【TPE特集】クラレ 差別化で量と質を拡大

2017年03月06日

ゴムタイムス社

 クラレはブタジエン等の主要原材料市況の大幅上昇、ユーティリティを含む製造コストの上昇に対応、水添スチレン系エラストマー「セプトン」、「ハイブラー」、TPS/PU系複合材料「TUポリマー」の価格改定を2月1日出荷分から実施した。また、液状ゴム「クラプレン」やイソブチレン系水溶性樹脂「イソバン」などの価格を3月1日出荷分から値上げする。

 同社のポリマー販売部で近年、注力しているのが液状ゴム「クラプレン」。液状ゴムには「イソプレン系(LIR)」「ブタジエン系(LBR)」「スチレン・ブタジエン系(L-SBR)」のほか、バイオ系原料を使用し米国のバイオ系ベンチャーと提携して開発した「ファルネセン系(LFR)」がある。

 液状ゴムは可塑剤として機能するとともに、二重結合を有するため、固形ゴムと共架橋することで、通常のオイルで発生するようなブリードアウトがしにくいという特長がある。また、加硫ゴムの力学物性を落とすことなく混練時間を削減することができ、生産性の向上と生産コストの低減が可能。加えてタイヤのグリップ力の向上など、タイヤの高性能化、低燃費化に貢献するタイヤ用機能性ゴムとして、国内外のタイヤメーカーで販売が拡大している。

 特に「ファルネセン系(LFR)」では、国内の大手タイヤメーカーの冬用タイヤに本格採用されるなど、16年度の販売実績はタイヤ向けを中心に前年度比2ケタ近い増販を達成。鹿島事業所で約1万3000t(推定)の生産能力を有するが、「次期中計期間中には、さらなる能力増強を検討しなければならない」(高野浩一エラストマー事業部長)としている。

 「セプトン」の販売量も15年度実績を上回る過去最高を更新。国内需要はほぼ前年並みであったが、欧州、アメリカも堅調に推移し、中国では輸液用バッグでの改質剤需要などの差別化用途で2ケタの伸びを見せた。

 アクリル系エラストマーの「クラリティ」もスマホケースの成形材料として販売量は前年実績を上回ったが、今後はより大きな市場であるホットメルトなどの粘着剤用途での需要拡大に期待を寄せる。

 17年度の事業戦略としては「差別化銘柄を中心に量と質の両方の拡大を目指す」(同)とし、水添スチレン系エラストマーについては、タイのラヨン県マプタプット、石油化学コンプレックス内のヘマラ・イースタン工業団地での新プラント(生産能力1万6000t/年)建設については今年度中に最終意思決定し、2020年の稼働をめざす。タイの新プラントが稼働するまでは、国内の鹿島事業所では差別化銘柄の生産性向上投資を行い、アメリカではデボトル投資を行うことで、能力を順次増強する計画でいる。

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