働を開始。欧州・アフリカ市場のニーズに沿った商品開発体制の強化や欧州カーメーカーへのアプローチを強化していく。

 また、同年英タイヤ販売会社であるミッチェルディーバー社を買収。同社は約6000以上の小売店、自動車修理工場などのタイヤ卸しを行うだけでなく、タイヤ小売チェーン「PROTYRE」など100店以上の直営店を展開している。

 買収前100店舗だった直営店は、2018年末には152店舗にまで増加。これに伴いタイヤ販売本数も増加しており、同社品のシェア拡大も進んでいる。

 南アフリカ工場では、TB用タイヤの生産を2018年7月より開始、現地生産化により、安定供給と為替リスクの回避を図り、アフリカ市場における競争力の向上につなげていく方針だ。

 欧州地域のタイヤ販売については、「欧州地域は欧州アフリカ地域のタイヤ販売の半数を占めるだけでなく、最先端の技術が要求されることや他地域への影響力が非常に強いことから重要視している」とし、「トルコ工場の稼働、ミッチェルディーバー社の買収などの大きな投資に加え、今後は欧州カーメーカーのプレミアムモデルへの新車装着を推進する他、取扱い販売店を1・5倍増加させるなどの施策を通じて、2022年までに欧州でのシェア5%獲得を目指し、これにより存在価値を十分にアピールしていきたい」と意欲を示した。

◆トルコ工場をフラッグシップ工場に

 工場見学の後には質疑応答が行われた。

トルコ工場の建屋

トルコ工場の建屋

 トルコ工場の今後について

 黒田常務 トルコ工場は欧州に向けて非常に高性能なタイヤを生産する工場だと捉えている。EVなど新技術に対応するための最新鋭の製造設備は、おそらくこのトルコ工場に導入されることになると思う。実際、ハイシリカを高効率で練れる最新のミキサーを住友ゴムグループで、初めてトルコ工場に導入した。

 最先端のタイヤ技術開発をしながら、工場を拡大していき、グループ全体の製造技術をリードする工場を目指し、最終的には白河工場と並び、ここトルコ工場もフラッグシップ工場と呼ばれるようにしていきたい。

◆工場施設など見学 10月に安全体感棟新設

 トルコ工場の概要説明の後に、工場設備を見学した。まずは、昨年10月に新設された安全体感棟を見学。同施設は、安全に対する基本的な事象を学ぶ目的で設立された。ここでは合計24台のシュミレーション機器を使用し、年2回従業員全員が参加し、災害のリスクを学んでいる。台車や回転設備、ベルトコンベアなど実際の機器を使用して、リスクを体感することが可能となっている。

安全体感棟に設置された体感器具

安全体感棟に設置された体感器具

 安全課課長によると、「ここで教育を始めた17年から目に見える形で災害は減少している」とのこと。地域の大学、工業専門学生にも施設を開放することで、地域社会にも貢献している。

 その後、タイヤの製造工程である①混合工程②材料・成形工程③加硫工程④仕上工程などを順次見学した。

 最後に、モデル工場として2018年に排水リサイクル設備の試運転活動を既に実施している水処理棟を見学。同施設では、浄水、排水を浄化し自然に戻す、生活排水を浄水し自然に戻す、排水を浄化しリサイクルをするという4つ機能を有している。これらの設備により、工業廃棄水ゼロ、取水量50%減を目指していく。

◆トルコ国内100万本販売へ

 トルコ工場の概要説明は住友ラバー・アコーの西野正頁社長が行った。
 トルコ工場の設立は2013年2月。主に欧州向けの輸出拠点として、乗用車用ラジアルタイヤおよびライトトラック用タイヤを2015年から生産を開始した。乗用車用タイヤでは冬タイヤの生産比率が高いのが特徴。欧州にはファルケンタイヤを、ロシアにはダンロップタイヤを、トルコ国内では両方を販売している。

西野正頁住友ラバー・アコ―社長

西野正頁住友ラバー・アコ―社長

 トルコ工場ではオールシーズンタイヤを始め、ウィンタータイヤ、スパイクタイヤ、サマータイヤでは、スタンダードタイヤからハイパフォーマンスタイヤまで幅広く生産をしている。

 投資額は約5億USドル(継続中)、敷地面積は100万㎡と広大で、将来的な増産にも備えている。

 生産設備には、高性能の追求とともに、材料工程と成形工程を一体化させ、自動化・小型化した生産方式「太陽」を導入。多品種、少量生産に対応し、初期投資を抑制した。

 同社では一つの建屋をユニットと呼んでおり、現在5ユニットまでが稼働を開始している。2019~20年には第8ユニットまで増設する予定だ。

 生産能力は、2018年9月で日産1万6千本、これを2020年には日産3万本まで引き上げる方針。従業員についても、同様に1600人から2000人に増員する。

 販売構成は85%が欧州地域を中心とした各国への輸出。10%がトルコ国内市販用、残り5%が国内新車用となる。

 西野社長はトルコ国内の販売について「2年前にタイヤに関して大きな関税をかけるようになったので、現在輸入して販売することはまず不可能だ。一方、国内に工場を有する当社の存在感が増してきている」とし、「徐々に販売を拡大し、2022年には100万本の販売を目指す」方針を示した。

 また、材料の現地調達率については、「アジアからの調達は納期が長くなるが、コストや性能の点で有利な材料も多い。一方、トルコ国内調達は短納期であるが、原材料メーカーの数、材料の種類共に限られる問題もある」とし、「そこで、今後は2週間程度と短納期の欧州から、安価かつ要求性能を満たす、欧州産材料の評価、導入を進めていく」とし、現地調達率を高めていくと説明した。

◆トルコ工場の概要

会社名:Sumitomo Rubber AKO Lastik Sanayi ve Ticaret A.S.(SAT)
所在地:トルコ共和国チャンクル県ヤクンケント工業団地内
設  立:2013年2月 事業内容:乗用車用ラジアルタイヤの製造・販売 総投資額:約5億USドル(継続中)
資本金: 4億USドル 生産開始:2015年6月 敷地面積:100万㎡

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