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十川ゴム 開発力強化で構造変化に対応

2017年10月27日

ゴムタイムス社

 企業特集シリーズ 十川ゴム

 生産性向上へ積極投資 「企業は人なり」人材育成に力

 十川ゴムの16年度の売上高はほぼ横ばい、経常利益は2桁増益となった。十川利男社長に前期を振り返ってもらいつつ、中国紹興十川ゴムの現況や設備投資、経営課題などについて聞いた。

十川利男社長

十川利男社長

 ◆16年度業績の総括を
 売上高は145億8300万円、前期比0・8%増だった。需要分野別では、医療機器用やガス産業用ホースが落ち込んだものの、自動車産業用や建設機械産業用などの分野でカバーし、売上は横ばいを確保した。

 自動車産業用では前期に引き続き北米向けが順調に推移。燃料ホース以外にゴムシート、型物の販売も増加した。建設機械では、建機メーカーが環境規制を強めており、環境対応の燃料ホースが好調だ。その他、船舶車両用では列車用ブレーキホース、食品機械産業用ではシリコーンホース・チューブが伸長した。

 一方、利益面では、原材料価格の上昇により厳しい局面にあるが、原価低減努力を行うことで、経常利益は2億5800万円、同14・1%増となった。

 ◆足元の状況と今期の需要見通しについて
 第1四半期は前年並みで推移した。半導体向けは前年に続いて好調。建機向けも依然として回復が続いている。このため、主に建機用ホースを製造する奈良工場は生産がタイトになっている。また、ゴムシートなどを製造する堺工場では、特殊なゴムシートを効率良く生産することが課題である。
 今期(17年度)の需要見通しは、自動車関係は部品構成の変化などにより厳しくなると見ている。ただし、燃料電池や電気自動車など新たな需要が見込まれる。建機では高温油領域に対応するホースが求められている。こうした産業構造の変化に対応すべく、今後もお客様の要望や現場状況にあった製品開発を行っていく。

 ◆中国紹興十川ゴムの現況は
 16年(1~12月期)の売上伸び率は121%と好調だ。為替変動に左右されない収益体質を目指し、紹興十川では3~4年前から中国国内での売上拡大を進めている。その結果、売上全体に占める中国国内の割合は16年が56%(15年40%)、日本向けが44%(60%)と、中国国内の売上が日本向けを逆転した。

 17年も中国国内は堅調に推移している。このため、金型成形品、建機関係のホースを製造する工場は現在、フル生産の状態だ。17年もまずまずの業績が残せるだろう。

 ◆設備投資について
 生産拠点では、生産性向上を目的とした製造設備を導入するとともに、省人化、省力化に向けたラインの整備も進めている。

 さらに、大地震に備えるために、今年7月から年内にかけて本社社屋の耐震補強工事を行っている。今期は建物や設備に対する投資の他、耐震補強やコンピューター関連の投資も加わることから、設備投資額は前期(9億268700万円)を上回ると見ている。

 ◆経営課題への対応は
 最も大きな課題を挙げると、人材育成になる。当社は「企業は人なり」の考えのもと、今後も人材育成に力を注いでいきたい。若手従業員や女性従業員、ベテラン従業員も頑張りながら、成長を目指したい。


 

 ■高機能ホースに注力

サンクイックホース ホース事業では、油圧機器産業用や土木・建設機械産業用、船舶・車両産業用、食品機械産業用を注力分野と捉えている。

 ただ、これら分野のニーズも時代とともに移り変わることから、同社は需要先の変化に対応した、新製品の確保や将来を見越した研究活動を推進することが重要と考えている。

 

 製品開発では、土木関係の「サンクイックホース」でラインナップを拡充し、耐摩耗用シリーズで75A(4MPa)を追加した。大都市部での掘削工事の大深度化に対応するため、75Aはコンパクトな曲げ性能や配管の大口径化、吐出圧力の上昇に対応した。また、150Aや200Aと同様、75Aも金具内筒拡大方式で設計し、掘削工事で求められる工期短縮にも対応している。

 「高温油用ホースHKシリーズ」は、建設機械、産業エンジンにおけるオイルリモート配管及びオイルクーラー配管での100℃以上の高温油領域(最高150℃)に対応するホースで、油圧ハイドロリックホースシリーズとしてラインナップ拡充を図った。

 その他、家庭用燃料電池やEV関連部品、耐熱ゴム・樹脂部品など今後需要拡大が見込まれる分野では、コストを意識しながら適切な材料・形状の提案を行っていく。


 

 ■特殊品開発推進へ

塩ビ製放射線遮蔽材 シート事業では、耐久性や耐電性、耐熱性などバラエティ豊富な製品群を取りそろえるほか、近年はエコマーク認定製品といった環境対応製品の開発も推進している。

 今期は、さらに製品競争力を持つ特殊品の情報収集や新規開発に力を入れている。具体的には、すでに開発済の放射線遮蔽シートや放熱シート、熱膨張シートなどの拡販を進めている。

 放射線遮蔽材では、放射線遮蔽効果のある硫酸バリウムを同社独自の配合設計により高充填させることで開発した。従来のゴム素材に加え、溶着や接着が可能な素材として塩ビ素材のシート状製品をラインアップに加えた。

 また、放熱シートはフィラーなどの配合技術により熱伝導率を飛躍的に高めたもので、電子機器などの小型化に伴い注目を集めている。


 

