東洋ゴム工業 新エアレスタイヤ「ノアイア」を発表

2017年09月14日

ゴムタイムス社

 東洋ゴム工業は9月8日、空気充填不要の近未来型エアレスコンセプトタイヤ「noair(ノアイア)」を開発したと発表し、同日ホテル阪急エキスポパークでコンセプトタイヤ開発説明会を開催した。
 また、大阪府吹田市の万博記念公園で、実際に市販車に装着させての試乗会も実施した。

新型エアレスタイヤ「ノアイア]

新型エアレスタイヤ「ノアイア]

 同説明会では、技術統括部門技術第一本部の守屋学本部長、同中央研究所の下村哲生所長、同タイヤ先行開発部の大石克敏部長らが出席。
 ノアイアは、内芯側を高剛性の特殊な樹脂スポークで構成し、荷重を支持する力を確保するとともに、トレッド部分にはゴム部材を用いて、「走る、曲がる、止まる」というタイヤの基本性能を成立させている。また、スポークとトレッドゴムの間には樹脂で構成する外径リングの内部をCFRP(カーボン繊維強化プラスチック)で補強。スポークにかかる荷重を低減している。

ノアイアの概要を説明する守屋本部長

ノアイアの概要を説明する守屋本部長

 守屋本部長が現在の空気入りタイヤの基本的な機能について説明した上で、進化するモビリティ社会に向けて時代の変化の先を捉えるべく、06年からエアレスタイヤの研究に取り組み、第5世代にわたり試作モデルを開発したと解説。同社は12年には横浜で開催された「人とくるまのテクノロジー展」で第5世代の試作を展示した。今回発表となったノアイアは、抜本的にタイヤ構造を変革し、課題の改善を進めることで、複数の性能指標を飛躍的に向上させるとともに、実用可能なレベルまでの走行が可能になったという。
 守屋本部長によると、ノアイアの特長はスポーク構造だという。過去の試作モデルでは「楕円形のスポーク構造」で荷重を支持していたが、ノアイアではタイヤ幅の奥側と手前側を交互に交差させる「X字型スポーク構造」を採用。独自の支持構造形態で耐久力を向上させた。また、スポーク本数を過去モデルより倍増させ100ピッチとした。この結果、接地時に発生するスポークによる打撃音を緩和させ、これまで以上の静粛性を実現した。

スポークにX字型スポーク構造を採用。

スポークにX字型スポーク構造を採用。

 また、ノアイアは独自の材料設計基盤技術「ナノバランステクノロジー」によって配合した、低燃費トレッドゴムを採用。耐久力については、同社市販製品での法規相当条件を大幅にクリアしたほか、転がり抵抗値も市販製品に比べ25%の良化、ウェット制動距離は4%短縮するなど、優れた環境性能と安全性能を達成している。また車外騒音についても過去の試作モデルから大幅に改善したとし、「車内音、乗り心地において課題が残るが、操縦安定性や車外騒音に飛躍的な改善ができた。当社の市販空気入りタイヤに近づく進化だ」(守谷本部長)と述べている。
 さらに、ノアイアのスポークをカラー化することで、マーケット訴求においても幅を広げていきたいとしている。
 守屋本部長は、今後は多方面から様々な知見を獲得するともに、さらなるイノベーションに取り組みモビリティ社会の役立つタイヤの形を追求しいてくという考えを示し、「実用化はまだ未定だが乗用車に装着して走行できるレベルまで達したことは、その入り口に立つことができた」と力を込めた。

FOMM「超小型電気自動車」に装着したノアイア

FOMM「超小型電気自動車」に装着したノアイア

 試乗会では、ノアイアを装着したスズキ「アルト」とFOMM「超小型電気自動車」(インホイールモーター)の試乗。ノアイアの性能や実用化に向けた課題を伝えた。
 超小型電気自動車では、時速20キロメートル程度の低速でも、空気入りタイヤにはない車内音のゴロゴロという音が聞こえたものの、カーブでのふらつきは少なく、安定して曲がることができた。
また時速35キロメートル程度からの急ブレーキでも、しっかりと止まれる制動性能も発揮した。

スズキ「アルト」で装着したノアイア

スズキ「アルト」で装着したノアイア

 一方、一般市販車のアルトでは、超小型電気自動車よりも車内音のゴロゴロした音は静かで、タイヤと地面の表面に密着感があった。同乗したドライバーは「走る、曲がる、止まるは確立できた。まだ課題はあるが、実際に装着し走ることができたことが重要だ」と述べていた。

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