日本ミシュラン リトレッド工場を公開 新製品の製造工程を見学

2018年08月02日

ゴムタイムス社

 日本ミシュランタイヤは7月26日、トラック・バス用タイヤ「ミシュランX One」のリトレッドタイヤを10月から販売するのを前に、プレス向けの工場見学会を新潟県で開催した。

 ミシュランX Oneは、トラック後輪の2本のタイヤを1本に出来るワイドシングルタイヤで、駆動軸にも使えるシングルタイヤが同社製品のみとあって注目を集めており、同社はこれをリトレッドして再生した2種の新製品を10月から販売し、更なる差別化を進める。

 新発売の再生タイヤは、全天候向けの「ミシュランX One XDN2 リトレッド」と、トレーラー向けの「ミシュランX One マルチエナジーT リトレッド」の2種で、新品の6割程度の実売価格になると見られ、新品の約90%のロングライフ性能が得られることから、運送業者の経費削減に寄与すると期待される。

 この普及に向け同社は、同社製リトレッドタイヤを国内で唯一製造している糸魚川市のトーヨーリトレッドの工場を特別に報道陣に公開し、製造工程を説明した。

 まず、全国から集まった使用済みタイヤに付着している泥やワックスを水で洗浄し、55℃の乾燥室で4時間乾燥させてから、受け入れ検査を行う。初めに釘穴検査器で高電圧を流し、貫通傷の有無を確認する。ゴムは絶縁物だが、傷があるとバチバチと音がする。

 続いて、シアログラフィー検査機にタイヤを入れ、超音波ウルトラソニックで傷や部材間の剥離がないか調べる。1本当たり約3分を要するこの検査は、トレッド面を削るバフ工程の前と後に2度行われ、傷があるとコンピュータ画像に黒い影が写っていた。

 工場の隅には、内部剥離や大きな傷、サイドのカーカスの破損などがあり再生不能と分別されたタイヤが積まれていた。1日に30~40本が再生不能と認定される。

 次に、目視検査を経て、プレキュア方式専用のバフ・マシンで、トレッド面をサイズやパターンに応じた設定値に削る。同社のリトレッドタイヤは、予め溝が入ったトレッドゴムを貼り付けるプレキュア方式で全て製造し、小ロットや様々なパターンへの対応力を高めている。タイヤを手動でセットし、コンピューター制御でトレッド面を平らに削っていく。

 そして、スカイブで傷口を削りプラグやパッチで修理し、削った面に酸化防止のためセメントを塗り、溶けた合成ゴムで削った部分を埋めるフィリングを行ってから、台タイヤにトレッドゴムを巻き付けるビルディングの工程に移る。ビルディング機でクッションラバーを挟み込みながらトレッドゴムを巻き付け、プラスチック製のホッチキスで止め、サイドの余分なクッションラバーを手作業で切り取っていく。熟練工の高度な技術が最も発揮される場面だ。

 この後、加硫の工程に移り、エンベロープと呼ばれる黒い袋にタイヤを入れ、空気をバキュームして密閉し、チャンバーと呼ばれる加硫器に入れる。同工場に3基あるチャンバーは、1基で22本を加硫可能で、1日66本を生産できる。袋詰めのタイヤを入れ、115℃で0・6メガパスカルの圧をかけ、3時間40分経過後に取り出し、袋を開けると、先ほど巻き付けたトレッドが台タイヤと見事に一体化していた。

 最後に加圧試験と最終検査を行い、受け入れ時の傷の見落としや、加硫後の異常な膨らみ、接着ゴムの流れ過ぎがないか点検し、仕上げ用の塗料を塗って、製品が完成する。この塗料により、新品に近い色合いとなる。

 見学の後、同社B2Bタイヤ事業部の高橋敬明常務執行役員が質疑に応じ、運送業者は人件費や燃料費はなかなか変えられないが、「タイヤのコストを見直す動きは増えると思う。リトレッド事業は今後も拡大すると見ている」と期待を込めた。

 ミシュランX Oneによる大型車のシングルタイヤ化では、1車軸当たり約100kgの軽量化を達成でき、今年ダンプトレーラーに新車装着した業者の例では、アルミホイルの装着と合わせ1台当たり480kgの軽量化を実現し、その分、積載量を増やすことが出来たという。

 今秋発売される全天候向けのX One XDN2 リトレッドは、耐摩耗性能に優れたトレッド層とケーシング内部の温度を最小限に抑える最下層の2種類のコンパウンドを採用し、ダブルウェーブサイプによりトラクションと耐偏摩耗性を、ジグザグ・グルーブ・ウォールによりエッジ効果と排水性・排雪性を向上させている。

 また、トレーラー向けのX One マルチエナジーT リトレッドは、トレーラーに最適なパターンを採用し、ねじれに強いウイングトレッドと石噛み防止グルーブにより耐久性を、サイプとパターンの最適化により耐偏摩耗性を向上させ、コンパウンドの改良により転がり抵抗を低減させ省燃費性能を高めている。

 

 

 

 

 

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