年頭所感 日本自動車タイヤ協会 池田育嗣会長

2018年01月09日

ゴムタイムス社

 2018年の新春を迎え、謹んで新年のご挨拶を申し上げます。

 昨年は、今後の世界のあり様に多大な影響を与える様々な事象が錯綜した年だったのではないでしょうか。イスラム国の勢いは翳りを見せているものの、テロの脅威は世界全体ではむしろ増大しています。また特に日本にとっては、北朝鮮の最近の動きは安全保障上の大きな脅威となっています。

 経済的な側面からは、気候変動抑制に関する多国間合意であるパリ協定からのアメリカの離脱や北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉開始など、トランプ米大統領の就任からほぼ一年が経過し、既存の国際的な枠組みに捉われないアメリカの動きが見られはじめています。その一方で、アメリカの参加が見込まれない中での環太平洋パートナーシップ(TPP)協定の早期合意に向けた交渉の継続や日EU経済連携協定の大枠合意など、国際的な枠組みの重層的な深化を目指した取り組みも多く見られています。

 こうした中にあって、日本のタイヤ産業のグローバル化は着実に進展しています。いうまでもなくタイヤはグローバルな商品であり、これを製造、販売するタイヤ産業もまたグローバルな産業です。どのような国際環境下にあっても、人の安全にかかわるタイヤという価値ある商品の提供をとおして世界経済の発展に貢献するという我々の姿勢は不変です。この姿勢に基づき、事業活動を着実に進めていきたいと考えています。

 目を国内に転じれば、昨年の自動車タイヤ生産量は新ゴム消費量ベースで102万トン程度となります。これは一昨年と同程度の水準です。国内市場の成熟化と生産体制のグローバル化の結果であり、こうした状況は今後とも大きく変わることはないと考えています。しかしながらタイヤの生産や提供が日本の経済や社会に与える影響は依然として大きく、我々はその影響の大きさに見合う責任を果たして行く必要があると考えています。

 公益法人としての我々が取り組むべき活動は、従来と変わることはありません。その基軸は「安全」と「環境」です。安全対策につきましては、4月8日の「タイヤの日」を中心としたタイヤ点検の実施を通じ、空気圧管理の重要性や適正使用・整備の必要性に関する啓発をこれまで通り続けていきます。また冬道での安全走行確保に向け、冬用タイヤの装着の啓発に関しても従来以上に工夫を重ねて取り組んで参ります。

 環境対策につきましては、製販一体での廃タイヤ適正処理を推進するとともに、原状回復支援制度による地方自治体への支援を通じて、廃タイヤ不法投棄問題の解決に貢献していきたいと考えています。また、ラベリング制度の運用により低燃費タイヤの普及率は70%を超えています。引き続き同制度の運用、普及を図ることで、自動車走行時のCO2排出量の削減に貢献して参ります。さらに本年4月以降、国際基準に基づくタイヤの車外騒音、ウェット路面上の摩擦力及び転がり抵抗に係る規制が、新車装着タイヤに段階的に適用されることになっております。これら規制に適合した製品を供給することで、自動車の環境性能向上に貢献して参ります。

 国の内外を問わず、取り組むべき課題は山積しています。変化の中でも臆することなく、一歩一歩着実に歩みを進めて行く所存です。関係する皆様方の変わらぬご支援、ご鞭撻を、本年も宜しくお願い申し上げます。

 タイヤ産業に関わる全ての皆様方にとって本年が実りある年となりますことを祈念し、私の新年のご挨拶とさせていただきます。

池田育嗣会長

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