 機能製品3種を紹介 西部ゴム商組の商品説明会で

放射線遮蔽ゴムシート

放射線遮蔽ゴムシート

 十川ゴムは9月22日、「要素技術を活かした機能製品と開発の取り組み」と題して放熱ゴム、低硬度フッ素ゴム、放射線遮蔽ゴムシートなどの商品説明を西部ゴム商組主催の第46回商品説明会で行った。

 十川ゴムからは須井滋大阪支社次長や稲垣和則執行役員・研究開発部部長らがあいさつをしたあと、研究開発部開発課の三浦孝博氏が放熱ゴムや低硬度フッ素ゴム、放射線遮蔽ゴム・樹脂などの機能材料を説明。また、井田剛史課長が研究開発部が取り組んでいる構造設計技術などを紹介した。

 放熱ゴムについては、近年電子機器などの小型化に着目し開発を進めた。一般的にゴムは熱を通しにくいが、開発した放熱ゴムは独自の配合技術によりゴム弾性を保持したまま、熱伝導率と電気特性を兼ね備えたゴム材料になっている。三浦氏は放熱ゴムの放熱実験を行った事例をいくつか紹介し、放熱効果の検証を解説した。

 次いで、同社が開発した低硬度フッ素ゴムは、通常のフッ素ゴムの硬さが「A70」程度に対し、「A40」程度の硬さを実現した。特長はシール性能が向上したこと。そのほかパッキン締付け時などの反力を低減しつつ、施工性が向上したことも特長だ。

 放射線遮蔽ゴム・樹脂は、放射線遮蔽効果のある硫酸バリウムを同社独自の配合設計により高充填させることによって開発された放射線遮蔽材。同製品は従来の常識では考えられないような量の硫酸バリウム(重量比:70%以上)をゴムの中に配合し、ゴム本来のもつ柔軟性を保持することに成功した。同製品を使用してゴムシートをはじめ、ゴムマット、ゴムチューブ、ゴム金型製品、ゴム押出品、樹脂シートまで幅広い製法での提供ができることが特長ともいえる。

 全ての機能材料の説明が終了後、井田課長が研究開発部の取り組みでデジタルエンジニアリングによる開発アプローチを紹介。同社の解析(CAE)とモックアップを駆使した評価により、迅速かつ最適な構造設計を行っていることをPRした。また、モックアップは3Dプリンターで作製した3Dサンプルだけではなく、切削造型機との組み合わせにより、簡易金型を早く、安価に作製できるため、ゴム金型製品による評価を行えることも提案した。


 

 十川ゴムの17年3月期 純利益約8割増に

 17年3月期を振り返ると、自動車産業は前期に続き北米向けが好調に推移したが、ガス産業用や医療機器産業用などが伸び悩み、全体は決して好調とは言えない状況にあった。

 そうした環境下で、売上高は前年実績を上回り、利益面では生産設備の省人化・省力化など原価低減に努めたことで増益となった。

 セグメント別では、ホース類のゴムホースは土木・建設機械産業用の燃料ホースなどが大きく増加したのに対し、一般産業用のホースなどが減少した。 樹脂ホースは食品機械用の給水ホースなどが増加したが、その他産業用が減少した。ホース類の売上高は59億600万円、同1・3%減。

 ゴム工業用品類は前期並み。押出成形品は、自動車産業用の燃料供給製品などが増加した。シートはフッ素シートの拡販などで増収。工業用品類合計の売上高は77億5000万円、同2・6%増。


 

 「三方よし」を経営理念に 自分よし、相手よし、他人よし

 同社は創業時より、自己を活かし、相手を良くし、多くの第三者に益をもたらす「三方よし」の精神を経営理念とした事業活動を展開してきた。

 同社では、この「三方よし」という経営理念は、過去も、現在も、そして未来においても変わることなく大切に継承されるものだとしている。

 「三方よし」の核となるのは『人』である。同社は社内、社外を問わず、きめ細やかな心配りによる心通うコミュニケーションを行い、不変の想いである「人を大切に―」を実践している。

 また、経営環境が激しく変化する状況において、顧客に選ばれる存在価値のある企業であることが、永続できる大きな条件であると考えている。

 同社は、顧客から求められるものをいち早く捉え、情報を共有化することで、スピーディーに対応する体制への変革を図っていく。

《沿革》
1925(大正14年5月)大阪市浪速区大国町に十川ゴム製造所を創立
1929(昭和4年7月)合名会社十川ゴム製造所を設立、大阪市西区に営業所を開設
1943(昭和18年7月)徳島工場新設(徳島県阿波郡阿波町)
1949(昭和24年4月)東京支店を開設(従来出張所)
1956(昭和31年9月)十川ゴム株式会社設立
1959(昭和34年4月)合名会社解散し株式会社十川ゴム製造所を設立
1961(昭和36年9月)堺工場新設(大阪府堺市上之)
1966(昭和41年4月)日本工業ゴム株式会社設立
1967(昭和42年4月)奈良工場新設(奈良県五條市三在町)
1970(昭和45年5月)本社を大阪市西区立売堀1丁目に移転
1987(昭和62年3月)北陸営業所を開設
1990(平成2年3月)東京支社を開設(従来支店)、福岡支店を開設(従来出張所)、札幌営業所を開設(従来出張所)
1995(平成7年4月)日本工業ゴム株式会社、十川ゴム株式会社と合併し、新商号を株式会社十川ゴムとして発足。本社を大阪市西区南堀江4丁目に移転
2000(平成12年5月)ISO9001認証取得
2005(平成17年4月)中国浙江省に紹興十川橡有限公司を設立
2012(平成24年11月)ISO14001全社統合認証取得
2014(平成26年10月)四国(徳島)、北九州(小倉)に出張所を開設

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