熱可塑性エラストマーについて|TPEの基礎知識

2017年08月09日

ゴムタイムス社

熱可塑性エラストマー(TPE)について

 熱を加えると軟化して流動性を示し、冷却すればゴム状に戻る性質を持つ熱可塑性エラストマー(TPE)は リサイクル性、軽量化、成形加工性に優れることから従来より架橋ゴムはじめ、塩ビ製品からの代替えが進んできた。

 TPEの主要製品にはオレフィン系(TPO)、スチレン系(TPS)、ポリウレタン系(TPU)があり、市場規模も大きく、自動車用用途を中心に、ベルト、ホース、工業用分野で需要の裾野を広げている。

 このほか、軟質PVCとは別に、ゴムライクな弾性体材料として、特殊PVCをべースとした塩ビ系(TPVC)、柔軟性が高く、消音性、低温特性 に優れるゴムとエンプラの中間的な性質を有するポリアミド系(PAE、TPAE)、硬質樹脂との熱融着性に優れ、耐摩耗性にも優れるポリエステル系(TPEE)、アクリルゴムとポリプロピレン、ポリエステルを主成分として構成されるアクリル系エラストマーなどがある。

 脱PVCの加速から各自動車メーカーへの自動車内外装材に採用が進んできたオレフィン系(TPO)については、汎用ゴムでの代替用途から特殊ゴム領域への用途展開を進めており、コンパウンドメーカーの自動車用分野での耐熱性、耐油性向上を図った新グレード開発も活発化している。

 スチレン系(TPS)にはSBS、SIS、SEBS、SEPSなどの種類があり、SBSはポリマー改質剤、アスファルト舗装材改質向けが多く、SISは粘着剤を中心に、SEBSはエンジニアリング樹脂改質剤、相溶化剤に、自動車用部品、玩具、雑貨、医療用向けでのコンパウンド需要も根強い。

 これらTPEの国内需要は国内自動車生産にスライドし、やや伸び悩んでいるが、海外事業については中国、タイでのアジア市場はじめ米国市場、中南米での自動車生産の拡大でオレフィン系、スチレン系熱可塑性エラストマーの自動車用部品での需要は拡大している。

オレフィン系(TPO)
TPOは、脱PVCの加速から各自動車メーカーへの採用が進んできた。比重が軽い点や、リサイクル性、材料の統合(単一化)などから、自動車内外装材関係に採用が増加している。

三菱化学、三井化学、住友化学は、海外の自動車部材向けのコンパウンド事業を拡大し、国際競争力の強化を目指して、海外事業を拡大・強化するため大きな投資を行ってきている。PP樹脂メーカーは、自社製品の拡大を図るために国内外で大規模コンパウンドメーカーを設立し、現地に即応する供給体制を整えている。

スチレン系(TPS)
TPSにはSBS、SIS、SEBS、SEPSなどの種類があり、SBSはポリマー改質剤、アスファルト舗装材改質向けが多く、SISは粘着剤を中心に、SEBSはエンジニアリング樹脂改質剤、相溶化剤として多く使用される。

TPS参入メーカーにおいて、ブロックポリマー型で生産するメーカーは、クレイトンポリマージャパン、旭化成ケミカルズ、クラレのスチレンメーカーであり、ブレンド型メーカーは日本ゼオン、JSR、三菱化学、リケンテクノス、アロン化成などが市場参入している。

塩ビ系(TPVC)
軟質PVCとは別に、ゴムライクな弾性体材料として、特殊PVCをべースとしたエラストマーは、主に自動車用内装材向けで採用の増加が見られる。表皮材向けにパウダースラッシュ成形に部材が増加するなど、特殊乗用車向けではあるが、徐々にPVC素材の採用が回復してきている。

その他、住宅資材に耐候性、耐寒性などの特徴を生かし、押出成形品や電線被覆向けなど限定された用途に需要が見られる。

ポリアミド系(PAE、TPAE)
ポリアミド(PAシリーズ:ハードセグメント)とポリエーテルエステルおよびポリエステル(ソフトセグメント)とのブロック共重合体。

ゴムとエンジニアリングプラスチックの中間的な性質を有している。柔軟性が高く、消音性、低温特性、成形加工性が良好である。工程の簡略化によるプロセスコストの低減と、環境へ配慮した技術は今後、大きな流れとなるとみられている。

用途は、ホース・チューブ、スポーツ用途、射出成型向け、コーティング向けなど。

ポリエステル系(TPEE)
ポリエステルをマトリックスとしゴム成分をドメインとするポリエステル系の熱可塑性エラストマー。

ポリカーボネート樹脂、スチレン系樹脂等の硬質樹脂との熱融着性に優れ、耐摩耗性にも優れている。

TPEEは、TPU、TPOの代替を狙って用途範囲を広げているが、高品質を維持するため経済コストを重点とした部材へのシフトがみられる。

市場参入メーカーは、東洋紡、東レ・デュポン、三菱化学、リケンテクノス、アロン化成などがある。

需要は、自動車用途向けの輸出が中心。

ポリウレタン系(TPU)
TPUは、ゴムとプラスチックの中間領域を埋める材料として、低反発性、耐摩耗性、耐油性、機械強度、耐薬品性に優れており、各種の産業分野で幅広く需要がみられる。

メーカーはTPU単独生産設備を保有するディーアイシーバイエル、BASFジャパン、日本ミラクトラン、日本ポリウレタン工業(東ソー)などで、2013年の国内出荷実績は1万7394t、前年比2・1%の微増となった。

アクリル系エラストマー
メタクリル酸メチル(MMA)とアクリル酸ブチル(BA)のブロック共重合体。

MMAが持つ「透明性」「耐候性」とBAが持つ「柔軟性」「接着性」など双方の特長を有する熱可塑性エラストマー。

透明柔軟で意匠性に優れ、ABS・PC等との2色成形性に優れる、塗装が容易(プライマー不要)といった特徴を持ち、各種射出成形部品に使用可能(クラレ)。

アクリルゴムとポリプロピレン、ポリエステルを主成分として構成。

耐油性や耐熱性に優れる熱可塑性エラストマー(日油)。

独自の製造プロセスを用いて、アクリル系TPEとPBTをナノレベルに近い分散形態にし、柔軟性を維持しつつ、耐熱性を付与した高耐熱アクリル系熱可塑性エラストマー(アロン化成)。

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