【新年インタビュー】日本ゼオン 田中公章社長

2018年01月12日

ゴムタイムス社

 日本ゼオンの18年3月期中間決算は、売上高・経常利益・純利益が過去最高となった。この業績を受け、今年はどのように事業を展開していくのか。今期が初年度の中期経営計画「SZ―20」フェーズⅢの現況も含め、田中公章社長に訊いた。

◆17年を振り返って
 業績予想を上方修正したように、非常にいい1年だったと思う。しかし、それは自分たちの力だけで実現できたのではなく、原油やブタジエン、為替といった外部要因が良く、たまたまそうなったと謙虚に受け止めている。

◆フェーズⅢの現況は
 中心は風土改革となる。今期はその1年目ということで、社内で論文と「一言提言」を募集したところ、相当数の応募があった。特に論文では改革や改善に関する意見が多数あり、多くの社員が社内の状況をきちんと見ていることを知った。また、真摯な気持で論文と一言提言を書いてくれた社員がたくさんいることにも感心した。
 一方、昨年8月に「ダイバーシティ宣言」をトップメッセージとして発信し、課長クラスの女性社員と面談を行った。そこで気付いたのは、彼女たちの意識が非常に高いことだ。
 論文についても、優れた論文を20本ほど選び、表彰することになっているが、女性あるいは女性グループが書いたものが多かった。ダイバーシティ宣言は社内でイノベーションを起こすことが目的だったが、風土を変える方法の1つだったと痛感している。

◆各事業の昨年の動向と今後の見通しは
 エラストマー事業のうち、SSBRは住友化学と事業統合した。今後はウェットグリップ性と低燃費性、耐摩耗性に優れたポリマーを作っていく上で、それぞれが持っているシリカ変性の特許をお互いに使えるよう、研究開発を進めていきたい。
 特殊ゴムについては、需要はかなりしっかりしてきており、今後も伸びていくと見ている。トウペを含めたアクリルゴム、NBR、それから水添NBR「ゼットポール」の3つが中心になる。
 高機能材料で特に昨年伸びたのは、リチウムイオン電池用バインダーだ。中国での自動車用電池部材向けが拡大しており、今年はさらに伸ばす。
 もう1つは光学フィルムで、モバイル用が大きく伸びた。4K・8Kの大型テレビ用も伸びつつある。これらのテレビは、当社のゼオノアフィルムがないとできないと言っても過言ではない。なぜなら、水を吸着しない、水を通さないというフィルムはゼオノアフィルムしかないからだ。有機ELになるとさらに水を嫌うため、より期待できるだろう。
 なお、半導体部材の新製品発表の予定もある。

◆18年の抱負を
 社員1人ひとりが成長を実感できるような取り組みを行っていきたい。
 また、論文や一言提言でコスト削減や製品開発、改善などに関する提案がたくさんあった。それを1つずつ課題として挙げ、解決につなげていく。それができれば、風土改革につながっていくだろう。

〈アングル〉
 日本ゼオンは健康経営を取り入れている。田中社長は自ら率先して取り組み、地下から17階の居室まで階段で上がったり、食事は必ず野菜から食べたりしているそうだ。その延長として、趣味のゴルフで自分の理想に近付ければと期待している。

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